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大地の芸術祭公式WEBマガジン

特集 / 総合ディレクター

【ディレクターズコラム】歓待する美術 四半世紀の蓄積とこれから

ディレクターズコラム

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」87日間の会期も折り返しを迎えています。総合ディレクター・北川フラムより第9回展の見どころや、越後妻有の今をご案内します。

総合ディレクター・北川フラム

01 October 2024

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」87日間の会期も折り返しを迎えています。総合ディレクター・北川フラムより第9回展の見どころや、越後妻有の今をご案内します。

季節は夏から、新米のおいしい秋へ

第9回展会期の半分が過ぎ、特別企画展《モネ船長と87日間の四角い冒険》のナイトプログラムもそろそろ終わる9月29日、妻有を巡りました。体験とナイトミュージアムで夜の楽しみを企画した越後妻有里山現代美術館 MonETは大にぎわい。2日続きで行われた「まつだい棚田バンク」の稲刈りでは、まつだい「農舞台」のピロティでカレーの昼食をご一緒しました。子どもの参加が多かった。いつもの感想ですが、イリヤ・エミリア&カバコフ《棚田》から拡がる視覚全体の城山の至るところに家族連れや子どものグループが見られるのは嬉しいことです。里山は子どもがいて点睛がうたれる世界です。

《モネ船長と87日間の四角い冒険》ナイトミュージアムの様子 ※ライトアップ自体は引き続き11月10日まで実施
Photo:Nakamura Osamu

モネ船長と87日間の四角い冒険》Photo:Nakamura Osamu

まつだい棚田バンク」2024新米もオンラインショップ・現地にて販売中。
Photo:Yoneyama Noriko

農舞台2階のイリヤ&エミリア・カバコフ《アーティストの図書館》では、香港の中文大学と科学技術大学の先生と研究者のインタビューを受けました、十年前までは香港大学や財団との縁が深く、共同の作業もありました。今は津南にある《香港ハウス》の活動が続いています。香港の若者たちとどう今まで蓄積を活かしていけるか、改めて一歩を進めたいと思います。

香港大学芸術学部の学生が来場者をもてなす。
Photo:Nakamura Osamu

イリヤ&エミリア・カバコフ《アーティストの図書館》(まつだい「農舞台」)
Photo:Kioku Keizo

香港ハウス》設計=イップ・チュンハン(葉晉亨)
Photo:Nakamura Osamu

香港ハウスオープニング(2024年7月14日)
Photo:Nakamura Osamu

越後妻有の外縁部で花開くアート

枯木又では、今年の春に行われた「百年後芸術祭-内房総アートフェス-」の開催地である市原市の小出譲治市長にご挨拶をしました。小出市長は4回目の大地の芸術祭視察です。また、宇沢国際学館の占部まりさんご一行が来られていました。

私はここで前から楽しみにしていた放し飼いの玉子1パックを買うことができました。枯木又は名前のとおりの奥地ですが、この間、古代米である黒米、鶏の放し飼い等で頑張ってきたところです。実際に道路に鶏が遊んでいるので要注意。枯木又分校で2009年から続く《枯木又プロジェクト》を京都精華大学とともに支えてきてくれたところで、それが今回花開いたと思います。

《記憶のラビリエンス》(枯木又プロジェクト)Liisa
Photo:Kioku Keizo

今回この枯木又や清水、桐山、願入(《胞衣―みしゃぐち – 》《うぶすなの家》)、赤倉、奴奈川、蓬平、峠、大厳寺、大赤沢、上郷の作品群を私がことさら紹介するのは、それらが十日町市の外縁部にあたるからです。そこに生きる人々の元気が十日町市や津南町、ひいては日本という極東・ホモサピエンスの最後の到達点としての再生となり、自然と人間、地域の歴史のなかの可能性をひらき、その結果としてこれらの作品群が面白くなっているからです。

アケヤマ -秋山郷立大赤沢小学校-》監修:深澤孝史
Photo:Kanemoto Rintaro

枯木又プロジェクト》/枯木又
Photo:Nogawa Kasane

清水集落《水泥棒》(妻有アーカイブセンター)竹内公太
Photo:Kioku Keizo

蓬平集落《ファウンド・ア・メンタル・コネクション3 全ての場所が世界の真ん中》マーリア・ヴィルッカラ
Photo:Nogawa Kasane

願入集落胞衣―みしゃぐち – 》古郡弘
Photo:Kanemoto Rintaro

峠集落《空知らぬ雪》椛田ちひろ+有理
Photo:Kioku Keizo

アートを道標に里山をめぐる旅

「こんにちは、私は〇〇です。」
「いらっしゃい、どうぞ家に入ってください」

これが歓待の出だしです。これが人とのつながりの一歩。客人は妻有の永いあいだの工夫や生活、美しくも厳しい自然、人間のすばらしさを故郷や後続の人たちに伝えてくれます。作品はそのための道標(みちしるべ)になりだしました。

うぶすなの家》でお客様を歓待するお母さん
Photo:Kanemoto Rintaro

赤倉の学堂》で受付をするお父さん
Photo:Kanemoto Rintaro

まつだい駅からまつだい「農舞台」にかけて並ぶ、屋号(家の名前)が書かれたカラーバー。この道を通ると松代の人情味あふれる地域の人々の声が聞こえてくる。

まつだい住民博物館》ジョセップ・マリア・マルティン
Photo:Nakamura Osamu

いざ、秋の越後妻有へ

秋山郷(大地の芸術祭)―黒四ダム(北アルプス国際芸術祭)―野麦峠(南飛騨 Art Discovery)の日本最深部縦断ツアーも往路は予約で満員になりました。10月14日(月祝)はティム・インゴルドさん講演会「世界の中の秋山郷」とツアーです。また、ナカゴの動物園《Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生》も10月6日(日)までです。ぜひ越後妻有にいらしてください。

Nakago Wonderland–どうぶつ達の息吹と再生」《くるくるさんば》中里繪魯洲
Photo:Nakamura Osamu

10月14日(月祝)「世界の中の秋山郷」とツアー
シンポジウムゲスト:ティム・インゴルド

総合ディレクター:北川フラム

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