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Dark Starを建設する - コラボレーションを学ぶシリアスゲーム

原文(投稿日:2020/09/24)へのリンク

ゲームは学習エクスペリエンスだ。安全に実験を行う空間を提供することで、ソフトスキルの理解向上と成長に寄与する。Corrado (Dex) De Sanctis氏はAgile Tour London 2020で、自身の開発したゲームであるDSBuildersをベースとしたゲームプレーセッション"How we build the Dark Star"を行う予定である。

シリアスゲーム(Serious Game)は何よりもまずゲームなのだから、楽しめることが目標だ。しかしながら、"シリアス"であるからには別の目標もある、と氏は言う。通常それはプレーヤの成長に関わるものだ。例えばあるゲームでは、現実の状況をシミュレーションし、可能性のあるソリューションを安全に試す場所を提供することで、実世界における行動を学ぶことができる。ことばや従来の授業では説明が難しい概念を理解するためのゲームもある。例えば"コラボレーション"について、理論だけで人に教えることができるだろうか、コラボレーションゲームをプレーさせた方が効率的なのではないか、というのが氏の考えだ。

DSBuildersのアイデアは、効果的とは言えなかったPI Planning(Scaled Agileのプラクティスのひとつ)セッションでの経験から生まれたものだ。このセッションでは、参加者がバックログの定義に気を取られ過ぎたために、コラボレーションプロトコルの既存のギャップを認識することができなかった。そこで氏は、バックログの定義を問題とせずに、効果的なコラボレーションプロトコルを見つけるために最大限の努力を必要とするようなシミュレーションの開発を思い立ったのだ。DSBuildersでは、十分なコラボレーション手段を見つけられないプレーヤが、最終的には敗者になる。

Agile Tour London 2020で紹介されたDSBuildersのバーチャルバージョンでは、プレー空間が大きなMuralスペースへと移動しており、参加するチームは作業に必要な素材を探したり、共通領域にアクセスすることが可能になっている。プライベートスペースとパブリックスペースはZoom breakout roomsの機能を使って構築されており、参加者は相互に対話することや、チーム独自のタスクに集中することができる。

ゲームをプレーすることのメリットと、DSBuildersゲームのプレーから得た経験について、De Sanctis氏にインタビューした。

InfoQ: ゲームをするべき理由は何でしょう、どのようなメリットがあるのでしょうか?

Corrado De Sanctis (Dex): ゲームは面白いですからね、それだけで理由としては十分でしょう。

ですがゲーム — すべてのゲームは、同時に学習エクスペリエンスでもあるのです。例えば、肉食獣の子供(cub)たちは、大部分の時間を、遊びながら狩りを学ぶことに費やしています。人間以外のすべての種にとって、遊ぶことは最も重要な学習方法なのです。人間も同じです。"学習オンリーの方法"よりも、"遊びながら学ぶ"方がずっと効果的なのです。ゲームをプレーすることは最高の学習エクスペリエンスである、と言っても過言ではないでしょう。

InfoQ: DSBuildersとは、どのようなゲームなのですか?

De Sanctis: DSBuildersはコラボレーションに関するゲームです。人々のグループが非常に複雑なものを構築する上で、コラボレーションがいかに有用であるかを教えてくれます。ゲームの中でプレーヤは、"Dark Star"というコードネームの惑星間戦争基地の建設計画にチャレンジします。この基地は100を越えるコンポーネントで構成されています。それらは6つの大きなイニシアティブで組織され、200以上の依存関係と300以上の統合コネクタによって相互に接続されます。ですが、これはまだプロジェクトの序の口です。実は反政府勢力との宇宙戦争が勃発しているのです。プレーヤは行動優先順位が絶えず代わる中で、この建設作業を6サイクル内で行わなければなりません。

そう、どこかで聞いた話ですね ...

DSBuildersはコラボレーションを用いたカードゲームとして、すでにさまざまな場所で使用されています。#Play14 London(有名なシリアスゲームイベント)の期間中にもプレーされましたし、アジャイルのスケールアップを実際のプロジェクトとして立ち上げる事前テストの目的で、アドホックセッションを実施するリクエストを企業から受けた時にも、何度か利用しています。

DSBuilersは現在が3回目のリリースで、極めてアジャイルな開発手法に従って進化を続けています。現在のバージョンに至るまで、セッションを重ねてゲームが進化した様子は、こちらの記事で紹介しています。

InfoQ: どのようにプレーするのでしょうか?

De Sanctis: DSBuildersは複数のチームに分かれてプレーします。各チームに3~6人のメンバ(最終的にはもっと多くなりますが、5人が最も効果的な人数です)を配します。全体として20~30人のプレーヤが参加できますが、セッションではもっと少ない人数で行うようにしています。

ゲームの目標は、銀河系を征服し、支配するための巨大な戦闘基地を設立する、6サイクルの計画を立案することです。プレーヤにはDark Start建設のためのリソースと100程度のコンポーネントが与えられるとともに、外部および内部の依存関係からの影響を受けます。

DSBuildersは実際にはコンポーネントを"構築する"ゲームではありません。優先順位と依存関係を管理することによって、相互関係を持ったさまざまバックログ上で、すべてのチームが同時に作業を行うゲームなのです。ゲームをさらに難しくしているのは、銀河系内で発生する事件に応じて、サイクルからサイクルへと優先順位をシフトする必要があることです。

実際のワークスルーセッションの様子は、"Collaboration gaps enhanced by a game?Yes, we can"という記事で紹介しています。

InfoQ: あなたが勧めたゲームを人々がプレーする様子から、どのようなことが分かりましたか?

De Sanctis: DSBuildersを広めるのは大変ですが、非常に満足もしています。セッションは、人と実践の両面に関する深い学習で満ちています。それらは私にとって、人として、専門家としての大きな支えになっています。

そして最後の、最も素晴らしい瞬間は、マジックが起きるのを見る時です。DSBuildersのセッションで私はいつも、ゲームに勝つためにはチームの枠を越えて協力しなければならないことにプレーヤが気付く、その瞬間に立ち会うことができています。誰かが違うことを言ったり、違うことをしているのを見た他のプレーヤが、自身の行為を同じように変えるように触発される、まさにその一瞬です。

困惑し、互いに距離を置いていた人たちの単なる集まりが、ひとつの目標に向かってコラボレーションするプレーヤの集団へと変わる、その瞬間を目の当たりにするのです。ゲームには最終的に負けるかも知れませんが、その瞬間に得たものはセッションの後もずっと残るでしょう。

ポッドキャスト"Build the Death Star — Star Wars meets Scrum"では、ある企業で実際に行っているDSBuilersのセッションの様子を紹介しています。ゲームをプレーする人たちに対するゲームセッションの効果や、現実のアクティビティに対して期待できる成果について確認してください。

InfoQ: シリアスゲームを試してみたいという人のために、何かアドバイスはありますか?

De Sanctis: シリアスゲームは、私の意見としては、ソフトスキルを理解するための最高の方法であるばかりでなく、場合によっては唯一の教育方法でもあるのです。この理由からも、企業のトレーニングプログラムにはシリアスゲームを取り入れるべきです。さらに、短期間かつ安全に経験する唯一の方法でもあるとともに、繰り返し実施して改善方法を探すことも容易です。ですからシリアスゲームは、企業内における継続的学習と継続的改善の文化を促進するには最適なのです。

シリアスゲームの難しい部分を挙げるとすれば、実施が簡単ではない、ということがあります。ゲームセッションは従来のクラスよりもはるかに複雑です。事前準備、導入、実施といったフェーズでは、ファシリテータと参加者によるさまざまなレベルでの関与が必要になりますし、成果の振り返りも行わなくてはなりません。ですが、ここ数年、特にアジャイルのムーブメントにおいて、シリアスゲームの重要度が高まりを見せていて、最近ではほとんどのトレーニングセッションにゲームエクスペリエンスが含まれるまでになっています。その中でDSBuildersは、他の数百というシリアスゲームとともに、チームのアジリティ向上を支援する手段となるのです。

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