米軍無人機、ロシア戦闘機と黒海上空で衝突・落下 ロシアは「直接の接触なかった」と

ジェイムズ・ランデ(キーウ)、アンリ・アスティエ(ロンドン)

MQ-9 Reaper (file picture)

画像提供, Getty Images

画像説明, 偵察・監視用に設計された米軍無人機「MQ9リーパー」

米軍は14日、黒海上空で同軍の無人機「MQ9リーパー」がロシア軍の戦闘機と衝突し、墜落したと発表した。ロシア側は直接の接触はなかったと主張している。

これによって、ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアとアメリカの直接対決の危険性が高まっていることが浮き彫りになった。

米軍によると、事故は中央ヨーロッパ時間14日午前7時3分(日本時間同日午後3時3分)ごろに起きた。

米軍の無人機が黒海上空の国際空域で通常任務を遂行中、ロシア軍のジェット機2機が妨害しようとしてきたという。

「我々のMQ9リーパーが国際空域で通常任務を行っていたところ、ロシアの航空機から妨害を受け、衝突し、MQ9を完全に失うこととなった」と、米軍は声明で説明した。

また、ロシアのスホイ27(Su-27)戦闘機は衝突が起きる前、数回にわたり、無人機に燃料を浴びせ、「無謀かつ環境に配慮していない方法で、プロらしくない態度」をとっていたとした。

アメリカは今回の出来事に抗議するため、ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使を呼びつけた。

ロシア国営メディアはアメリカ側とアントノフ氏の協議後、アントノフ氏がロシア政府は無人機をめぐる出来事を「挑発行為」とみなしていると述べたと伝えた。

ロシアは、米軍無人機は「急な方向転換」を行った後に墜落したとし、ロシア軍機との直接の接触はなかったと主張している。

また、MQ9リーパーがトランスポンダーを切った状態で飛行していたとした。トランスポンダーは、機体追跡を可能にする通信装置。

MQ9リーパーは翼幅約20メートルの偵察用無人機。

黒海をめぐる緊張

2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合して以降、黒海をめぐる緊張は高まっている。

ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始したことを受け、アメリカとイギリスは偵察・監視飛行を強化している。ただ、その活動は常に国際空域内に留まっている。

今回の出来事で重要なのは、ロシアがアメリカの無人機とその活動を妨害しようとしたのか、それとも意図的に墜落させようとしたのかどうかという点だ。

アメリカによると、同地域では同盟国の航空機が「ロシア人パイロットによる危険な行動パターン」に遭遇するケースがあったという。

ロシア人パイロットが単に、無人機を妨害しようと接近しすぎたことによるミスだった可能性もある。しかし、ロシア軍戦闘機による米軍機への意図的な攻撃だった場合、深刻な挑発行為で、実質的なエスカレーションに相当する。

そうだったとするとこの攻撃は、ロシア政府がアメリカの反応を試すために行ったものと考えられる。

西側の同盟国は、ウクライナでの戦争がロシアとの直接対決に発展するのを阻止しようと、懸命に努力してきた。しかし黒海上空での今回の出来事は、まさにそれに直結するものだった。アメリカは自分たちの対応を評価しなければならなくなる。

米軍司令部が声明で警告した通り、「誤算と意図しないエスカレーションにつながりかねない」危険行為だったといえる。