ロシア、「死亡説」の黒海艦隊司令官の映像を公開 ウクライナは主張を後退させる
クリミアのロシア黒海艦隊司令部に対する22日の攻撃をめぐって、ウクライナは同艦隊の司令官が死亡したと主張している。これに対しロシア国防省は26日、この司令官が会議に出席したとする映像を公開した。
ウクライナの特殊部隊は25日、ロシアが占領しているクリミアのセヴァストポリにあるロシア黒海艦隊司令部への攻撃で、ヴィクトル・ソコロフ司令官と将官33人が死亡したと発表した。ただ、同司令官を直接は名指しせず、死亡した証拠も示さなかった。
これに対し、ロシア国防省は26日、ソコロフ司令官がセルゲイ・ショイグ国防相らとビデオ回線でつながっている場面の映像を公開した。
撮影日時は不明。ロシア国防省は、高官らの会議が26日朝に開かれたとした。
映像は8分間。モスクワにいたショイグ氏が、黒海艦隊など5艦隊の司令官と短時間、一緒に映る場面が何度か出てくる。司令官は誰も発言していない。
顔認識ソフトは、ソコロフ氏本人が映っていると判定している。
BBCは、会議が実際に26日に開催されたのかや、ソコロフ氏の映像がリアルタイムのものだったのかについて確認できていない。
ウクライナは主張を後退
この映像が公開されると、ウクライナ特殊部隊は関連報道の「明確化」を進めていると説明。
「周知のように、ロシア黒海艦隊司令部に対するミサイル攻撃の結果、将官34人が死亡した」、「(遺体の)多くは損傷しており、まだ身元が確認されていない」とする声明を出した。
声明ではまた、死亡した34人に司令官が含まれているとの主張は「公開されている情報源」に基づくものだとした。
こうした反応は、前日まで自信満々だった主張をウクライナが後退させていることを示している。
ウクライナのルステム・ウメロフ新国防相は、スコロフ司令官が死亡したのなら「皆にとってよい知らせ」だが、確認が取れているわけではないと米CNNに話した。
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クリミアへの攻撃
クリミア中心部への22日の攻撃をめぐっては、ウクライナが情報を得て、重要会議を狙った可能性がある。
この攻撃の重要性は過小に評価されるものではないが、ウクライナが成果を過大に主張したとすれば、長引く情報戦における不注意な過ちとなる。
攻撃の様子とされるソーシャルメディアの映像では、建物の上に煙が立ち上っていた。ロシアはミサイル5発を撃ち落としたと発表。兵士1人が行方不明だとした。
ウクライナはこのところ、クリミアを拠点にしているロシア軍を連日のように攻撃している。
黒海艦隊はロシアにとって、ウクライナを攻撃するための基盤であると同時に、この地域における数世紀にわたる軍事的存在感を誇示する主要シンボルにもなっている。
同艦隊は2014年にロシアがクリミア半島を不法に併合する前から、租借契約に基づいてクリミアを拠点としていた。