ディズニープリンセス じぶんもまわりもしあわせにする おやくそくブック(Gakken)
SNSで話題!すてきな大人になるために大切にしたい「おやくそく」を紹介する絵本。
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インタビュー
2024.12.27
絵本ナビと講談社の共同開催で新設された『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』。その第1回の作品募集が2024年11月1日(金)よりスタートしました。『読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』は、いま本当に「読みたい」「読んであげたい」絵本を、あなたの手で創り、あなたの目で選ぶ。スマホやタブレット、PCからだれもが気軽に参加できる、新しいスタイルのデジタル絵本コンテスト。現在、コンテストにより多くの方に応募していただけるように、デジタルお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT EX」の協力を得て、無料で提供しています。
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そこで、この連載では、「CLIP STUDIO PAINT」を実際に使われている作家さんに登場していただき、さまざまなお話を伺っています。3回目の今回は、絵本作家のながしまひろみさん×まつながもえさんの対談で、絵本づくりについてさらに詳しくお話を伺っています。また「CLIP STUDIO PAINT」の活用方法についても話していただきました。おふたりの対談は記事末の動画でもご覧いただけます。筆1本で湯気が描かれていく様子や、下絵が直される様子をぜひ動画で確かめてみてくださいね! それでは、最後までお楽しみください。
ながしま ひろみ
北海道生まれ。マンガ家、イラストレーター。 著書にマンガ『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)、 絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)、マンガ『鬼の子』全2巻(小学館)、『わたしの夢が覚めるまで』(KADOKAWA)。 そのほか、児童書では『ゴリランとわたし』(岩波書店)など、書籍の装画・挿絵も数多く手がける。
まつながもえ
1992年、埼玉県生まれ。学習院大学文学部卒業。絵本塾カレッジ主催第3回創作絵本コンクールにて大賞を受賞し、受賞作『はにわくん』(絵本塾出版)でデビュー。絵本に、『からっぽのにくまん』(白泉社)、『てんぷら ぱちぱち』(講談社)、『かっぱまきください!!』(小学館)がある。
――絵本のアイデアを考えるときに、していることはなんですか?
ながしま:最初のアイデアは、自分が小さかったころに感じたことです。自分の中にある「ちっちゃなときの感覚」から、絵本になるものを探すというイメージですね。そこが見つかったら、イメージをふくらませていきます。
『ねえねえ もぐらくん』は、お正月に自分が書いた詩が「おはなしのたね」になっています。
まつなが:私の場合は、自分が興味のあるものをもとにしておはなしをつくりたいという思いがあるので、外に出てネタを探します。博物館や神社に行ったり、散歩をしたり、商店街に行って並んでいるものを眺めたり。「今日はネタを探すぞ!」という気持ちで出かけて、ふと目に止まったものをテーマにして描きます。はにわや肉まん、こけしも、そんな風に目に留まったものですね。
出版社からの内容紹介
とある「ふろの日」日本全国のこけしたちが、ぞろぞろぞろぞろ動き出す
なぜ? どこへ? いったいなにを!?
めくってもめくってもこけしこけしこけし!
細かに描きわけられた、何百体ものこけしたちが、あなたを驚きの世界へとお連れします。
隅々まで遊び心たっぷりのページでは、難易度高すぎ!? 細かすぎるこけしさがしも楽しめます。
さらに細かすぎるキャラクター設定を深堀りして、自分だけの推しこけしを見つけて応援しよう!
――ながしまさんは自分の内にあるものを、まつながさんは外にあるものをテーマにして描くという、対照的なアイデアの出し方なんですね。元になるアイデアが決まったら、次はキャラクターを作っていく過程になると思いますが、どんな手順でキャラクターのビジュアルを決めていきますか?
ながしま:私は「CLIP STUDIO PAINT」を使って、落書き感覚でラフな絵を描いていきます。『ぞうくんはいちねんせい』は、「主人公を動物にすると、読んでくれる子どもが絵本の世界に入りやすいのでは」という編集さんのアドバイスを受けて「なるほど」と思い、ぞうにしました。
出版社からの内容紹介
ぞうくんは、今日初めて学校に行きます。隣の席の子は、人間の女の子の、コトコちゃん。緊張して挨拶で失敗し、ペンギンの先生にも「おかあさん」と言ってしまったり…でも、休み時間は元気に遊んだり。悲喜交々の楽しい1日です。
まつなが:私も、アイデア出しの段階から「CLIP STUDIO PAINT」を使っています。主人公になるキャラクターは、子どもたちに感情移入してもらえるように、子どもらしさがあったり、共感してもらえるようなキャラクターにしたいなと思いながら作ります。最初は直感で作りますが、迷ったときは、周りの人に見せて感想を聞いて。そうやってみんなの意見を取り入れながら、キャラクターを作り上げていく感じですね。
――おはなしの流れと、全体の構成はどのように作っていきますか?
ながしま:最初はシナリオを書くようにテキストを書いて、「Adobe In Design®」でテキストのみのページ割りを作ります。そのテキストのみのページ割りをみながら、「CLIP STUDIO PAINT」で絵を描き、最後にデータを合体させる方法で作っています。
『ぞうくんはいちねんせい』の制作では、コマ割りのページと一枚絵のページをどういう風に続けていくかを意識してミニラフを作りましたが、『そらいろのてがみ』と『まっくらぼん』の場合は、「CLIP STUDIO PAINT」でページに直接文字を置いていきました。
ながしま:「CLIP STUDIO PAINT」で実際のページの大きさでデータを作っているので、編集さんとのやりとりで、ページを入れ替えたり削ったりするのも、楽なんです。それで作った構成でいけるかなと思ったら、iPadでラフを描いていきます。
まつなが:私もおはなしはテキストエディタソフトで書いています。そこから1枚野中に3見開き分の枠を置いたミニコンテ紙に、ラフを描きます。そうすると、同じような構図が重なっていないか、ページをめくるときにきちんと時間が切り替わっているか、全体を俯瞰して見ることができるからです。
――構図を作るときに気をつけていることはなんですか?
まつなが:15見開きという限られた枚数なので、読者が「前にも同じ場面があったような気がする」とならないように、同じような場所で起きている出来事でも、構図を変えてまったく違う場面に見せようと、意識して描いていますね。
あと、撮りためておいた写真をもとに、絵を描くことも多いです。長い自撮り棒にスマートフォンをつけて、いろんな角度から撮った写真をいっぱい集めておくんです。その中の選りすぐりの構図を参考に、絵本の構図を変えていきます。
文字は、読者が読んだときに、なるべく自然にキャラクターがセリフを言っているように見える場所に置きたいと考えています。デジタルなので、文字と絵をレイヤー分けして、文字の位置をいろいろ動かしてベストな場所を探して、文字位置に合わせて絵の構図を考えます。そしてテキストをページに割りつけた段階で、どんな絵を描くかイメージをつくり、その絵のイメージをまずは文章(自分への指示書のようなもの)にします。その後、その指示書をもとに絵を描いていきます。
――絵本には一枚絵だけでなく、コマ割りの絵本もあります。おふたりは、絵本でのコマ割り表現にどのような可能性を感じていますか?
ながしま:見開きの一枚絵が続くおはなしは、時間の感覚がゆっくりに感じられますが、そこにコマを入れることで、一瞬の変化が生まれると思います。逆に、小さな絵の連続で見ていたものが、急に大きな見開きの絵になることで、広がりを感じることもあるのかなと思いますね。
ながしま:漫画を描くときには、1ページの中での読みやすさや、読者が退屈しないようにいろんな角度からキャラクターを描いたり、キャラクターの感情を構図で表現したりと、割と感覚で描いています。絵本の場合は視点を固定して、風で髪が少しだけなびいたというような、ほんの一瞬の間に起きた微細な動きをコマ割りで描くという、アニメーション的な表現もできると思います。
まつなが:そうですね。私も、場面転換やここはていねいに見せたいと思ったときにコマ割りを使っているので、時間の表現にはピッタリかもしれません。
ながしま:あと絵本では、1ページ2〜3コマで、シンプルなコマ割りを意識しています。縦書きの右開きか横書きの左開きかでフキダシやテキストの位置も変わってくるので、絵と合わせて調整が必要ですね。
――おふたりが実際に「CLIP STUDIO PAINT」をどのように使っているのかを聞きたいのですが、デジタル作画に慣れるのに、どれくらいかかりましたか?
まつなが:私はiPad Pro 12.9インチで「CLIP STUDIO PAINT」を使っていますが、紙に描いているのと同じ感覚で描くことができるので、すぐに慣れました。本当に紙に描いているみたいで、夢中になってしまいましたね。より紙に描いている感覚に近づけるために、iPadの画面に「ペーパーライクフィルム」を貼っています。
ながしま:私もiPad Pro 12.9インチを使っています。ラフと下書きを「CLIP STUDIO PAINT」で描いていますが、1つ前の工程にすぐ戻ることができるので、楽チンだなと思いました。
――デジタル作画のメリットとデメリットはなんですか?
まつなが:画面で見たときと、実際に紙に印刷されたときの色が違うので、イメージした色を伝えるのが難しいなと感じます。
ながしま: 確かにそうですね。私の場合、絵本で「CLIP STUDIO PAINT」を使うときは下絵のみで、着彩は「Adobe Photoshop®」、仕上げを色鉛筆などのアナログの画材で仕上げているんですが、まつながさんの絵のタッチは、手描きに近い感じがあります。線は何を使って描いていますか?
まつなが:実は1つのブラシしか使っていないんです。やっぱり好きなのはアナログの質感なので、どうすればアナログの質感がでるのかを考えながら、影をつけたり重ね塗りをしています。「CLIP STUDIO PAINT」はいろんなペン・ブラシツールがありますが、使いこなしすぎるとデジタル感が出てしまうので、最初から1つのツールだけを使っています!
コツというほどでもないのですが、とにかく高速でシャッシャッとペンを動かして、色を重ねます。ラフを考えるのは集中力がいりますが、色塗りは作業なので、iPadさえあればちょっとした隙間時間で、どこでもサッとできるのが本当に便利で。
ながしま:やっぱりiPadの手軽さはすごくありがたいですね。「CLIP STUDIO PAINT」は漫画家さんに人気なので、漫画を描くイメージが強かったんです。でもまつながさんの使い方を聞いて「絵本でもいいんだ」と思いましたし、フルカラーでも描くことができるんだと驚きました。
この『こけしぞろぞろ』の湯気は、どんな風に描いているんですか?
まつなが:一番上のレイヤーに、デッサン鉛筆という鉛筆ブラシを使って白を乗せていきます。タッチペンを2本の指と親指だけで持って、力を入れずにスッスッと流す感じで。すると良いあんばいで薄れて、ホワホワの湯気っぽく描けます。タッチの強弱だけで濃淡を表現しています。
――デジタル制作ならではの「失敗」はありますか?
ながしま:うっかり保存しないままアプリを閉じてしまったり、逆に試し書きだったのに上書き保存しちゃったりします……。
まつなが:私もあります。保存ミス、上書きは本当にうっかりやってしまうんですよね。また、勢いよくペンを動かしているので、誤りやミスに気づかないまま、ぐんぐん描き進めてしまうことがあります。その結果、思わぬところに影響が出ることもあって。そういうことがあるとショックを受けますが、そこはデジタル制作の良さで、取り返しがつくというのがすごく安心して使えるところです。
あと、デジタルだと拡大・縮小が自由にできますが、細部を描くときに拡大すると、等倍にしたときに描き込みの密度の違いで浮いてしまうことがあります。だから、全体の描きこみのバランスを取るために、一度紙でプリントして確認するとよいと思います。
ながしま:確かにそうですね。私の場合は、鉛筆のザラッとした感じを出すために、プリントアウトしたものに色鉛筆や水彩絵の具を重ねています。その時点で、全体を見ていることになりますね。
――最後に、応募者への応援メッセージをお願いします。
ながしま:私自身が、肩に力が入ってしまうとうまくできなくなるタイプなので、「大作を作ってやろう」と力まずに、今思いついたものをちょっと送ってみようかなという感じで、つくるといいんじゃないのかなと思います。
まつなが:出版につながるコンペはすごく貴重なもので、大きなチャンスです。自分が絵本作家になった姿を思い描きながら、チャレンジし続けて欲しいです。
ーーながしまひろみさん、まつながもえさん、ありがとうございました! さて、次回からは特別審査員インタビュー後編をお届けしていきたいと思います。こちらもお楽しみに。
文・構成: ナカムラミナコ
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【Vol.7】絵本ってどう描くの? 絵本作家さんに聞く、絵本作りのポイントA まつながもえさん ーーCLIP STUDIO PAINT ユーザーインタビュー