きっと今日は、のちのち振り返って「エポックメイキングな1日だった」と語られることになるのでしょう。
トヨタ自動車が「新型FCV(燃料電池自動車)」(※FCV=Fuel Cell Vehicle)を本日発表します。FCVは水素ステーションを利用することから「水素自動車」とも呼ばれることも。走行時のCO2排出量がゼロ。走行中には水しか排出しないという次代を担うエコカーです。
いや、もしかしたらエコカーというくくりを越え、水素社会の到来を自動車分野から牽引していくというくらいの社会的な意義があることかもしれません。
新型FCVが「MIRAI」という車名であることは昨日判明しましたが、まだ価格や発売日など多くの情報がヴェールに包まれています。
ギズモードではこの記念すべき1日をリアルタイム更新でお届けします。発表会のスタートは10時からです。中継動画は公式ページのほか、ニコニコ生放送やUSTREAMでも見られます。
ギズではテキストと画像を交えてお届けしていくので、お出かけ中でも随時チェックしてみてくださいね。
会場入りしました
(09:35)本日の発表会場は日本科学未来館。なぜ日本科学未来館?という感じですが「MIRAI」ですもんね。
日本科学未来館のエントランスには水の上に浮かぶようにしてカバーされたクルマが置いてありました。これもやっぱり「MIRAI」でしょうね。
会場への入場が始まりました。
(09:40)会場内のスクリーンには水がモチーフの映像が流れています。発表会のスタートはこのあと10時から。もうすぐです!
記念すべき発表会、はじまりました
(10:05)トヨタの新型FCV「MIRAI」の発表会がはじまりました。オープニング映像はなんとホログラムとLEDディスプレイによる未来感溢れるもの。「MIRAI」の文字が空中に浮き出てます。
オープニング映像では夜のサーキットを疾走する「MIRAI」が映し出されています。エコというよりも相当走るイメージ。カッコいい。リアタイヤを滑らせて水を跳ね上げている姿など、「燃料は水素」ということで水をイメージにしています。
オープニング映像中、一瞬車内のカットがあったのですが、そこでグッとBGMのボリュームが下がったのが印象的。静粛性にも優れていることの現れかもしれません。
加藤副社長によるプレゼンテーション。「MIRAI」の文字がホログラムで空中に浮き出ています。
「オープニング映像の走りのイメージはエコというイメージとは違うものだったかもしれません。エコだからといっても走る楽しみを諦めない、そんなクルマを目指しました。まさにワクワクドキドキできるものに仕上がりました」
加藤副社長「全車種でハイブリッドを展開、ハイブリッド車は累計700万台に到達。ハイブリッド技術はEV、PHV、そしてFCVのコア技術となっています。プリウスはトヨタがもたらしたイノヴェーションです。そのプリウスを超える、イノヴェーションの幕開けとなるでしょう」
「モビリティのイノヴェーション、水素社会へのイノヴェーション、プリウスを遥かに超えるイノヴェーションをもたらすことでしょう」
開発責任者が考えたのは「自動車の次の100年」
(10:10)開発責任者田中さんからのプレゼンテーション。自動車の次の100年のために。
新トヨタFCシステムの説明です。
「20年にわたる開発。FC(Fuel Cell)スタックでは水素、酸素が化学反応して電気を作ります。システムをコンパクトにできるためセダンとして開発できました」
「FCスタックの出力は114kW、家庭用0.7kWの数十倍の出力。貯蔵性能も世界トップレベル。水素タンクはガソリン車と同等の安全性を確保」
「80km/hからの追突衝突映像。タンクが安全に守られています。水素は3分で充填可能、しかも航続距離は650kmを確保しています」
「モーターは113kW(154ps)335Nmの出力、加速性能も非常によいです。静粛性も徹底的にこだわりました。風切り音やロードノイズが目立ってしまうので、ガラスもアコースティックガラスを採用。空力性能にもこだわり、床下をフルカバーして乱流を抑えて騒音発生をなくしています」
「ボディ剛性はスタックフレーム部分にカーボンをつかったり、サスペンションにブレースを追加してボディ剛勢を高めています」
実写とホログラムを組み合わせた演出
(10:18)デザインについて。突然ステージ右側から実車が登場! リアル3D! ホログラムでデザインについてのプレゼン内容が実写に重ね合わされています。
ホログラム演出を取り入れたことで、技術の説明がとてもわかりやすいです。こんなのなかなか見たことありません。
両端に空気取り入れ口をイメージしたグリル、薄型LEDヘッドライトを採用。サイドビューはウォータードロップ風。フローティングさせたボンネット。水をイメージしたピュアブルーメタリックなど6色を用意。
内装についても先進的なデザイン、シートはプレミアムな乗り心地。インテリアカラーは3色。
開発責任者田中さん「デザインは未来にふさわしい、先進感あふれるものにしたかった、しかし奇をてらわない憧れてもらえるようなものにしました」
FCV特有の機能について。
「外部給電機能を装備、最大9kW出力で災害時など心強いです。ウォーターリリーススイッチ。発電の排出の水をスイッチで出すことができます。実用的な面としては地下駐車場に入る前に使えますが、ぜひご友人に水がでるところを見てもらえれば嬉しいです」
ものづくりへのこだわり、低炭素社会の実現へ貢献
(10:23)加藤副社長に戻りました。
「プリウスよりも開発は早く、1992年から開始していたのです。2002年にはFCHVを日米導入、2005年に国内で型式認証、誠実に開発に取り組み200万キロの実走行を超えています。この実績をフィードバックし、品質に反映。高圧水素タンクなど、自社で開発することはトヨタのものづくりへのこだわりです」
「エネルギー社会にとって、化石燃料に水素が加わることでサスティナブルな社会を実現できると考えています。燃料の多様化において水素や電気が重要な役割を担います。特に水素は貯蔵が可能で、CO2排出がゼロ、走行距離が長く、充填も短時間で済みます」
「低炭素社会実現に貢献では日本における付加価値が高い、というのも石油が出ない日本における社会構造をかえることができるかもしれません」
販売開始日・価格発表!
(10:28)前川副社長によるプレゼンがはじまります。水素ステーションについて。
「現時点では約40箇所を設置。販売チャネルは水素ステーションの側のトヨタ、トヨペットで開始します。IT連携によるつながるサービスを展開。T-CONNECTなど水素位置情報、稼働状況がチェック可能。遠隔見守り機能により異常が発生しても即座に対応可能です」
2014年12月15日販売開始。気になる価格は723万6000円(税込)。
生産は2015年末までに400台を目標。当初は限られた生産となりますが、動向をみて生産拡大へ。
加藤副社長に戻ります。
「生産体制、販売体制、サービス体制など課題はまだまだあります。それでもトヨタは未来をかえていく、まず一歩を踏み出そうと決断しました。『MIRAI』という名前にはクルマの、地球の、子供たちへの未来への思いが込められています」
「トヨタだけでは実現できません。皆さんと一緒に歩んでいくものです」
ほんわかする水素の動画プレゼンテーション
(10:35)水素エネルギーについて動画プレゼンテーション。手書きのイラスト調で、水素について語られています。これも非常にわかりやすいです。
「CO2排出ゼロ。あとには水しか残りません、クリーンなエネルギー」
「ほぼ無限に存在。石油やLNGだけではなくバイオマスなどさまざまな物質に含まれています。水を電気分解しても作ることが可能。無尽蔵」
「ためられる、はこばれる。電気はためる、運ぶは苦手ですが、水素を作っておけば運搬、貯蔵が可能に。自然エネルギーをもっと活用することもできるんです」
「よりサスティナブルな仕組みが広がります」
「水素社会の基盤が揃うまでにはまだ時間がかかります。それでもトヨタは踏み出したい、少しでも前に進みたい、今までのエネルギーと共存しながら選択肢を増やすために。100年後、200年後の環境、子供たちの未来を考えて、走り出します。続いてく未来へ」
「H2OPE(ホープ)」
質疑応答
(10:40)Q: ホンダFCV CONCEPT発表会が昨日ありました。ホンダは5人乗りで、MIRAIは4人乗りですが、その理由は?
A: 高級車としての位置づけとして考えています。あえて4人乗りにしています。ホンダにも早く参入してもらい、水素社会を一緒に盛り上げられればと思っています。
Q: 岩谷産業と簡易水素ステーションを作っていくことを発表しましたが、トヨタとしての取り組みはいかがでしょうか?
A: トヨタとしては直接関与することは考えていませんが、色々と協力していきたいです。
Q: 国内販売目標は400台、海外の予定は?
A: 米国2017年末に3000台以上、欧州では2016年くらいまでに50〜100台/年間を想定しています。まったく新しいクルマなので、一台一台丁寧に作りこみ、安定的な供給の足がかりとする。
Q: 中長期的な普及に向けての技術革新、車両価格逓減に向けての取り組みはどうでしょうか?
A: 各地域をとりまく環境を見極めてから考えていきたいです。価格については2025年頃にはハイブリッド車とコンベンショナル車との価格差くらいまでにはしていきます。
Q: 普及についての見通しについて。ハイブリッド並みに普及するのにどれくらいの時間がかかりそうか?
A: 2020年代に数万台規模をめざしていく。ガソリンスタンドがあるハイブリッドは10年以上かかっていることを考えると、水素ステーションなどインフラ整備のスピードを考えると、社会全体で作っていくものだと考えています。
Q: 水素の製造過程でのCO2排出についての考えについて
A: 自然エネルギーからと天然ガスから作る場合とCO2排出量が違います。水素をどういうふうに作るといいんだろうか、という議論がまきおこるのがまず最初。自然エネルギーをうまく使い、CO2を排出しない道筋が議論されることを期待しています。エネルギーセキュリティの面からも水素を蓄えていくことを考えてく議論のキッカケとなるべく、トヨタは提案しています。
Q: 国内は2014年12月に発売、海外は2015年夏予定ですが、かわりはないか?
A: 夏から秋くらいの予定にかわりはありません。
Q: 地域による導入時期の違いはどうしてなのか?
A: 販売が本格化するのはどこなのか、2016年くらいから本格化するのではないか。時期と台数の関係で理解してもらえれば。
Q: 受注など事前の反応の数字があれば。個人のお客様に対する納期。今注文するとどうなのか。長い納期がかかるのに今この値段で出す意義は?
A: 販売店による受注は約200台。400台計画に対して、今後注文されるとすると、大分待つことになります。受注をみながら納期短縮の努力をしていく。意義については、具体的に動き出すことが必要だと考えています。
Q: 官公庁や販売店以外の受注状況は?
A: 200台の中に含まれています。購入を決定された受注台数となっています。
Q: 700万円台は正直安いと考えたのですが、採算がとれるまでにどれくらいかかるのか? インフラ整備、水素作りに主体的に参入しない理由について。
A: 採算はお答えできません(苦笑)。もっと手頃な価格で提供できるよう継続して努力していきます。トヨタが直接インフラ整備に取り組まないのは、餅は餅屋に、我々はそういう役割ではない。導入期において、整備が不十分なのでグループとしては水素が補給できるように色々な事業体と連携して、運営では協力できないかと考えています。
Q: 日本産業を牽引する立場から、燃料電池は意義が大きい。トヨタがどのような役割を果たしたいのか。
A: 環境問題を考える場合に省エネ、多様化、エコカーは普及してこそ環境貢献という3つのポイントがある。石油は当面続くと考えているが、燃費をよくすることは継続する。外貨を使って資源を輸入している日本において、燃料の多様化、石油に依存しない取り組みが必要とされる。燃料電池、水素は主流となりうるが、始めないとはじまらないので、ここでやろうと決断しました。率先してやっていきたいです。
Q: FUN TO DRIVEについて。エコカーが低重心で運転が楽しい、プリウスのイメージよりさらに一歩進んでいることについての考え方について。
A: 燃費がいいから我慢して乗ろう、というのは豊田社長も僕も(加藤副社長)も耐えられない。A地点からB地点にいくだけではなく、乗ってワクワクするクルマにしていきたい。これはクルマ作りの基本だと思います。少しばらけていたところがあるが「もっといいクルマ作り」というコンセプトで改めて取り組んでいる最中です。
Q: 日本の競争力。米国、欧州に販売するクルマに日本の名前をつけた理由について。
A: 「MIRAI」という名前を海外でもそのままでいくのは、ある意味トヨタならでは。「カイゼン」という言葉が世界に広まったように、「MIRAI」という言葉に誇りをもって世界に広めていきたい、同じ車名で世界に展開していきます。
Q: 開発に時間がかかった理由について。
A: 機械、メカと違い化学反応だったため、自動車作りが違うため時間がかかった。しかしステップバイステップで開発を進めてきました。インフラの話があり、政府、インフラ産業、自動車産業で一緒に取り組み2015年を目指しているタイミングが揃ったこともこのタイミングで市販する要因となっています。
Q: FCスタック、水素タンクなど内製する理由について。
A: ハイブリッド開発のときも同じで、カイゼンを繰り返さないと完成度が上がらないため、モーター、インバーターも内製でトライしてきている。革新的な技術がたくさん詰まっているので、コスト低減、性能向上という面からどのようにカイゼンすべきかということは、自分たちの手でやらないと分からない。現地現物という風土があるので、生産技術部門も一緒になって開発して今回のような価格で提供できるようになった。しかしこれはまだはじまりに過ぎず、もっと安く、量産できるように頑張っている。そのためには内製を選んでいます。
Q: 開発上の一番の苦労、ブレークスルーはなんだったのか。
A: さきほどと同じですが燃料電池はケミカルなので、機械系とは異なる。燃料電池の仕組みは水の電気分解の逆でシンプルなのですが、高出力化など、ものづくりの技術で成り立っています。それがようやく達成できたので、今回出すことができました。
――質疑応答は以上です。
「MIRAI」のエクステリアはデザインにもこだわりあり
デザインにもこだわったというMIRAIのエクステリア。詳細を見て行きましょう。
フロントグリルフロントは大きな2つのサイドグリルが特徴。空気中の酸素と水素を反応させて電気を作るので、ここから空気を取り入れて発電するほか、冷却にも使います。
水素充填口給油口ならぬ、水素充填口。ここから高圧で水素を充填します。満タンにかかる時間はたったの3分で、これはガソリンと同等以上。
マフラーレス当然のことながら、排気用のマフラーはありません。水が下に排出されるのみ。排出は自動の他、ためておいてボタンで行うこともできます。
トランクトランク内には100VのACアウトレットがある他、オプションの外部給電器をつなげれば家庭にAC電力を供給することが可能。
ボディカラー色は6色を用意。
イメージカラーのブルーが私はお気に入りです。
プレミアムセダンとして作り込まれた「MIRAI」のインテリア
エクステリアだけではなく、インテリアにもこだわったというトヨタ新型FCV「MIRAI」。プレミアムセダンとして作り込んだインテリアは高級感と先進性を兼ね備えています。
インテリアスティックプリウス同様、シフトスティックで操作。
フロントシートシートは電動で調整が可能。座面は乗り降りしやすい高さで、クッション性も高く包み込まれる感じでくつろげます。
リアシートセパレート式の後部座席はセンターにしっかりしたアームレストを装備。シートの高さもちょうどよく、セダンならでは乗り降りしやすさが味わえます。乗車定員は4名。
カップホルダーと小物入れ、100V1500Wのコンセントを装備しノートPCも使えます。
セダンとしてのくつろぎの空間とビジネスをこなせる電源環境を両立しています。水素満タンで650km走行でき、エンジンの騒音もなく静粛性が高いので、長距離の高速移動も快適そうです。
トヨタ新型FCV「MIRAI」を支える技術
FCV「MIRAI」は世界初の量産型燃料電池車。これを実現するために新たにパッケージングから考えられています。
カットモデル従来のエンジンにあたるモーターはフロントに搭載するFFモデル。純粋なモーター駆動ですが、ハイブリッド技術、汎用パーツをうまく流用することでリーズナブルな価格に抑えています。
燃料電池車の肝心要のFCスタックはフロントシート下に設置。これで酸素と水素を反応させて電気を生み出します。
燃料タンクとなる水素タンクはリアシート下とトランクと背もたれの間に設置。トランク奥にはバッテリーも配置し、生み出した電気をここでいったん貯めることが可能です。
水素充填口から水素をタンクに貯蔵、FCスタックで発電した電力でモーターを駆動するとともにバッテリーを充電。高負荷運転では逆にバッテリーの電力を使ってパワフルな走りを可能にします。このような協調制御はハイブリッドで培ってきたノウハウの賜物です。
重量物はなるべく床下に配置することで低重心化、前後重量バランスを最適化したことでFFとは思えないほどの爽快な走りを実現。またリアサスペンション取り付け部にブレースを入れたりと、FUN TO DRIVEを実現するためのボディの高剛性化もぬかりはありません。
フロアはパネルで覆い、空気抵抗も少なくなっており、静粛性と燃費向上に貢献しています。
トヨタの持てる技術を惜しみなく投入した最新モデルとしても、興味深いです。
まとめ
いよいよ一般ユーザが購入可能な燃料電池車が発売されます。発売日は2014年12月15日、価格は723万6000円(税込)。政府からの補助金が検討されているので、実質的にはもっと安価に購入可能なはずです。
決して安いとは言えませんが、これまでの燃料電池車の価格を考えるとまさにリーズナブルといっていいでしょう。すでに官公庁を中心に200台を受注、2015年末までの生産予定が400台とのことですから、これから予約しても納期は相当先になると思われる人気っぷりです。
排出するのは水だけ、というまさに未来のクルマである「MIRAI」は、テクノロジー好きの日本人をワクワクさせてくれます。単にエコなだけ、ではなくオープニング映像にもあったように真っ暗なサーキットを音もなく俊敏に走りさる「MIRAI」、水の上でリアタイヤを滑らせながら水しぶきをあげる「MIRAI」と、フットワークの軽さを予感させます。
加藤副社長、豊田社長のいうように単にエコだけのクルマだけではない、走って楽しい、ワクワクさせてくれるような「もっといいクルマづくり」を目指した結果と考えると、これまでのエコカーのイメージをいい意味で裏切ってくれそうです。
水素ステーションのインフラ整備や、水素を使ったクルマということでユーザの安全性への理解など課題は多いですが、まさに「始めなければ始まらない」という言葉どおり。未来に向けて新たな一歩を踏み出した意味は大きいです。
あとは実際に乗ってみてどうなのか、試してみたいですね。
source: toyota.jp FCV
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(野間恒毅・ギズモード編集部)