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【連載:キャッシュレス最前線】 日常生活に急速に広がりつつあるキャッシュレス決済。企業や団体は、より便利なサービスや更なる業務効率化を実現しようと、さまざまな場面でキャッシュレス決済の導入を加速させている。「そんなこともできるの?」「そんな場所でも使えるの?」とヒントになるようなキャッシュレス決済の活用の最前線を取材し、連載でお届けする。 |
キャッシュレス決済が急速に普及し、さまざまなソリューションが生まれている。なかでも、決済専用端末が不要な「端末レス決済」への注目度は高い。決済専用端末購入のコストがカットでき、端末誤作動のトラブルからも解放されるためだ。
導入が期待される代表的な場面の一つに、電化製品の修理、引っ越し、廃品回収などの訪問サービスがある。家電品、空調機器、設備機器等の販売やエンジニアリング・保守サービスを提供する日立グローバルライフソリューションズは、家電品の訪問修理サービスにデジタルガレージの子会社、DGフィナンシャルテクノロジーの端末レス決済「Cloud Pay Neo(クラウドペイ ネオ)」を採用した。2024年6月の導入後、お客さまの満足度向上やコスト削減、業務効率化などさまざまな効果があったそうだ。
端末レス決済導入の背景や活用方法、具体的な効果について、ホームソリューション事業部家電サービス本部サービス戦略企画部部長・楠 一寛氏に聞いた。
日立グローバルライフソリューションズはこれまで、訪問修理サービスにおいて、決済専用端末によるクレジットカード決済に対応していた。しかし、複数の課題があったとのこと。
「課題は大きく3つでした。1つ目は、通信環境によってスムーズな決済ができないことです。決済専用端末を使った決済では、端末と修理作業者のタブレットをBluetoothで接続する必要がありました。しかし、環境によっては通信が安定せず、うまく接続できないケースがあったのです。特にお客さまに心配をかけてしまうのは、決済中に通信が切れるパターンです。決済が完了したかがわからず、確認に時間がかかっていました。2つ目は、決済専用端末の管理にコストがかかっていたことです。新しい端末の購入にお金がかかることはもちろん、在庫管理や故障時の交換にも手間がかかっていました。3つ目は、支払い方法が限られていたことです。導入していた決済専用端末はクレジットカード専用で他の決済手段は使えませんでした。お客さまが選べる決済手段は、クレジットカード決済、現金支払い、請求書払いの3つに限られていました。
しかし、世の中でキャッシュレス決済が普及するにつれ、『QRコード決済は使えないのでしょうか?』と、別の決済手段を求める声も、お客さまから多くいただくようになったのです。特に30代から40代を中心に、さまざまな決済手段のニーズが増えており、サービスの利便性向上のためには新しい決済ソリューションの導入が必要だと感じていました」
課題解決のため、日立グローバルライフソリューションズが選んだのは、端末レス決済「Cloud Pay Neo(クラウドペイ ネオ)」の導入だった。「Cloud Pay Neo」を使えば訪問修理サービスの現場で、顧客が修理作業者のQRコードを読み込むだけで支払画面が立ち上がり、クレジットカードや多様なQRコード決済で簡単に支払いができる。
先に挙げた3つの課題を解決できるサービスだったことに加え、すでにデジタルガレージグループのシステムを活用しており、導入がスムーズだったこともポイントだったそう。加えて、重視したのはセキュリティレベルの高さだった。
「近年、クレジットカードの情報漏洩は大きな問題になっています。『Cloud Pay Neo』では、お客さまが自身のスマートフォンを使って、QRコードの読み取りから情報の入力までをおこないます。この方法では、スキミング(※)のリスクがなく、安心してお客さまに決済いただける点が非常に魅力的でした。修理作業者にとっても、お客さまのクレジットカード番号や暗証番号を見ないようにと、気を遣う必要がなくなり、よりスムーズかつ安全に決済手続きを完結できるようになりました」
※クレジットカードやキャッシュカードなどの情報を不正に入手し、利用する犯罪手口
「Cloud Pay Neo」の導入から約4カ月。訪問修理サービスの現場からの反応もよく、効果を実感しているそうだ。
「まず大きかったのは、訪問修理サービスにおける支払いの流れが非常にスムーズになったことです。QRコードを見せるだけで支払い手続きをしてもらえるため、当初の課題だった決済専用端末とタブレットの通信不良に悩まされることはなくなりました。修理作業者からも決済の流れがスムーズになり、仕事をより早く終えられるようになったという声をもらっています。また、決済専用端末をもち運ぶ負担や、紛失させたり壊してしまったりする心配からも解放され、楽になったとのことでした」
事業運営の観点からすると、大幅なコスト削減にもつながっているという。「決済専用端末の購入費用が修理作業者の人数分必要になりますが、その支払いが今後一切不要になります。また、すでに配布している決済専用端末の故障に伴う対応からも解放されました」
何より実感したのは、顧客の満足度向上だ。「新しい決済手段が増えたことで、現金を用意しておく必要がなくなり、便利になったという声が多く寄せられています。また、QRコード決済を一部導入したことで、ポイント還元が受けられるようになったことも喜んでいただいている点です。『修理業界もこんなに進んでいるのですね』と驚くお客さまも多いです。業界ではまだQRコード決済が普及しておらず、結果として『先進的な決済方法を取り入れている会社』として、我々の存在を認知いただけることにもつながっていると思います」
さらに、日立グローバルライフソリューションズ全体で進めていたキャッシュレス化の推進に関しても、ポジティブな影響があったとのこと。
「そもそも私たちは、現金の取り扱いリスクを軽減するために『100%キャッシュレス』を目標に掲げ、取り組んできました。訪問修理サービスの多くを代行店に委託しており、代行店は修理代として現金を受け取った場合、預り金として管理しなければならず、金額によっては決められた期日までに日立グローバルライフソリューションズへ振込する必要があったのです。こうした現金の保管リスクや振り込みの作業の手間、さらに釣銭の用意は以前から大きな課題でした。注力のかいあって、キャッシュレス率は、『Cloud Pay Neo』の導入前からすでに高い水準を達成していましたが、導入後はさらにキャッシュレス率が上昇し、目標の100%に近づいています。社内でもこの取り組みは高く評価されています」
業界のなかで、最先端の決済手段を導入している日立グローバルライフソリューションズ。今後の展望について聞いた。
「『Cloud Pay Neo』を導入して約4カ月、効果の大きさを実感していますので、さらなる活用を進めていければと考えています。具体的には、現状は、クレジットカードをはじめ、一部のQRコード決済のみ対応していますが、今後は、他の決済手段も追加するつもりです。
より多様な支払い方法を用意することで、お客さまの利便性向上に貢献できればと思っています。
加えて、引き続きキャッシュレス率100%を目指して、『Cloud Pay Neo』に限らず、あらゆる取り組みにチャレンジしていければと思っています。繰り返しになりますが、キャッシュレス化はお客さまの利便性向上はもちろん、現金取り扱いに伴うリスクや手間の軽減ももたらします。顧客満足度向上と事業運営効率化、どちらにも効果のある取り組みを続けていければと思っています。」
※ QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。
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