ジョブズが実践していた｢生産性｣高める秘訣とは？グーグル、ヤフーも助言求めた“紙1枚”でできる目標設定

彼は最終的に、今日あるアップルの姿を築き上げた。アップルは、時価総額2兆円を達成する初の企業になる可能性もある。

臆することなく完璧を求める

ジョブズは、はっきり主張するリーダーだったが、時に非情でもあった。アップル、グーグル、フェイスブックなどのハイテク企業をめぐる独占禁止法問題に関する公聴会の後、下院司法委員会の反トラスト小委員会が、ジョブズがアップルCEO時代に送った一連のメールを公開している。

これらのメールが示しているのは、ジョブズが、収益の一部をアップルに提供しないかぎり他社がアップル製品内で電子書籍販売を行うことを阻止し、サブスクリプション用アプリの開発者にアップルの決済サービスを使うよう強制したということだ。

ジョブズは、アップルの元開発者ジョー・ヒューイットに対しても手厳しかった。ヒューイットは、iPhoneとiPad用のアプリを、ソフトウェアツールで翻訳するのではなくオリジナルのプログラミング言語で書くというアップルの計画に異議を唱えていた。

｢今後はジョーを切った方がいい｣ジョブズは部下にメールでこう指示している。

ジョブズは、自社の勝利を確かなものにするために巧みな戦術を使ったが、世界有数の大企業の幹部が集まる取締役会では特にそうだった。

例えば、臆することなく完璧を求め、製品には決して妥協しなかった。実際、ジョブズは妥当性を｢道徳的におぞましいもの｣と考えていた。

｢今日達成できたことがこれ1つだけだったら？｣

ヤフーのジェリー・ヤン同様、グーグルの共同創業者ラリー・ペイジも、CEOに就任しようとしていた2011年にジョブズにアドバイスを求めた。死期が近づいていたジョブズは、アップルの競合であるグーグルに寛大になることにした。

｢私は、フォーカスすることを何よりも強調したよ｣と、ジョブズは伝記作家ウォルター・アイザックソン［編集部注：アイザックソンはジョブズの伝記『スティーブ・ジョブズ』の著者］に語っている。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文でアイザックソンは、ジョブズが名高い成功を収めていた2度目のアップルCEO時代、アップルの幹部と実施した｢トップ100｣社員旅行でこの戦略を応用したと書いている。

社員旅行の最終日、社員の前に立ったジョブズは、アップルが次にすべきことを提案させ、それをホワイトボードに書いていった。そしてアイザックソンによると、｢くだらない｣と思ったものは消していき、｢かなりの駆け引きの末に｣最終的には10個のリストにした。それから、その最終リストの下から7つを消し去ったという。

『｢週4時間｣だけ働く。』の著者ティモシー・フェリスは、ジョブズがアップルに使ったこのテクニックは日常生活にも活用できると言っている。

フェリスはポッドキャストのエピソードの中で、こんなアドバイスをしている。1日を始める前に、まず一番のストレスの原因になっていることを3〜5つ書き出す。そしてそれぞれについて、｢今日達成できたことがこれ1つだけだったとしたら、満足して一日を終えられるだろうか？｣と自問する。そのうえで、それを達成することに全力を傾けるのだ。

｢その日にやるべき重要なことが10個あったら、100％確実に、重要なことは何一つその日に終えられない｣とフェリスは言う。

この戦略は驚くほどシンプルだが、｢フォーカスする｣という抽象的なコンセプトを、実際に応用できる形に凝縮している。

※この記事は2020年8月13日初出です。

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