給与データを見ると、サム・アルトマン氏のOpenAIとイーロン・マスク氏のxAIは、社員に業界標準を大幅に上回る給与を支払っている。
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AI(人工知能)業界が注目とパワーを集め、数十億ドルの資金調達を続けているなか、AIの2大企業 ── イーロン・マスク氏のxAIとサム・アルトマン氏のOpenAI ── が人材を巡って激しい争いを繰り広げている。マスク氏は8月、OpenAIは「競合他社を飢えさせる」ために「豪華な報酬」を提供しているとして訴訟を起こした。
給与についてのマスク氏の訴えを検証するために、Business Insiderは、2024年の各社の専門ビザ申請をもとに賃金データを分析した。データが入手可能だった複数の職種について、両社とも業界平均を大幅に上回る報酬を提示していたが、OpenAIは一部の社員に標準レートをさらに上回る高額な報酬を支払っていた。
H-1Bのような専門職ビザで外国人労働者を雇用する際に企業が提出しなければならない書類は、通常は非公開な両社の給与データの一端を垣間見せるものであり、AI人材獲得競争について貴重なインサイトを与えてくれる。
xAIの規模は、OpenAIに比べると小さい。PitchBookによると、OpenAIの従業員数は約3000人、一方、xAIは約100人という。
H-1Bの申請数は、xAIは10人、OpenAIは86人。 両社は、米国税関・移民局(USCIS)のデータによると、調査対象の職種について業界の平均賃金(一般賃金)をそれぞれ37%と87%上回る賃金を支払っていた。
一般賃金は米労働省が規定する。これは、特定の地理的エリアの特定の職種の労働者に支払われる平均賃金を表す。H-1Bのような専門ビザで労働者を雇用する場合、雇用主は少なくともその職種の平均賃金と同額を支払わなければならない。
データによると、xAIが専門ビザ申請を行った10の職種の給与は、25万〜50万ドルだった。最高額は、主任マシンラーニング(機械学習)エンジニアで、その職種の平均賃金のほぼ2倍の額を受け取っていた。
一方、OpenAIは、専門ビザ申請のデータが入手可能だった86の職種に、14万5000〜53万ドルの給与を支払い、技術スタッフの1人は、平均賃金の3倍以上の給与を得ていた。
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上の表は、USCISのデータから割り出した2社の各職種の平均給与を、業界の平均賃金と比較したものだ。
データは、マスク氏とアルトマン氏との間の確執を再燃させた訴訟中に、マスク氏のxAIが給与についてどのようなアプローチを取っているかについての手がかりとなる。を提供している。
2人は2015年にOpenAIを共同創業し、マスク氏はシリコンバレーの複数の投資家とともに総額10億ドルの投資を約束した。2018年、マスク市はテスラ(Tesla)のAI関連ビジネスとの潜在的な利益相反を理由に、OpenAIの取締役を辞任した。
以来、マスク氏はOpenAIとアルトマン氏を繰り返し批判し、同社は「私が意図したものとはまったく異なる」と述べている。マスク氏は今年初め、OpenAIとアルトマン氏を提訴したが、訴えを取り下げ、8月に新たな訴訟を起こした。OpenAIの反競争的行為に加え、マスク氏の弁護士は、マスク氏が「騙され」「操られ」て同社を共同創業したと述べた。
「この訴訟は、イーロン・マスク氏が自身の競争優位性を確保するためにOpenAIを悩ませるという、ますます激しくなっているキャンペーンの最新の一手だ」と、OpenAIの弁護士はマスク氏の訴えを却下するための申し立てに記した。さらに、xAIを立ち上げて以来、マスク氏は「優位性を得るために司法制度を活用しようとしている」と続けた。
マスク氏、アルトマン氏、xAIおよびOpenAIの広報担当者は、コメントの依頼に応じなかった。
2015年から2016年にかけてのマスク氏、アルトマン氏、他のOpenAI社員の間のメールでは、マスク氏がAI分野のトップ人材の採用が重要であることを繰り返し強調していたことが示されている。
マスク氏の訴えのなかで提出されたこれらのやり取りの中で、マスク氏は採用はOpenAIの「最も重要な検討事項」であるべきで、同社は「エース級の才能を獲得するために必要なことは何でもすべき」と書いている。
4月、マスク氏は、OpenAIがテスラの従業員を「積極的に採用」し始めたあとに、xaiはテスラのエンジニアを迎え入れたと述べた。
リンクトイン(LinkedIn)のプロフィールを調査した結果、xAIは、マスクが2023年に同社を設立して以来、共同創業者のイーゴリ・バブシュキン(Igor Babuschkin)氏をはじめ、少なくとも9人の元OpenAI社員を雇用している。