「X」がプライバシーポリシー改定 利用者の生体情報や職歴など収集へ

クリス・ヴァランス、BBCテクノロジー記者

X's owner Elon Musk

画像提供, Getty Images

画像説明, Xを所有するイーロン・マスク氏は、「Xは実質的に、国際的なアドレス帳だ」と述べた

米ソーシャルメディア「X」(旧ツイッター)がプライバシーポリシーの一部を改定し、9月29日からユーザーの生体情報や学歴、職歴などを収集する方針を明らかにした。また、Xプレミアムに登録しているユーザーは、認証を受けるにあたり、自撮り写真か写真付き身分証明書のどちらを提出するか、選択できるとしている。

新しいプライバシーポリシーは、9月29日に発効される。

X社によると、生体情報の収集は、Xプレミアムのユーザーが対象となる。

同社ホームページには、「ユーザーに有望な仕事を紹介したり、ユーザーが求人に応募した場合に、その求人元の潜在的な雇用主と当該ユーザーに関する情報を共有したり、雇用主が有望な候補者を見つけられるようにしたり、ユーザーにより関連性の高い広告を表示したりするために、ユーザーの個人情報(職歴、学歴、仕事に関する希望、スキルおよび能力、求職活動および内定などに関する情報)を収集して使用することがあります」とある。

Xは今後、人材紹介サービスを提供するつもりではないかとの憶測されている。

複数報道によると、Xは5月、技術系人材紹介サービス「Laskie」(ラスキー)を買収した。

ミズーリ州セントルイスのワシントン大学でデータサイエンスを教えるリバティ・ヴィッタート教授は、この動きについて、Xが「ユーザーのためにより的を絞った個別体験」を確立しようとする試みと、ビジネス交流サイト「リンクトイン」のようなライバルプラットフォームの存在が影響していると指摘した。

しかし、ユーザーにとっては「絶対に警戒すべき」ものだという。雇用主が、応募者のツイートやリツイート、フォローするアカウントなどの情報を採用・不採用の決定に使うなど、技術が悪用されるかもしれないと、同教授は警鐘を鳴らした。

技術倫理を研究するステファニー・ヘア博士は、「X」は「大量のデータを収集する」ことになるが、それは「ユーザーの同意を得てのこと」で、ユーザーは強制されるわけではないため、公民権や市民の自由といった観点から心配するものではないと話す。

生体情報

X社によると、顔や指紋のスキャンなど、個人の身体的属性に関する生体情報の収集は、Xプレミアムのユーザーが対象となる。

同社はBBCに対し、「認証段階を追加するために、自撮り画像と政府発行の身分証明書を提出するオプションを提示する」と説明している。

「本人確認プロセスのため、政府発行の身分証明書と自撮り画像の両方から生体情報を抽出する可能性がある。政府発行のIDを扱えば、本人の希望にもとづき、IDの提出を選んだアカウントと実在の人物をひも付けることが、さらにやりやすくなる。なりすましを狙うアカウントにXとして対抗し、プラットフォームの安全性を高めることにも役立つ」と、X社は説明した。

通話機能の導入は

Xを所有する米富豪イーロン・マスク氏は8月31日、ビデオ通話や音声通話ができるオプションをユーザーに提供する計画があることも強調した。この機能は、アップルのiPhoneやiPadに搭載されている携帯端末基本ソフト「iOSやアンドロイド機種、Mac、PCで動作」し、「電話番号は不要」だという。

「Xは実質的に、国際的なアドレス帳だ」と、マスク氏は述べた。

この通話機能の利用開始時期については、言及していない。

動画配信アプリ「TikTok」は、すでにアメリカで生体情報を収集している。

同社のプライバシーポリシーには、「アメリカの法律で定義された、顔写真や声紋などの生体識別子や生体情報を収集することがある」と書かれている。

しかし、昨年9月の米上院公聴会で当時のヴァネッサ・パッパス最高経営責任者(CEO)代行は、同社は「個人を特定するような顔や声、音声、身体認識のようなもの」は使用していないと述べていた。

マスク氏にはXを、Xひとつで必要なものすべてがそろう「万能アプリ」にするという野心がある。その一環として、今後も追加機能の追加や、それを可能にするプライバシーポリシーの追加改定が続く可能性がある。