前川彰司さん前川彰司さんの再審初公判が開かれた名古屋高裁金沢支部の法廷。中央上は増田啓祐裁判長＝３月６日午後１時５６分（代表撮影）
１９８６年に福井県福井市で中学３年の女子生徒が殺害された事件で、殺人罪に問われ懲役７年の実刑判決を受けて服役した前川彰司さん（５９）＝同市＝の裁判をやり直す再審初公判が３月６日、名古屋高裁金沢支部で開かれた。事件当日に「血を付けた前川さんを見た」とした関係者供述の信用性が最大の争点となり、検察側は有罪主張を維持。弁護側は無罪を訴え、即日結審した。判決公判は７月１８日午後２時から。
再審は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」があった時に開始されると刑事訴訟法で規定され、検察側は新たな証拠を提出しなかったため、前川さんは無罪となる公算が大きい。
最初に「前川さん犯行説」を訴えた男性の供述について、弁護側は「変遷が激しく、客観的な裏付けを欠き、まったく信用できない。前川さんは無関係なのに巻き込まれた。無実の者を罪に陥れる虚偽供述に当たる恐れがある危険なものとみるべきだ」と指摘した。
意見陳述に立った前川さんは、やや緊張した面持ちながら「私は決して犯人ではありません。この事件はそもそも起訴すべき案件ではなかった。検察は判断を最初から誤っていた」と訴えた。
前川さんは８６年３月１９日午後９時４０分ごろ、福井市豊岡２丁目の市営住宅で、女子中学生＝当時（１５）＝を殺害したとされた。８７年に逮捕されたが一貫して無実を主張。９０年に一審福井地裁で無罪判決を受けた。９５年に二審高裁金沢支部で懲役７年の逆転有罪判決を受け、その後確定した。２０２２年に第２次再審請求し、同支部は昨年１０月に再審開始を決定。検察が異議申し立てせずに確定した。
福井・中3殺害事件とは
１９８６年３月１９日夜、福井市の市営団地で、住人の中学３年の女子生徒が殺害された。捜査は難航し、県警は約１年後、殺人容疑で前川彰司さんを逮捕。９０年の福井地裁判決は無罪だったが、名古屋高裁金沢支部は９５年、逆転有罪とし、心神耗弱を認め懲役７年の判決を言い渡した。最高裁も支持して確定。前川さんは満期出所後の２００４年、第１次再審請求した。高裁金沢支部は１１年、再審開始を認めたが、検察側が異議を申し立て、名古屋高裁が１３年に取り消した。２２年に第２次請求した。日弁連が前川さんを支援している。
