インテルを抜き去るライバルも?
年を追うごとに半導体製造プロセスが向上し、コンピューター業界の目ざましい進化が演出されてきた時代が、終焉とまではいかないものの、大きくスローダウンを迎えそうです。この進化スピードを表現した「ムーアの法則」は、インテルのゴードン・ムーア氏が提唱したもの。半導体チップ上のトランジスタ数は18か月ごとに倍増していくとの理論が発表され、まさにその速度で進化が続いてきました。
後にムーアの法則も、半導体チップ上のトランジスタ数は24か月ごとに倍増するというサイクルまでペースダウン。ところが、ついに2年ごとの製造プロセスの向上という目標にも届かなくなったことが、新たにインテルによって発表された「Form 10-K」有価証券報告書で確定してしまった形ですね。
これまでインテルは、ムーアの法則を実現するTick-Tockモデルの開発サイクルを守ってきました。まずは微細化された新たな製造プロセスを達成するTick世代があり、続いて同プロセスで刷新されたマイクロアーキテクチャを達成するTock世代が訪れます。各世代は約1年ごとに推移するため、ほぼ2年で1サイクルの進化が可能になっていたというわけですよね…。
ところが、最新のForm 10-Kでは、このTick-Tockモデルの廃止が明言されてしまっています。現行の14nmプロセスで製造された最初の「Broadwell」プロセッサーによって、Tick世代が訪れました。続いて、同製造プロセスで進化した「Skylake」プロセッサーによって、Tock世代が刻まれていたので、次世代のプロセッサーからは理論上は新しい開発サイクルに移行するはず〜。でも、正式に今後はTick-Tockモデルを継承しない方針が打ち出されていますよ。
インテルが代わって採用を発表したのは、Tick-Tockの2ステップではなく、同じ製造プロセスを3ステップに渡って採用し続けるProcess-Architecture-Optimization(PAO)モデルです。最初のProcess世代とArchitecture世代は、従来のTick世代とTock世代に、ほぼ対応するとしましょう。ここから別の開発サイクルへと進む前に、同プロセスで完成の域に達する最適化されたプロセッサーを送り出すOptimization世代が組み入れられるとのことですね。つまり、現行の14nm製造プロセスから10nmプロセスへと移行する前に、次世代の「Kaby Lake」プロセッサーでも、引き続き14nmプロセスの採用が決定づけられました。
この新しいPAOモデルの正式採用を受け、10nmプロセスで製造される「Cannonlake」プロセッサーは、早くても2017年後半までは登場しないことになります。2年以内のサイクルでの半導体の進化を謳ったムーアの法則は、とうとう2年半から3年というサイクルでしか成り立たなくなったとインテル自らが宣言した形でしょうかね!
なお、そうなると気になるのは、インテルを追う他メーカーの動向です。すでにIBMは、シリコンゲルマニウム(SiGe)素材を活用するという裏技ではあるものの、10nmを飛び越えて7nm製造プロセスでのチップ開発の成功を発表済みです。もちろん、実用化されるまでは、まだまだ時間を要することでしょう。とはいえ、チップ開発競争は激化する一方で、TSMCなどは、インテルに先駆けて7nm製造プロセスを2018年にも採用すると明言していますよ。しばらくはチップ業界でのインテル優位に変わりはないでしょうけど、ムーアの法則の終焉で、将来的には巨人インテルの転落というシナリオだってあったりするのかも?
source: The Motely Fool via Anandtech
Jamie Condliffe - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)