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    ヒカキン兄セイキン。同業者に嫉妬はしない。家族は顔出ししない。深い理由

    人気商売で不安定なイメージもあるYouTuberだが、トップを走り続けるクリエイターは何を考えているのか?

    SEIKIN。31歳。彼の弟は日本で一番有名なYouTuber、HIKAKINだ。弟に「投稿してみたら」と誘われて動画を投稿してから約6年。

    人気YouTuberとして活躍し、弟と共に歌う『今』でミュージックステーションに出演するまでに至る。

    人気商売で不安定なイメージもあるYouTuberだが、トップを走り続けるクリエイターは何を考えているのか? 兄として同業者である弟に何を思うのか? 話を聞いた。

    英語と格闘しながら動画をあげている弟に手を引かれて

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    一番最初にあげた動画。静止画にアカペラがのっている。 / Via youtube.com

    SEIKINがYouTubeに動画を投稿し始めたのは、2012年のことだった。弟のHIKAKINから「投稿してみたら?」というフランクな提案をされたのだ。

    ネット上に自分を出すことに抵抗はあまりなかった。2007年から、高校生だった弟が日本語に非対応だったYouTubeに動画を投稿している姿を見ていたからだ。兄として出演したこともあった。SEIKINという名前は、先輩である弟から提案されたものだ。

    「どこにアップするわけでもなく、歌を録音してたんです。YouTubeで生計を立てられるとも思ってませんでしたし、当時はそういうツールもなかった」

    会社員として働きながら、YouTubeにのめりこんでいった。

    「朝出社して、夜遅く帰ってきて、夜中に撮影、朝まで編集……みたいな。仕事はできるだけ早く終わらせて。家で撮影が待ってますからね。どうやったら再生回数が伸びるのか? 最初は歌だけでしたが、レビューを始めたり……そんな日々が2年ほど続きました」

    「正直、体力的にはかなりしんどかったです。フラフラな時期もありました。でも、YouTubeを見てもらえるってやっぱりすごく嬉しくて。UUUMから声をかけてもらったときに、一本にしようと決めました。食えるかわからない。でも勢いに身を任せて」

    他のクリエイターを見て、ライバル心を抱くこともある。でも嫉妬心はおきない

    YouTuberは人気商売。好きなことを仕事にできる一方、数字が毎日更新され、動画をアップロードするペースを落とせない仕事でもある。ライバルも多い。

    「研究も兼ねて海外も日本も問わずYouTube内の動画はすごく見ます。海外の流行を日本でどうローカライズさせて紹介しようかなと考えながら。あと、単純に好きだから見ます。はじめくんとか東海オンエアとか。こんな派手なことやってんの!? すげー!! って」

    YouTubeでこの動画を見る

    ハンドスピナーの動画。海外のものを日本でどう流行らせるのか? 四六時中考えている。 / Via youtube.com

    数多のクリエイターが活躍する中、嫉妬感情は芽生えることはないのだろうか?

    「あはは。ライバル心は多少あります。僕も頑張らなきゃなっていう気持ちは当然ある」と淡々と話す。

    「はじめしゃちょーだったら彼にしかできないこともある。オリジナリティーを出すことが大事なのかなと。僕だったら……毎年出す歌。これが大きい」

    SEIKINはもともとアカペラ動画からキャリアをスタートさせた。今でこそゲームの実況中継やレビュー、「やってみた」動画など幅広く動画を作っているが、根本にあるのは歌だ。このアイデンティティが彼の穏やかさを支えている。

    「僕はずっと歌が好きで、小学生の時から声を録音していたんです。主旋律をラジカセで録音して、次はもう一個のラジカセを使ってコーラスを重ねていく……みたいなアナログなことをやっていました。僕がボーカルをやってHIKAKINがボイパをやったり。あいつ、昔はコーラスもやってたんですよ」

    好きで作ってきた歌を発表する場所として、初めて手に入れたのがYouTubeだった。

    会社員時代に行きつけのラーメン屋の歌を口ずさんでいたところ、HIKAKINから「せっかくだからYouTubeの歌も作ってみてよ」と言われ、完成したのが『YouTubeテーマソング』だった。

    この曲自体が完成したのは2012年。当時は楽曲制作する手段もコネクションも持っていなかったが、2016年にアレンジを加えてリリースした。

    「『YouTubeテーマソング』は直感だけで作った歌詞とメロディーだったので、受け入れてもらえるのか心配でした。でも、絶対に出したかった。当時はYouTubeのクリエイターが歌をリリースするっていうこと自体、ほぼありえないことだったので」

    「日々出している動画とは違う反応が来た。不安はありましたけど、毎日のおもしろネタとは違う価値がある。本当はもっと音楽を作っていきたい。でも、日々の動画制作との両立はやっぱり大変。せめて1年に1回は作詞作曲から手がけた歌を作りたいって思ってます」

    家族の存在

    2018年4月、SEIKINは父になった。陣痛が始まると弟にLINEで連絡をし、HIKAKINも病院にも駆けつけた。その様子もYouTubeで公開し、話題になった。

    「妻は昔から、カメラを回してくれたり動画制作に協力してくれていたので理解はあります。家事も基本的に分担。子育ても一緒にしているので、動画の制作時間がとれなくなったのが今の課題です」

    家族みんなでYouTubeに取り組んできた。出産の日、結婚式、あらゆる場面をYouTubeに公開してきたSEIKINだが息子を動画に出演させるつもりはないという。

    「家族生活を全面的に出していこうとは思っていません。妻も声は出演していますが、顔は出していない。動画は僕の作品だし、一度出したものは消せない。そこは一線を引いて、好きなものを作っていけたらなと思ってます」

    人生の節目も記録して公開してきたSEIKIN。その隣には、いつもHIKAKINがいた。

    二人三脚な部分もあるが、どんな想いで接しているのだろうか? YouTubeという同じゲームボードにいるライバルでもある。

    「似ていることをやっている、同業でもあります。でもよく見ると内容も編集方針も違うし、視聴者も違うんです。HIKAKINはポップな感じで、僕は長男らしい感じ(笑)」

    「音楽でも僕が歌、HIKAKINがビートボックス。楽曲制作も、基本は僕が作詞作曲をします。もちろん弟の意見も聞きながら、二人で相談して作りました。LINEもするし、近所なので家にも行きます。この前も朝まで家にいて、弁当を食べて……やるか、みたいな」

    刺激も受けながら、一番、何も気にせず話せる存在。それがHIKAKINなのだという。

    「兄弟だからお互い言えることってあるんです。動画の企画や、音楽の方向性について意見が食い違うことも時々ありますが、そんなときは、どっちかが折れる、まぁまぁそれでいいよと譲り合う姿勢はお互いにありますね」

    12月21日、トップアーティストたちが名前を連ねるミュージックステーション スーパーライブ2018に出演した。数年前まで部屋の中で1人録音を楽しんでいた兄弟は、2人でステージに立っていた。