電通社員の自殺をきっかけに、長時間労働について批判的な報道が相次ぐ。しかし、報じている側はどうなのか。朝日新聞社内でも長時間労働に関して、問題が発生していることがわかった。
部下が申請した出退勤時間を上司が改ざんし、一定の基準内に収めていた。BuzzFeed Newsが朝日新聞の社内文書を入手した。
基準ギリギリに改ざん
BuzzFeed Newsが入手したのは、朝日新聞社の労働組合が問題の経緯を組合員に説明するために社内で配布した文書だ。
それによると、今回、問題視されているのは、ある部門の社員が申請した2016年3〜4月の2ヶ月分の出退勤記録。出退勤時間を管理する立場の所属長によって、いわゆる残業時間にあたる「措置基準時間」が、以下のように改ざんされていたという。
- 3月:155時間30分→99時間
- 4月:153時間10分→119時間40分
関係者によると、朝日新聞の就業規則では、記者職の社員などの「措置基準時間」が月100時間以上なら「産業医等による面接指導、または面接指導に準ずる指導を受けられる」と決められている。120時間以上なら「健康チェックができる自己診断表を配布」されるという。
つまり、社員の出退勤時間は、面接指導や診断表配布などをする必要がない範囲に、改ざんされていた。
「修正していいと思った」
今年5月下旬、「出退勤記録が実態を反映していない」と本人から労働組合に相談があり、発覚。社内調査を経て、会社側も改ざんを認めた。
所属長は、「日頃から部下に時短を強く呼びかけていたので、本人に断りなく修正していいと思った」と話したという。
推移を見てみると、改ざんが認定された月以外でも、「119時間50分」「99時間50分」などと基準ギリギリになっている。しかし、今回、社員の手元に残っていた本来の出退勤記録を元に改ざんが確認されたのは、3〜4月分のみだった。
他の月について、この所属長は「たまたまだと思う」。会社側は「データは確認できなかったが、パソコンのログオン・オフ記録と勤務記録に差異があるため、改ざんの可能性があることを認識している」と説明しているという。
また、会社側は組合に対し、再発防止策として、当該所属長に対し「記録申請段階でのコピーを印刷して保存することを指導する」ことを明らかにしている。ただ、すべての所属長に同様の対応を求めることに対しては「時間や労力、コスト」を理由に否定。処分に関しても、公表しない考えを示しているという。
「過労死レベルの部署がある」
文書には、組合に寄せられた意見として、こんな社員たちの言葉が紹介されている。
電通事件があったが、うちの会社も過労死レベルの残業を行っている部署がある。本当に過労死した場合、出退勤を時間でみられた時に「時間的には大丈夫だったんだね」ということになりかねない。
あまりにブラック企業すぎて言葉が見つからない。
泊まり勤務の時にずっと起きて仕事をしていたのでそのまま記録したが、上司が「これ何?」と聞いてきたので、寝たことにして直した。「そうしろ」という空気を感じた。
朝日新聞社の対応は
BuzzFeed Newsは今後の対応などについて、朝日新聞社にFAXで取材した。同社は、編集部門で出退勤記録の改ざんがあった事実を認めた。
再発防止策として、「すべての管理職に対する改めての研修」と、「現在の管理方法を再確認する調査」を実施しているという。