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注目ゲームイベント「RTA in Japan」とは?―今さら聞けない基礎知識と、今だからこそ伝えたいこと【CEDEC2024】

ユーザーコミュニティからスタートし、今やゲームメーカーとコラボを行うほど人気になったゲームイベント「RTA in Japan」について解説します。

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注目ゲームイベント「RTA in Japan」とは?―今さら聞けない基礎知識と、今だからこそ伝えたいこと【CEDEC2024】
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2024年8月21日(水)から23日(金)までパシフィコ横浜ノースで開催された「CEDEC2024」。3日目におこなわれたセッションのうち、「プレイヤー主導のゲームコミュニティ:RTAの現場から学ぶ」では人気のゲームイベント「RTA in Japan」についての講演が行われました。本稿では、講演内容を抜粋してお伝えします。

登壇者は、「KeynNaka」のハンドルネームで自らもRTA走者という運営メンバーの中村圭宏さん。

「RTA in Japan」といえば、つい先日(8月9日~8月15日)まで恒例のゲームイベント「RTA in Japan Summer 2024」が行われていた人気コンテンツ。しかし意外と勘違いされることもあり、今回の講演では、「RTA」や「RTA in Japan」について改めて解説がされました。

▲登壇者で「RTA in Japan」の運営スタッフでもある中村圭宏さん。

そもそも「RTA」とは?

「RTA」とは「Real Time Attack」の略。おもにタイムアタックを競うビデオゲームの競技形式のことを指します。海外では「Speed Run」と呼ばれており、海外ゲームコミュニティ発祥のRTA大会を日本でもやろうとしたのが「RTA in Japan」でした。

タイムアタック形式は様々で、例えばゲームを完全クリアするもの、ボスを倒すまででサブイベントはカウントしないもの、特定のアイテムを集めるものなどいろいろです。中には目隠しをして『スーパーマリオ64』のクリアを目指したり、『ときめきメモリアル』や『麻雀』など、競技向きとは思えないようなゲームが対象になることもあったりします。

ルールもその時々で異なり、記録を出すために使われていたような特定のテクニックを禁止したり、すべてのテクニックを禁止して走者のプレイスキル一本で記録を競うこともあります。

それらルールは最初にトライした走者をベースにすることが多く、各大会ではそういった前例をもとに、各ゲームのRTA走者の間で話し合って決められます。熟練者が最適とされるルールを作るわけです。

たまに視聴者などからルールについて「RTA in Japan」の運営に問い合わせがあるそうですが、そのような理由があるため運営では回答できかねると中村さんは語ります。

「RTA」の面白さは、まさにそのルールの中でいかにタイムを出すかという部分。タイムアタックという明確な目的はもちろんのこと、それを実現させる驚きのテクニック、タイムを出すための作戦、ルールによって変わる遊び方など、「ゲームの純粋な面白さと走者の凄さ」を味わえるところにあります。

▲「RTA in Japan」の各アタックで採用されているルールの一部。単純にタイムアタックするだけでなく、どのような縛りの中でタイムを出すかも見どころです。

「RTA in Japan」について改めて紹介

「RTA in Japan」はRTAが好きな人たちの結束を強め、RTAの発展と促進を図るために活動している団体です。

アメリカで2010年から実施されている「Games Done Quick」(GDQ)を参考に、同様のゲームイベントを日本でも開催したいということで2016年よりスタート。一般プレイヤーの有志が集って実施・運営をする部分は変わっておらず、近年はチャリティイベントとしても活動しています。

▲「RTA in Japan」のスタッフ概要。運営スタッフ8名はそれぞれが本業を持つ一般プレイヤー。約1週間続く各大会ではボランティアで協力してくれるスタッフを募集し、毎回200名ほどが会場の受付や会場スタッフとしてイベントを盛り上げています。

チャリティイベントの活動をはじめたのはイベント立ち上げの2年後、2018年の冬に開催した「RTA in Japan3」から。当初は運営メンバーのポケットマネーでグッズを制作し、その売上の30%を寄付していましたが、2020年夏開催の「RTA in Japan Online 2020」より協賛企業を通して「国境なき医師団」への寄付をする形に変更。「運営スタッフのポケットマネー」という限りある予算から少数のグッズを制作するだけでは限界があったことから、そのような形式に改めました。

その後、2020年に社団法人化したことをきっかけに、2021年夏開催の「RTA in Japan Summer 2021」から直接寄付の受付も開始。寄付額に応じて走者がさまざまなパフォーマンスをして視聴者を楽しませるというシステムも導入しました。

なおパフォーマンスとは、たとえば目標額に到達したら難しいテクニックに挑戦する、キャラクターの名前を寄付額によって決定するなど様々あります。

現時点での「国境なき医師団」への寄付総額は、なんと1億1300万円以上。

そこまでチャリティイベントにこだわる理由は、海外RTAイベントがチャリティメインであったこと、ゲームで社会貢献ができるというモデルケースを作りたかったこと、チャリティ文化を草の根レベルで日本に根付かせたいという運営チームの願いがあったからでした。

ちなみに2020年に社団法人化したのは、個人開催では金銭面の負担が大きすぎたこと、法人化することで法人向けサービスやイベント協賛などのメリットが得られることが理由として語られました。

実際、直接寄付が実現したのも法人化のおかげです。

▲寄付金に応じて実施された走者たちのパフォーマンス。2024年夏に開催されたイベントでの実例です。

次回「RTA in Japan」は12月25日から31日まで開催!

ユーザー主導の「RTA in Japan」が立ち上げられたことで、ユーザーコミュニティはどのように変化したでしょうか?

以前はコミュニティが細分化されており、たとえば配信サイトごとに分散し、なおかつゲームタイトルそれぞれで独立したものとなっていました。

現在はDiscordやSNSの普及によりそれぞれの垣根が曖昧になり、ゲームタイトルや配信チャンネルに縛られない交流が盛んになっています。「RTA in Japan」自体、さまざまなゲームタイトルを扱うことでその一助となっていたのではないでしょうか。

また「RTA in Japan」をきっかけにオフラインのRTAイベントが実施されるようになり、東京に限らず地方開催だったり、ゲームメーカーとのコラボだったりを実現しています。

▲ゲームメーカーなどとコラボレーションするほどその認知は拡大しています。たとえば『ELDEN RING』では、発売元のフロム・ソフトウェアよりRTAイベントの出演者の相談があり、走者のキャスティングで協力したことがありました。

ユーザーコミュニティの輪を広げるきっかけとして大いに貢献した「RTA in Japan」。プレイヤーからの声が集まりやすいということもあり、ゲームメーカーに対して様々な希望も上がっているようです。

たとえばイベントで使用されるゲームはいわゆるレトロゲームを含んでおり、中には当時品でしかプレイできないものも存在しています。そういったものを何かの形でプレイしたい、せっかく素晴らしいテクニックが披露されて興味を持ったのにプレイする手段がないといった声が多く聞かれるそうです。

またRTAイベントの現場としても、プレイ対象のゲームカートリッジが故障したらプレイ自体を断念することにもなりかねないので、難しいとは思いつつも、移植などを一考してもらえたら嬉しいと語っていました。

視聴者からゲームメーカーへの要望として多いのは、「当時品でしかプレイできないゲームをプレイしたい」というもの。

さらに、「RTA in Japan」からは協賛企業の募集がありました。

より多くのファンが観覧できる会場の確保、モニター等の機材の提供など、サポートをしてくれる企業があると嬉しいとのこと。ゆくゆくは海外ゲームイベントのようにホテルで大規模開催し、出演を控える走者に宿泊してもらうのが夢だそうですが、今はまだその道の半ばといったところです。

「RTA in Japan」では協賛企業を募集しています。

まずは2024年12月25日(水)から31日(火)まで、ベルサール飯田橋ファーストで実施される予定の次回イベント「RTA in Japan Winter 2024」。そちらの開催をお楽しみに!

講演の詳細はアーカイブからご確認ください。


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