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「Facebook八分」は存在する。元社員が全部語る

  • author satomi
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「Facebook八分」は存在する。元社員が全部語る

中で働いていた元記者が全部語るシリーズ第2弾。今回はFacebook内部でどんな風にして記事表示順位が操作されているかの実態報告です。

***

まず、いくら話題になってもトレンド記事にアガれない記事というのがFacebookにはあって、たとえば右翼のCPACの集会、ミット・ロムニー、ランド・ポールなんかの保守系トピ。これはどれだけ世の中で騒がれてもFacebook利用者が見るトレンド・トピックには一切表示されないんだそうですよ?

逆に、たいして話題になってないのにトレンド記事にアガる記事というのもあって、今回取材した元「ニュース・キュレーター」(社内の通称)たちによると、このアゲ操作は社内で「inject」と呼ばれており、ひどいときにはだれも話題にしてないのにこの注入操作だけで人気トピックにランキング入りすることもあったと言います。

また、Facebookのことがマスコミ沙汰になってもトレンド記事では一切紹介しないように上司に指示されていたと元キュレーターたちは語っています。

「そんなの既存メディアだって一緒じゃん!」と思われるかもしれませんけどね。確かに人間が編集判断で選ぶこと自体、悪いことではありません。ただ、Facebookの場合はヘルプ記事でも「Facebookで最近人気のあるトピックが表示されます」と書いてるだけなので、それを真に受けてた人は「ええっ!」となるかも。

前回ご紹介したように、Facebookの「トレンド」欄では東海岸のアイビーリーグや私大を出た少人数の若者チームが、あらじめアルゴリズムで振り分けられた人気順トピックからこれぞというものを選んで、解説と関連記事のリンクを掲載しています。2014年開設のこの欄は、インターネットの一等地とよばれる同社サイト右上にあり、アメリカ内だけでも1億6700万人が読むもので、ニュースへの影響力は絶大。なのに中の記者は全員契約会社からの派遣で地獄のノルマをこなしており、派遣切りも今年に入って6人ということでした。

「ボツネタ、アガるネタがどれかは、シフトの担当者で決まるようなものだった」と元キュレーターは言っています(同社からの報復を恐れて匿名希望)。

Facebookが雇ったキュレーターの中には保守系の人も少数いたのですが、その人によると、「シフトで出社すると、CPAC、ミット・ロムニー、グレン・ベックなど人気の保守系トピックが全然トレンドで扱われてないんだよね。たまたま担当した人がニュースと思わないとか、テッド・クルーズに偏見があったり、なんかそういう理由でボツにされていた」そうです。

この人はこのやり方にだいぶ頭にきて、ボツトピの記録を密かにとっていました。それを米Gizmodoに見せてくれたんですけど、以下はそこからの抜粋。

[話題になってるのに埋められた記事やサゲられた記事]

・保守系団体だけ脱税捜査を強化していると共和党に叩かれた元IRS職員ロイス・ラーナーの騒ぎ

・ウィスコンシン州知事のニュース

・保守系ニュースアグリゲーター「Drudge Report」の話題

・2013年に殺された元海軍SEALクリス・カイル(『アメリカン・スナイパー』のモデル)のニュース

・フォックスニュース解説者スティーブン・クロウダーの話題

保守系のニュースに冷や水を浴びせるようなものだった」とその人は言ってます。

保守系のボツ率が高いという話は別のキュレーターからもとれました。「100%バイアス。主観もいいところ。担当者が誰で、その人が何時のシフトかで決まるんだからね」、「赤い州(保守系の地盤)や保守系報道機関が話題になっても、立ち位置が曖昧な中道系の媒体で同じネタ探さなきゃならなかった」と言ってます。

Breitbart、Washington Examiner、Newsmaxなんかの保守系媒体のネタが注目をあびてアルゴリズムで上位に上がってきても、New York Times、BBC、CNNなんかの中道系媒体が同じネタを採り上げない限り、そのネタが日の目を見ることはないのです。

右翼のネタを意図的にサゲていたという話を否定している元キュレーターもいるので、左翼のネタや媒体も同じようにサゲられることがあったのかどうかは不明です。前述の保守系の元キュレーターもその辺のことになると曖昧で、Facebook経営陣が現場に強制していたという証拠はないし、これは飽くまでも担当者の政治的バイアスであって、会社にはそんなバイアスが影響を与えているという認識さえなかったかもしれない、と慎重に言葉を選んでました。

ただ、上司が重要だと思う無名の記事が「注入ツール」でトレンド記事入りを命じられる局面はあったそうで、これは複数の元記者が証言しています。シェアされた回数、話題になる回数が少なくて上位入りできないネタでも、とにかく出してしまえ、ということ。中にはトレンド記事入りさせた途端、本当にNo.1の注目トピになる事例もあったとのことです。

「とにかくCNN、New York Times、BBCなど10の主要サイトでトップページに出たらもうアゲていい」と言われていました。これでランキング入りした記事には次のようなものがあります。

[話題にもなってないのにアゲられた記事]

・マレーシア機MH370の失踪

・パリのシャルリー・エブドのテロ攻撃

・反差別運動「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」

なぜ操作?

Facebookはリアルタイムのニュース配信ではTwitterに遅れをとっています。もしかしたらその穴を埋めるために、こうしてせっせとアゲて補正しているのかもしれません。

なんせTwitter中で話題になってるニュースがFacebookで全然話題になってないというだけで、怒鳴られましたからね」と元キュレーター。

中には、ハードなニュースが話題になる媒体というイメージづくりのために、Facebookで全然話題になってないトピを人力でせっせとアゲることもあったようです。以下は証言集。

「シリアのことなんて誰も気にしちゃいないんだけど、Facebookのトレンド記事で上位に出ていないと格好がつかないでしょ。だからアゲるわけですよ」

「あのBlack Lives Matterの話題だって、なんでトレンド記事に上がってこないんだって会社にものすごい圧力があった。それでこれじゃまずいということになって順位をアゲた。そうすることでほかのトピックはサゲたけど。で、アゲたらみんな『へー、No.1トピ入りしたね』と話題にし始めて広まった、という流れですね」

この「#BlackLivesMatter」のムーブメントはこれでFacebookから全米に広まって、マスコミにもSNSの威力として書き立てられたので、狙い通りの成果といえそうです。

今年2月にマーク・ザッカーバーグCEOは社内メモで、社内の落書き板で「Black Lives Matter(黒人の命は大事)」というスローガンを消して「全員の命が大事」と書いた社員を非難し、運動に支援を表明しました。社員の本意は逆差別反対かもですけど、社内に2%しかいない黒人の人が見たらやっぱりちょっと悲しいよね…。社長がそういう目配せをするのはいいこと。

Facebookの記事はアガらない

こちらはこんな証言がとれてます。

「会社の記事にはノータッチだった」

「ものすごく沢山シェアされてるネタでも、審査のチャンネルを二重に通さないと出せなかった」

「Facebookのネタにはいつも神経使ってたよ。ほかのは自分の判断でなんでも乗っけて良かったのだけど、Facebook関連はコピーエディターから上司に連絡がいって、そのまた上司に連絡がいって、やっと承認がもらえるってな具合だった」

ちなみに今回取材したのは2014年半ばから2015年12月にかけてFacebookで働いていた人たちです。アルゴリズムが賢くなるにつれアゲ用ツールが使われる場面も少なくなったとのことでした。また、トレンド記事の処理手順は常に変更されてるので、今の状況はわからないそうです。でもこうしてお話を聞いてみると、中立な媒体だとか、アルゴリズムでニュースを選ぶ客観メディアというイメージはどっかに吹っ飛んでしまう気が…。

フェイスブックは、既存の報道機関と体質はそう変わらないんです。どことなく中道左派。単に世論をバイアス抜きで報じているかのように見せかけていて、億人単位の読者がいて、ドナルド・トランプを潰そうかってな話が社内でオープンにできる、という違いがあるぐらいで、やってることは一緒ってことですね。

「あれは全然トレンド記事なんかじゃない。社説ですよ」と、例の保守系ボツ原稿のログをとってた人は言ってますよ。

以上の記事公開後、Facebookのトレンド記事にこの記事が奇跡的に現れました! 関連記事はRedState.comとFaith and Freedom Coalitionだけど!

160509FB_trending_b.png

Facebookにも取材したのですがお返事はまだです。代わりにBuzzFeedとTechCrunchに以下の声明が出ましたので、翻訳しておきますね。

報道に偏りがあったという批判は厳粛に受け止めています。Facebookはあらゆる政治理念の人と見方を伝えるプラットフォームです。トレンド記事ではFacebookで今話題の人気トピックとハッシュタグを紹介しています。審査チームには厳密なガイドラインを設け、一貫性と中立性を保つよう努めています。そのガイドラインでは政治信条を潰すことは許されていません。ある視点をほかより優遇することも、ある報道媒体をほかより優遇することも許されていません。また、トレンド記事への掲載を禁じる規定もありません。

ディスクロージャー:Facebookは有料で情報媒体から動画を買って配信するプログラムを最近開始しましたが、米Gizmodoの親会社Gawkerもその提携先です。

Top image by Jim Cooke

source: TechCrunch

Michael Nunez - Gizmodo US[原文

(satomi)