皆さんは、外山圭一郎さんというゲームクリエイターをご存じでしょうか?
外山圭一郎さんはホラーゲーム界のレジェンド的存在で、あの『サイレントヒル』シリーズの生みの親として知られています。過去に非ホラーゲームの「GRAVITY DAZE」シリーズも手がけていましたが、どちらかといえばホラーゲーム職人の印象が強いと思います。
外山圭一郎さんが手がけた作品の中でも、筆者は「SIREN」シリーズが大好きです。本作は2003年に発売された和風サバイバルホラーゲームで、令和を迎えても高い人気を博しています。かくいう筆者も第1弾である『SIREN』がきっかけで、外山圭一郎さんのファンになったわけで……。
そんな外山圭一郎さんの最新作は、2024年11月8日に発売されるバトルアクションアドベンチャー『野狗子:Slitterhead』。自ら立ち上げたゲーム開発会社「Bokeh Game Studio」のデビュー作でもあります。
今回は、もうすぐ発売される『野狗子:Slitterhead』に備えて、PS4/PS5向けに移植された『SIREN』をプレイしてみることに。ゲームプレイ画像を交えながら、名作ホラーゲームを振り返ってみたいと思います。
■名作サバイバルホラーゲーム『SIREN』とは?
『SIREN』は、ソニー・コンピューター・エンタテインメント(現ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント)が2003年に発売した和風サバイバルホラーゲームです。独自の信仰が根付く田舎を舞台に、絶望的な恐怖と、複数の登場人物が交錯するサバイバル群像劇を体験できます。
シリーズ第1弾の『SIREN』が発売されてから、シリーズ第2弾『SIREN 2』(2006年)、番外編『SIREN:New Translation』(2008年)と続きます。「SIREN」シリーズは現時点で3作品だけですが、シリーズの最新作を待ち望むファンは少なくありません(筆者もその一人です)。
さて、本記事で取り上げるのは、シリーズ第1弾にして最高傑作の呼び声が高い『SIREN』です。約21年前の作品ではありますが、ゲーム実況動画が配信されたり、「異界入り」を祝うイベントが開催されるなど、現在もなお高い人気を誇ります。
そんな『SIREN』の舞台は、2003年8月3日深夜0時の「羽生蛇村(はにゅうだむら)」。ある事故が原因で大音量のサイレンが突如鳴り響き、羽生蛇村は異界に取り込まれてしまいます。先ほど述べた「異界入り」と呼ばれる現象です。
クリアの目的は、複数の登場人物を操作し、「屍人(しびと)」と呼ばれる敵と対峙しながら羽生蛇村から脱出すること。「どうあがいても絶望」という状況で、最後まで生き残るのはいったい誰なのか……。
サイレンが鳴り出した瞬間、プレイヤーは想像を絶する恐怖に巻き込まれることになります。数々の困難を乗り越えてエンディングまでたどり着いた瞬間、『SIREN』の虜になっているかもしれませんよ。
■高難度だけどリトライしたくなるゲーム性
プレイヤーは、羽生蛇村に偶然居合わせていた複数の登場人物を操作することになります。登場人物ひとりひとりのシナリオをクリアしていくわけですが、一筋縄ではいかない難易度が待ち受けています。
本作の登場人物は青年や少女、学校の先生、大学教授、タレント、医者など、戦闘経験のない一般人がほとんどです。屍人たちに対抗できる登場人物がいる一方で、逃げることしかできない登場人物もいます。つまり、「すべての登場人物が最強とは限らない」というわけです。
そのうえ屍人たちの配置が尋常ではないので、戦うのも隠れるのも容易とは言えません。癖の強い操作と不親切なマップ、ヒントのわかりにくさも相まって、途中で挫折した人もいるのではないでしょうか。
しかしながら、トライ&エラーを繰り返して活路を見出していくゲーム性が『SIREN』の醍醐味。怖いゲームなのに何度もリトライしたくなるのが不思議です。「理不尽」と呼ばれても無理はありませんが、決してクリアできないわけではありません。
例えば、本作の特徴である「視界ジャック」が攻略のヒントになることもあります。屍人の視点をチェックすることで、相手の行動パターンやヒントを確認できるシステムです。通常は三人称視点(TPS)ですが、視界ジャック中は屍人の一人称視点(FPS)に切り替わります。
視界ジャックは本作唯一のお助け機能と言えるでしょう。しかしながら、視界ジャックができたとしても必ずクリアできるとは限りません。視界ジャックで得た情報を有効活用できるかどうかが肝心だからです。
幸いなことに、移植版では「巻き戻し機能」と「クイックセーブ」が使えます(PS5側の機能)。移植版のお助け機能によってリトライがスムーズになり、難易度も若干下がったように感じられました。難しくて詰みそうになったら、移植版独自のお助け機能を活用してみましょう。
■「どうあがいても絶望」の意味がわかる恐怖演出
次のポイントは屍人たちの存在。異界に取り込まれた羽生蛇村には、異界入りの影響で正気を失った村人(屍人)たちが多数徘徊しています。
屍人たちの姿を一度見たら、誰もがゾッとするのではないでしょうか。一見するとザ・村人なのですが、青白い肌に目から流れ出る血、そしてぶつぶつと発する独り言がとにかく不気味なのです。
加えて、屍人にはさまざまなタイプが存在します。人型の屍人が一般的ですが、ステージが進むと羽を生やした屍人や犬のような屍人も出てきます。もっと恐ろしいことに、屍人は不死身です。倒しても時間が経てば復活してしまいます。ね、怖いでしょ?
屍人に限らず、闇夜に包まれた羽生蛇村を探索する怖さも『SIREN』の魅力。ゲーム中は夜の時間帯が多く、下記画像のように懐中電灯なしで探索するのは非常に危険です。懐中電灯で夜道を照らしながら移動するわけですが、これが実に恐ろしいわけで……。
あと、エリアの雰囲気も恐怖を助長させる要因になっています。廃れた集落や廃病院など、不気味な場所が多数登場します。「廃墟に人ならざる者がいたら……」なんて考えるだけで鳥肌が立ってしまうでしょう。
『SIREN』のキャッチコピーである「どうあがいても絶望」の意味がわかること請け合いですよ……。
■考察の余地があるストーリー・世界観
さまざまな事情を抱える登場人物たちの群像劇や、羽生蛇村に隠された恐ろしい秘密など、緻密に練られたストーリー・世界観も魅力です。
本作は群像劇タッチのストーリーが展開しますが、各シナリオの時系列はバラバラです。過去と現在の時系列を往復することになるので、ストーリーの整理は難しくなっています。初見の方は、一度クリアしても「え、どういうこと?」と疑問を抱いてしまうはず。
複雑に絡み合ったシナリオからヒントを得たり、羽生蛇村の秘密を綴った資料(アーカイブ)を集めたりしてストーリーの謎を考察する。それもまた、『SIREN』特有の楽しみ方です。実際、ストーリーを考察するサイトやYouTube動画が相次いで投稿されるほど。
トラウマ必至の恐怖演出もさることながら、奥が深いストーリー・世界観にハマるファンも多い印象です。ネタバレは避けますが、予想をはるかに超える結末が待っています。どんな結末を迎えるかは、実際にプレイして確かめてみてください。
■【まとめ】外山圭一郎さんの傑作である『SIREN』はマストプレイ!
今回プレイした移植版は、PS4/PS5向けに最適化された解像度、クイックセーブ、巻き戻し機能などが特徴で、それ以外はオリジナル版と同じです。
20年以上前のゲームではありますが、『SIREN』独自の面白さはまったく色あせていませんでした。身も心も震える恐怖体験だけでなく、数々の困難を乗り越えた先にある達成感も味わえます。『SIREN』をプレイしてみれば、本作が20年以上も愛される理由がわかるかもしれませんよ。
ちなみに、『野狗子:Slitterhead』のトレーラーを見てみると、『SIREN』の影響を受けているであろう場面が多々見受けられます。例えば魂が人間の体に憑依できる仕様は、視界ジャックにどことなく似ていると思いませんか?
外山圭一郎さんの最新作である『野狗子:Slitterhead』は、2024年11月8日に発売されます。本作が発売される前に、ぜひホラーゲームの名作『SIREN』をプレイしてみてはいかがでしょうか。