成長著しいテクノロジーエコシステムでも知られるフィンランドの首都ヘルシンキ。成長を加速させる人材獲得に動き出した。
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- フィンランド政府は首都ヘルシンキ滞在中の全費用を負担することでシリコンバレーのテック人材を誘致する新たな取り組みを始めた。
- 「アメリカ西海岸のトップ人材」がターゲットで、選考ではアメリカ人が優先されるという。
- 選考を通過した人はヘルシンキに移り、現在の仕事をリモートワークで継続することになる。本人とその家族は、滞在中の住居費、授業料、コワーキングスペースの使用料などを免除される。
フィンランド政府がアメリカのテックワーカー獲得に乗り出した。3カ月の「リロケーション(移住)パッケージ」を無償提供し、将来フィンランドで働いてくれそうな人材とその家族を首都ヘルシンキに呼び込む。
フィンランド首都圏の国際貿易・投資プロモーション機関「ヘルシンキ・ビジネスハブ」が90日間のリロケーションパッケージを通じて、「住宅、託児所、学校……必要なすべてのサービス」を提供するという。
ほかにも、フィンランドサウナのような体験型ツアーを無料で楽しめるなどの特典もあるが、渡航費用は本人負担となる。
ヘルシンキは世界の都市を対象とした幸福度、ワークライフバランス、環境政策、テクノロジーエコシステムの成長度などのランキングでは常に上位にいる。テクノロジー関係者にとっては、毎年冬に開催される世界最大級のスタートアップイベント「Slush(スラッシュ)」がよく知られるところだ。
ヘルシンキ・ビジネスハブの公式ウェブサイトによれば、リロケーションパッケージのターゲットは「アメリカ西海岸のトップ人材」で、選考ではアメリカ人が優先される。選ばれた人は現在の勤務先をやめる必要はなく、ヘルシンキに移ってリモートワークで仕事を続けられる。
「投資家、企業の社員、起業家、どなたでも本プログラムに応募できます。参加者は現在のポジションのままフィンランドで職務を継続することになるため、リモートワークが可能な方あるいはご自身で企業を経営されている方が優先的な対象となります」
「本プログラムはアメリカ西海岸のトップ人材を主要なターゲットとしたもので、アメリカからの応募者を優先して選考します」
募集期間は12月10日まで、選ばれるのは最大15人。2021年2月からリロケーション受け入れが始まる。
応募資格として、シェンゲン・ビザ(=欧州のシェンゲン協定加盟国内であれば、180日の期間内で最大90日の滞在がビザ取得不要で自由に往来できる)の適用対象者である必要がある。なお、アメリカやカナダ、日本などの国籍保有者は、シェンゲン・ビザの自動適用対象とみなされるため、本プログラムの応募資格を満たすことになる。
また、リロケーションパッケージの参加者で永住を希望する人は、必要なサポートを受けられる。
本プログラムが公開されたのは11月4日。アメリカ大統領選挙に合わせた意図的な設定とみられる。
シリコンバレーは民主党支持者が多く、共和党のトランプ大統領が2期目の当選を果たした場合、高度技術者向け「H-1B」外国人就労ビザの発給要件が厳格化されることで、世界を代表するテック人材ハブとしての地位が危うくなるとの見方が出ていた。
(※アメリカでは11月8日に民主党のバイデン候補が当選確実と報道されている)
[原文:Finland is offering a 3-month 'relocation package' to Helsinki for jaded Silicon Valley tech talent]
(翻訳・編集:川村力)