フォルダブルノートPC「ThinkPad X1 Fold」。第2世代となり、開いた状態の画面は16.3型に。第1世代(13.3型)に比べ大画面になった。
撮影:小山安博
レノボのノートPCブランド「ThinkPad」が30周年を迎えた。
レノボ傘下に変わる以前の日本IBM時代から、継続して日本の大和研究所(神奈川県)が開発の中心となって続くノートPCシリーズは、30年で累計出荷台数2億台を突破している。
30周年を迎えて、新製品として登場したのが、折りたたみ型ディスプレイを搭載した「ThinkPad X1 Fold」と「ThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Edition」だ。
ロゴが特徴的な周年記念エディション
「ThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Edition」。
撮影:小山安博
ThinkPad X1 Carbonの30周年記念モデルは、基本的な仕様は既存の最上位モデルと同等 だ。
天板のThinkPadロゴの「Pad」の部分がRGBカラーになっているほか、日本向けは1000台限定で米沢工場(宮城県)で生産している。
TrackPointの交換用キャップに青と緑のカラーも採用して3個ずつ同梱される。価格は33万円。10月5日から発売開始した。
天板のThinkPadロゴがRGBに。
撮影:小山安博
ThinkPad X1 Carbon Gen 10 30th Anniversary Editionのキーボード。
撮影:小山安博
RGBのTrackPoint交換用キャプも同梱。
撮影:小山安博
折りたためる大画面PCは「第2世代」が登場
X1 Carbonの記念モデルに対して、X1 Foldは、第2世代目の折りたたみPCとして登場した。10月中旬の発売を予定し、最小構成価格は54万2300円(税込)。
「Galaxy Z Fold4」などの折りたたみスマートフォンが、タブレットサイズで折りたたむとスマホサイズになるという端末を実現している。
それと同様に、「折りたたむとコンパクト、開くと大画面PCになる」というのが特徴だ。
折りたたむとコンパクト。サイズ感は説明しづらいが、B5用紙よりちょっと大きい(やや細い)というサイズ。
撮影:小山安博
手に持つとこのぐらいのサイズ感。
撮影:小山安博
閉じていればコンパクト。
撮影:小山安博
開けば大画面。
撮影:小山安博
画面サイズは16.3型。第1世代が13.3型だったので、大幅なサイズアップとなった。
開いた状態だと画面の大きなタブレットで、本体サイズは約299.4×236×11.5mmから約345.7×276.2×8.6mmになった。
横幅は50mm、縦長は40mmと大きくなったが、対して厚みは薄くなっている。ベゼルも細くなったので、見た目は洗練された印象になった。
ディスプレイは有機EL方式で、解像度は開いた状態で2560×2024ドット(画面の縦横比4対3)を実現している。
大画面タブレットにフルサイズキーボードとペンを併用して便利に使える。
撮影:小山安博
縦置きすれば、縦長の画面で作業ができる。
撮影:小山安博
本体中央から折りたたむことができ、大きさは約176.2×276.2×17.4mmと、当たり前ながら横幅が半分、厚みが倍になる。
16.3インチという大画面を備えるとは思えないサイズになって、気軽に持ち歩ける、というのがメリットだ。
ノートPCのように真ん中から折りたたむことができる。
撮影:小山安博
専用のBluetoothキーボードとスタンドも付属。
キーボードは薄くコンパクトながら、縦横のサイズは折りたたんだ状態のX1 Foldとほぼ同じで、マグネットによって本体と固定できるので持ち運びやすい。
付属するスタンドとフルキーボード、オプションのペン。
撮影:小山安博
スタンドは開いてタブレット状態にしたX1 Foldを横向きにして設置できるだけでなく、縦置きにしても安定して自立する設計とした。
角度も無段階で変えられる仕組み。第1世代と比べてスタンドを工夫したことで、縦置きでも安定する。
また、ソフトウェア的にも縦位置で安定して動作するカスタマイズを加えているという。
スタンドは安定性が高く、比較的自由な角度で固定できる。
撮影:小山安博
さらに、本体を開いて縦置きにして、画面の下半分の上にキーボードを重ねておくと、マグネットを検出して画面の下半分が消灯、上半分だけに画面が表示されるノートPCモードになる。
そうすると、コンパクトのノートPCのように扱える。マグネットで固定するため、キーボードを使用してもズレたりはしないようだ。
下半分にキーボードを装着すれば、通常のノートPCのように使える。
撮影:小山安博
「たためるディスプレイ」はシャープ子会社との共同開発
レノボ・ジャパン執行役員常務の塚本泰通氏によると、第1世代では携帯性の高さや持ち歩きたくなるプレミアムな外装と質感、専用キーボードとペンのオプションに対してポジティブな反応だったという。
一方で、パフォーマンス不足、小型キーボードのサイズとレイアウト、TrackPointの非搭載、本体内蔵スタンドの力不足といったネガティブな反応があったそうだ。
X1 Foldを掲げる塚本泰通氏。
撮影:小山安博
その解決策として登場した今回の新モデルは、大画面に加えて第12世代のインテルCore i7/i5、メモリー最大32GB、ストレージ最大1TBを選択可能として、パフォーマンスを向上させた。
画面サイズの大型化に伴い、そのサイズに合わせたキーボードもフルサイズとなり、TrackPointも搭載。外付けのスタンドは使い勝手を向上させた。
塚本氏は、ThinkPadの開発哲学として、生産性向上の提供や先進性、信頼性に加え、「重要なのはお客様の声」と話し、その哲学の通りに、得られたフィードバックに応える製品を実現した。
ThinkPadの開発哲学。
撮影:小山安博
初代X1 Foldに寄せられたフィードバック。
撮影:小山安博
今回、折り曲げ(フォルダブル)ディスプレイを担当したのは、シャープディスプレイテクノロジー(SDTC)。今回のディスプレイを実現するにあたって、レノボと共同開発したという。
Galaxy Z Foldシリーズや第1世代X1 Foldなどの一般的なフォルダブルディスプレイは、「U字曲げ」と呼ばれるくさび形にも近い折り曲げ方を採用している。
この場合、ディスプレイの表面が触れ合わないようにわずかにすき間ができてきょう体が分厚くなってしまうが、構造的にはディスプレイパネルへの負荷は少ない。
新たに採用されたのが「雫型曲げ」という屈曲構造。折り目となる部分を外側に逃がすようにして折りたたむことで、ディスプレイ同士がピッタリと重なってよりコンパクトで収納性の高いデザインを実現できる。
新型X1 Foldに採用された「雫型曲げ」。
撮影:小山安博
筐体側の構造。中央部にあるのが「雫型」になる部分。
撮影:小山安博
ディスプレイパネル。
撮影:小山安博
フレキシブルケーブル。
撮影:小山安博
こうしたパネルを設計するSDTCと、それを搭載するヒンジきょう体を設計するメーカー側のすりあわせが必要不可欠、とのことで、SDTCとレノボが密接に協力して生み出した。
雫型曲げによってフラットになった側面。
撮影:小山安博
中央部分の曲げの様子。
撮影:小山安博
両社の共同開発は1年以上にわたって進められた。これを実現できたのは、SDTCの開発陣とレノボの大和研究所がともに日本にあって、エンジニア同士が密接に取り組めたからという。
ちなみにこのBluetoothキーボードは付属。単体発売の予定は現時点でないが、要望が多ければ検討するという。
撮影:小山安博
「これまで培ってきた技術を生かしながら、開発哲学を大事にしながら、次の10年、20年、30年と進んでいきたい」と塚本氏は強調し、今後も日本でのThinkPad開発に注力していく考えを示していた。
発表会場には最初のThinkPadであるThinkPad 700C(1992年)以降の製品がずらりと集結。
撮影:小山安博
ThinkPad製品の系譜。
撮影:小山安博