ブラジル司法当局、公安局長ら高官の逮捕を命令 襲撃事件関与か
ブラジルの司法当局は10日、ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者が8日に国の中枢機関を襲撃した事件をめぐり、高官らの逮捕を命じた。
司法当局は、事件のあった首都ブラジリアの元公安局長アンデルソン・トーレス氏ら、暴動につながる「作為・不作為の責任」を負う人々の逮捕を命じたとした。トーレス氏は、暴動への関与を否定している。
地元メディアは、軍警察の元司令官が逮捕されたと報じた。
事件発生時に軍警察の司令官だったファビオ・アウグスト大佐は、事件後に免職された。
暴動は、今月1日にルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領が就任宣誓を行ってから1週間後に発生。サッカーのブラジル代表チームの黄色いシャツを着た何千もの人々が、議会や大統領府、最高裁判所に突入し、内部を破壊した。
事件に絡み、これまでに約1500人が逮捕され、警察学校に収容された。当局によると、うち約600人は別の施設に移されたという。逮捕から正式起訴まで、警察は5日間かけることができる。
トーレス氏はボルソナロ政権で法相を務めていた。暴動後、ブラジリアのイバネイス・ロシャ知事から保安局長の座を追われた。
なお、ロシャ氏もその後、最高裁判所から90日間の停職処分を受けている。
<関連記事>
ブラジリアの公安責任者に任命されたリカルド・カッペッリ氏は10日、はトーレス氏が「組織的な妨害工作」を行ったと非難。ボルソナロ氏の支持者らが政府機関に突入する前に、トーレス氏の「指揮が欠けていた」と指摘した。
カッペッリ氏は米CNNの取材に対し、1日の就任式の「セキュリティー計画は非常に成功した」と説明。
だが、トーレス氏が2日に「公安局長を引き継ぎ、全司令部を解散させ、旅立った」のだと、カッペッリ氏は述べた。
「これが妨害工作でなくて何なのか」
これに対しトーレス氏は、自分が暴動に関与したという「ばかげた仮説」を本当に残念に思うと述べた。また、トーレス氏は襲撃があった日、家族で休暇を過ごしていたとし、個人的にも仕事上でも「最も苦い日」だったと述べた。
ルラ大統領は、ブラジリアでの「テロ行為」を止めるという義務を怠ったとして、治安部隊を非難している。
ボルソナロ氏の資産凍結を要求
ブラジルの検察当局は10日、襲撃事件を受け、連邦監査裁判所にボルソナロ前大統領の資産を凍結するよう求めた。
ボルソナロ氏は昨年10月の大統領選の敗北を認めず、今月1日の引き継ぎを前にアメリカに出国している。
ボルソナロ氏は暴動について、発生から約6時間後にツイッターで非難。暴徒をあおるようなことはしていないとした。
9日には、腹部に痛みがあるとしてフロリダ州の病院に1日入院した。同氏は2018年に腹部を刺されて以降、時折腹痛に悩まされている。
しかし10日にはCNNの取材に対し、アメリカ滞在は1月末までの予定だったが、これを繰り上げてブラジルに戻る用意があると話した。
BBCのケイティ・ワトソン南米特派員は、ボルソナロ氏は10月の選挙に敗れて以来、非常に静かにしていると指摘。一方で、公に負けを認めないことで、最も熱心な支持者らが、民主的で公正な選挙に怒り続けることを許しているのだと付け加えた。