生活の一部にする心構えや雑談力も重要に
2015年8月26日~28日の3日間、パシフィコ横浜にて開催される、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス“CEDEC 2015”。ここでは、27日に実施された、ゲームアーツ 開発部 部長 風間紀明氏による講演“そのアカウントは活きているか? ~タイトル公式Twitterアカウント、開発者による運用のススメ~”の内容をリポートしよう。
風間氏が運用しているのは、発売中のプレイステーション Vita用ソフト、スマートフォン向けアプリ『ドクロ』の公式Twitter。フォロワー数をみれば巨大アカウントの事例ではないが、会社でTwitterを扱う人たちへの一助となれば幸いであると風間氏は語った。
風間氏は、FacebookとTwitterの両方でゲームタイトルの宣伝を行ったところ、情報信頼度ではリアルグラフに基づいたFacebook、リアルタイム性と拡散力にはTwitterに長所があり、“裂ける人的リソースが限られているのなら、Twitterに全力投球するのが効果的である”という所感を持ったのだという。
■準備すべきこと
◆どんなキャラでTwitterを運用するかを決める
風間氏は、ゲーム『ドクロ』のTwitterでは、ゲーム内のキャラクターになってつぶやくことにしたが、じつはこのキャラはゲーム内では一度もしゃべっていなかったのだという。そこで、ただイベント情報などをつぶやくだけではおもしろくないということで、アクの強いキャラクター性を持たせるために、“基本的にひらがなでつぶやくけど、たまにイケメン化してふつうにツイートする”という二面性を持たせることにしたそうだ。
◆生活の一部にする心構え
開発者として、公式Twitterの運用における心構えとして重要なのが、“生活の一部にする”ことなのだそうだ。朝起きたら、通勤中も、寝る前も、手が空いたときもつぶやく……それは大変な印象を持つかもしれないが、慣れたら楽しいので安心してほしいとのことだ。
■開発チーム自らのTwitterの運用の提案、その利点と弱点
◆開発者がTwitter運用を行うメリットとデメリット
風間氏によると、広報担当者がTwitterの運用をすると、開発チームの負担が少なくなる一方で、ライブ感が小さいというデメリットがあるという。一方で開発チームが運用すると負担は大きく、誤ったつぶやきをしてしまう可能性もあるものの、情報をすぐに発信できるライブ感がとても大きく、かつ楽しく行えるのだとか。
また、風間氏は誤って『ドクロ』のキャラではなく、開発者としての言葉で投稿をして炎上したことがあったため「キャラクターを作ったら、そのキャラに徹した投稿をしてください」と注意を呼びかけた。
◆検索して自分自身の評価を確認する
風間氏は、エゴサーチ(検索して自身の評価を確認する)を積極的に行い、ポジティブな意見をつぶやいたユーザーには積極的に交流しにいったのだそうだ。エゴサーチでは肯定的な意見を聞くだけでなく、開発時に起きている問題に直接アクセスするメリットもあるのだという。
また、『ドクロ』のような有料アプリにおいて、“最大の敵”となるのは「気になる」という投稿なのだそうだ。ユーザーの中には、これをつぶやいただけで、購入した気持ちになってしまう者もいるという。風間氏は、こうしたユーザーに対して「気に入っていただけえるだけで涙が出るくらいうれしいです。でも購入して遊んでいただけるならもっともっとうれしい」などと話しかけるのもひとつの手段であると語った。
◆“スルー力”も大事
エゴサーチをしている以上、辛辣なダイレクトメッセージが届くこともあるが、気にせずにスルーすることも重要なのだという。ただし、ネガティブな意見でも落とし所のあるものに関してはしっかりコメントを返すことにしたそうだ。
また、風間氏は“実現の見込みのなさそうな、いい加減なつぶやきは絶対にしないように”とも注意。開発者である以上、実現の可能性はわかるはずである、とのこと。
◆ゲームが動かない、わからないという意見も救っていく覚悟
Twitterでカスタマーサービスの領域に踏み込むとますます大変になるのだが、開発者自らがTwitterが運用する意義はまさにここにあるという。そのしんどさも、ユーザーからの激励の言葉をもらうとすべて吹っ飛ぶのだそうだ。風間氏は「結局のところ、重要なのは真摯な対応だと思います」とも語った。
■そのほかTips
◆雑談力も重要
ただ必要な情報をつぶやくだけではなく、フォローしていて楽しいアカウントを目指すため、“雑談”をすることも重要なのだという。『ドクロ』のTwitterの場合は、他社製品であってもおもしろそうなゲームには言及していくというキャラクター性を意識していたそうだ。
言及するテーマについては、人気のハッシュタグ、リツイートランキング、最新ニュースなどの表示機能からマッチするものを選ぶのも手段のひとつとのこと。
風間氏によると、シャープやタニタなど、話題になる公式アカウントはこの雑談力がとにかく高いのだという。
◆フォローバックしよう
ユーザーにとって公式アカウントにフォローバックされるのはうれしく、また親近感につながるという。
◆ベストタイミング
『ドクロ』のつぶやきの場合は、お昼休みや通勤通学などのスマートフォンを操作する機会がある時間帯の反応がよかったのだそうだ。また、深夜帯のつぶやきは “遅くまでがんばっているね”と読者が思ってくれるためか、意外と反応がよかったのだという。
■まとめ
風間氏は、Twitterは人間力と、ウィットと、誠実さと、“あざとさ”その他もろもろの総合力が試される“戦場”であると結論づけた。開発者による公式Twitterは楽しく運用できる反面、やはり留意しないといけない点は多いようだ。
ちなみに、F2P(フリートゥプレイ)タイトルの公式Twitterアカウント運用は、また勝手が違うところがあるようだ。というのも、有料アプリなどの売り切り型のコンテンツとは違い、F2Pタイトルは「とりあえず遊んでみよう、フォローしよう」というユーザーが多いため、フォロー数もトラブル発生時の許容幅もかなり異なるのだそうだ。風間氏は、こうしたF2Pタイトルの公式アカウントを運用している人とも、情報共有をしていきたいと語った。