[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/ このページではJavaScriptを使用しています。JavaScriptをONにしてください。

肉の味を覚えたリス、ネズミを狩る

  • 80,845

  • author Kenji P. Miyajima
  • X
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
肉の味を覚えたリス、ネズミを狩る
Image: Sonja Wild / UC Davis

いつかほお袋が生肉でいっぱいになる日が来るんかな?

リスといえば、木の実や種を一心不乱にほお袋に詰め込んだり、両手(前脚)で地面を掘って集めたエサを埋めたり(そして忘れたり)、暑い日に日陰の地面に腹ばいになっていたりといった愛らしい姿が思い浮かびます。

ところが今回、カリフォルニア州でリスがネズミを捕食する様子が数多く観察されてしまったようです。リスが昆虫を食べるのは知られていますが、まさかついに本格的に肉の味を覚えてしまったとは。

草食から本格的な雑食へ?

ウィスコンシン大学オークレア校とカリフォルニア大学デービス校の研究チームは、カリフォルニア州に生息するジリスがノネズミを捕食する行動が広範囲にわたって観察されたと発表しました。

びっくり仰天の研究結果は、Journal of Ethologyに掲載されました。リスのようなげっ歯類による脊椎動物の捕食が記録されるのは初めてとのこと。

リスはこれまで、種やナッツを主食とする草食性の動物と考えられてきました。しかし、今回の研究で観察された捕食行動によって、リスが意外と柔軟な食性を持つことが示されました。

Image: Sonja Wild / YouTube

研究チームは、カリフォルニア州に生息するジリスの生態を追う長期研究プロジェクトの一環として、2024年の6月から7月にかけて、カリフォルニア州コントラコスタ郡の地域公園に生息するジリスの行動を観察しました。

すると、ジリスがノネズミを捕食する場面を74回観察したといいます。そのうちの42%は、オス、メス、幼体、成体を含むジリスがノネズミを追いかけて捕獲したそうです。

研究を主導したウィスコンシン大学オークレア校のJennifer Smith氏は、今回の新たな発見について、プレスリリースで次のようにコメントしていますよ。

「衝撃的でした。リスは、人々にとって非常に親しみやすい動物です。窓の外に見えたりもしますし、日常的に接しています。しかし、このような行動は科学的に記録されたことがありませんでした。私たちは、身近な自然史についてまだまだ学ぶべきことがたくさんあります」

Squirrel with vole
Image: Sonja Wild / UC Davis

研究に参加したカリフォルニア大学デービス校環境科学・政策学科の博士研究員であるSonja Wild氏も驚きを隠せなかったそうです。

「自分の目を疑いました。でも、一度気になり始めると、それ以来至るところで毎日のように(リスの捕食行動を)目にするようになりました」

ノネズミを捕食しはじめた背景

研究チームによると、2024年に公園内でノネズミの個体数が急増した時期と、ジリスによるノネズミの捕食行動が数多く観察された時期が一致しているそうです。市民科学者の観察データによれば、ネズミの個体数は過去10年間の平均を大きく上回る水準に達していたといいます。

Wild氏は、ジリスの食性の変化について次のように述べています。

「カリフォルニアジリスが柔軟な行動力を持ち、入手できる食料の変化に適応できるという事実は、人間の存在によって急速に変化する環境下で生き延びるのに役立つかもしれません」

Smith氏は、ジリスをはじめとする多くの種の食性が「信じられないくらい日和見的」といい、人間が作り出した環境に適応して変化できるとしています。ノネズミの著しい個体数増加が人間の影響かどうかはわかりませんけど、増えたから狩って食べるって、たしかにすごい適応力ですよね。

研究チームは今後、ノネズミの捕食がジリスの繁殖や生態系全体に与える影響や、地域の食物連鎖に与える影響、そしてこの捕食行動が他のリスの種にも見られるのか、また、この行動が親から子にどのように伝えられるのかなどについて調査する予定とのことです。

いままでモグワイに見えていたリスがグレムリンに見えそうです。

Source: Smith et al. 2024 / Journal of Ethology, University of California Davis

Reference: Sonja Wild / Youtube