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SamsungのアジャイルとリーンUXへの旅

原文(投稿日:2019/04/11)へのリンク

Samsungは、チーム主導のアジャイル移行と、それに続く文化主導のアジャイル移行の適用を通じて、現実のユーザと価値のあるプロダクトにチームを集中させることに成功した。同社のシニアUXデザイナであるJaesung Jo氏は、Lean and Agile ME Summit 2019で行った講演で、製品開発全体を通してチーム主導のユーザーリサーチを実施するための、ペルソナの作成と利用について語った。

Samsungはいくつかのアジャイル移行アプローチを試みた、とJo氏は言う。2010年、同社はまず、プロセス主導の移行アプローチに着手した。それがアジャイル移行の最速の方法と思われたからだ。コンサルティング会社の支援を受け、会社を変えるためのアジャイルプロセスと構造をデザインした。しかし長続きはしなかった。人的リソースと組織構造にタッチしていなかったためだ。"アジャイルとリーンのコアバリューを社員に提供することはできませんでした"、と氏は述べている。

2015年にはチーム主導の移行アプローチを適用して、小さな成果を挙げることができた。チームが部分的にオーナシップを持ち、意思決定が可能になったのだ。この移行では、会社全体を変えるため、5つの側面、すなわち"リーダーシップ、プロセス、戦略、構造、人"にタッチした、と氏は言う。社内でアジャイルチームと協力する他部署とは、いまだ一部で意見の対立が残っているが、同社は現在、人と組織の転換を通じて、文化主導のアジャイル移行へと進もうとしている。

デザイナにとって最大の強みは、ユーザを理解していることだ、とJo氏は主張する。同社では、ユーザをチームの中心に置くために、デザイナにユーザを意識させる試みを行っている。現実のユーザの現実の問題に対して、望ましい、有用な製品であることに、チームを集中させるためだ。

Samsungは製品開発において、ユーザ中心のプラクティスを適用している。プロジェクト開始時から共同でペルソナを作成することによって、チーム全員が別々の方向を見ることなく、ひとつの目標に向かって進むことを可能にする。ペルソナはチームのすべての活動につながっていて、シナリオ、ストーリーボード、ワークフロー、デザインレビュー、ユーザーストーリで使用されている、とJo氏は言う。

調査の繰り返しを通じてペルソナが追加され、洗練されることによって、チームの洞察もより堅牢かつ具体的になる、とJo氏は説明する。チームがユーザについて新たなことを学ぶたびに、ペルソナは追加され、あるいは変更される。"重要なのは、私たちのペルソナが本物のキャラクタのように、生きて、進化し続けなければならないということです"、と氏は言う。

もうひとつのヒントは、ペルソナを誰にでも見えるように、アクセス可能なようにしておくことだ。目に見えるペルソナに対して作業することは、チームにとって大きな利益となる。大きなホワイトボードに自分たちのペルソナを描き、誰でも簡単に見られるようにしておけば、デザイナだけでなく、すべてのチームメンバやステークホルダにとっても有用なものになる、と氏は説明する。

ユーザリサーチもチーム主導に変更した、と氏は言う。Samsungでは、すべてのチームメンバが一貫して、同社のユーザ調査セッションに参加する。チームメンバが参加することで、製品の明確な方向性がチーム全体に伝搬し、あいまいさと不確実性が回避されるのだ。ユーザにとって価値のある製品を作っているとチームが実感する上で、これが役に立つ、と氏は述べている。

SamsungのアジャイルとリーンUXの旅についての講演を終えたJaesung Jo氏と、話をする機会を得た。

InfoQ: Samsungでは、リーンやアジャイルのプラクティスを採用する上で、どのような課題に直面しましたか?

Jaesung Jo :今ではずっと良くなっていますが、最初の頃は、Samsungのような職階を中心とした会社にリーンやアジャイルを適用するのは、容易なことではありませんでした。当社はかつて、非常に職階を重視した組織だったのです。職階に否定的な側面しかないと言うつもりはありません。明確な方向性があって、全員がそれに向かって走らなければならない時には、それで非常にうまくいきます。しかし、リーンとアジャイルは、すべてのチームメンバがより創造的で、より革新的であることを要求します。その場合、職階中心の組織構造では問題がある可能性があります。アジャイルやリーンでは、下位から上位へ、またその逆に、情報を迅速に送る必要があるからです。長年の努力の結果として、私たちは、リーンおよびアジャイルプラクティスをより効率的に採用すべく、さまざまな組織間の壁を壊すところまで来ています。

InfoQ: これらの課題に、Samsungはどのように対処したのですか?

Jo :トップダウンとボトムアップの、両方のアプローチを使いたいと思っていましたので、ひとつずつ、"行動から学ぶ"ことから始めました。毎日の経験を通して、従業員にリーンとアジャイルのコアバリューを感じさせ、理解させるようにしたのです。コラボレーション、一貫性のあるコミュニケーション、透明性、といったものに重点を置き、バランスのとれたチーム構成で、"優れた製品"という共通目標に向かって取り組みを続けてきました。Samsumgにおいて卓越したアジャイルの中心となったのが、ACT(アジャイルコアチーム)です。

ペアプログラミング、ペアデザイニングとは、2人の社員が同じ作業をしてタスクを完了させる、というものです。ペアのローテーションに伴って、知識がチーム全体に急速に広がり、知識のサイロ化を回避することができます。

ユーザ中心のデザインを採用することによって、チーム全体が明確な目標を持ち、不確実な仮説を検証し、チームメンバがその方向に自信を持つことができます。最も強力な方法でしたが、時間も必要でした。

上位層からの支持を得るために、デモやショーケースを継続的に実施しました。彼らに対して、動作するソフトウェアを定期的に、かつ高い頻度で見せるためです。それと同時に、企業全体のプロセス、戦略、構造をよりフレキシブルにする作業にも取り組みました。これらの取り組みによって、会社全体が少しずつ、変化しようとしています。今はまだ、その変化の過程にあります。

InfoQ: 開発中はどのように、組織全体の利害関係者を巻き込むのですか?

Jo: ご想像のとおり、Samsungの組織は非常に複雑です。従って私たちとしては、誰に最も焦点を合わせるべきかを、知っておく必要があります。それを見つけるため、ステークホルダーマップを作成しました。最初にすべてのチームメンバを、次にそのマネージャ、リーダ、内部の利害関係者、外部の利害関係者などを追加して、プロジェクトに直接的または間接的な影響を与えるすべての人々をリストしました。その上で、すべての関係を結び付けて、彼らとコミュニケーションをとる方法、彼らの目標を追加しました。その中から、私たちの"キーマン"を選びます。そして、私たちが目標に進むために、その"キーマン"に焦点を合わせるのです。

チームのアクティビティだけでなく、"ペルソナ作成"や"データ合成"、"デザインレビュー"などのデザイン活動にも、常に関係者を含めるようにしています。これらの活動を通して、彼らと私たちの考えを一致させるのです。それは同時に、利害関係者に対して、明確な方向性と目標に目を向けさせることでもあります。

InfoQ: アジャイルとリーンは、Samsungにどのようなメリットをもたらしましたか?

Jo: 大きなメリットのひとつは、無駄の削減です。Samsungのような大企業では、不要なプロセスやドキュメントが頻繁に作成されています。それらは往々にして、理由も分からずに作成され、使用されます。私たちは、製品を作る上で本当に必要なプロセスと文書だけを持つようにして、無意味なものは最小限にするか、あるいは排除しました。

アジャイルとリーンによって、実際のユーザと製品により集中できるようになります。私たちは、ユーザからのフィードバックを迅速に、かつ継続的に聞き入れられるようになりました。さらに、ユーザ調査によって、不要な機能を排除しています。

単にグッドプラクティスと方法論を採用するだけでは、アジャイルは成功しません。様々な試みを行って、私たちにとって正しいことを見つけなければならないのです。文化はその環境の中で、停滞することなく、絶えず変化し、発展しなければなりません。アジャイルプロセスに固執するのではなく、チームメンバが変化をどのように感じているか、勤務時間中にどのようなエクスペリエンスを得ているのかが重要なのです。組織には、それぞれのコンテキスト、環境、構造、プロセスがあります。あなたのリーン&アジャイルの方法は、あなたが定義しなければなりません。自身の組織の人々と、その文化に注目してください。

私たちは、チーム全体をユーザに共感させることが重要である、ということを学びました。自分たちが機能や製品を開発している理由が分からない、多くの組織の、多くの開発者と話をしました。デザイナがユーザのエクスペリエンスと理解をチームと共有することにより、ユーザとチームメンバの間に架け橋が生まれ、ユーザが何を望んでいるのか、そのためにチーム自身で何ができるか、といったことを理解できるようになります。混乱や曖昧を感じることなく前に進める、ということは、チームメンバの士気の高揚にも役立ちます。チームメイトに対して、彼らがより大きなものの一部であると感じること、顧客にとって価値のある製品を提供することを可能にします。

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