トンガ政府、「未曽有の災害」と声明 海底ケーブル復旧には4週間も
火山の大規模噴火と津波に見舞われたトンガ政府は18日、発生後初の声明を発表し、「未曽有の災害」に襲われたと説明した。周辺国による救援物資の輸送は、降り積もった火山灰の影響で遅れが生じている。
一方、ニュージーランド外務省は19日、噴火で切断されたトンガの海底ケーブルの復旧には、少なくとも4週間かかるとの見通しを示した。
海底ケーブルの断絶により、トンガとそれ以外の国との連絡はほぼ取れなくなっている。海外在住のトンガ出身者らは、愛する人たちからの無事の知らせを待ち続けている。
トンガでは、複数の離島には救助隊が派遣されている。全ての家屋が破壊されたり、家屋が2棟しか残っていない離島もあるとされる。
国連はトンガ人3人とイギリス出身女性1人の死亡を確認している。
現地ではいまも火山灰が降り続いており、救援活動は滞っている。飲み水などの物資を運ぶ航空機が主要空港の滑走路に着陸できるよう、200人ほどのボランティアたちが手押し車やシャベルを手に灰の除去を進めている。
国連児童基金(ユニセフ)太平洋地域事務所(フィジー)のジョナサン・ヴェイチ氏は19日朝、現地の火山灰の除去作業が予想以上に難航していると説明。一方で、良い進展もあったとし、空港が近く利用再開されると見込まれていると記者団に述べた。
「(18日には空港が)利用できると考えていたが、灰がさらに降ってきているため、まだ完全には除去できていない」
ヴェイチ氏はまた、ニュージーランドとオーストラリアが船で救援物資を送るという迅速な対応を取ったことを称賛。これらの船は「大量の水と衛生用品」を積んでいるという。ヴェイチ氏は現場は「非常に困難」な状況にあると述べた。
ニュージーランドのピーニ・ヘナレ国防相はBBCに対し、同国が最近派遣した海軍艦艇2隻について、数日中にトンガに到着する予定だと語った。
「トンガまでの航海には約3~4日かかる。水や食料、医療品などの大量の物資を用意している」
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トンガでは15日夕、首都ヌクアロファの北約65キロで海底火山が噴火した。爆音は遠く離れたアメリカまで届いた。この影響で高さ1メートルを超える波が発生し、トンガの島々を襲った。ペルーでは2人が高波で溺れたほか、首都リマ沖でタンカーから原油が流出し、近くの海岸が閉鎖された。
トンガ政府は18日、インターネットは切断されているものの、一部の国内電話サービスは利用可能であり、通信の完全復旧に向けて作業が進められていると説明した。
ニュージーランド外務省は19日に声明を出し、「米ケーブル会社サブコムが、トンガのケーブル回線の復旧には少なくとも4週間かかるだろうとみている」とした。
ロイター通信によると、サブコムは南太平洋に敷かれた総延長5万キロ以上の海底ケーブルの修復を請け負っている。現在、通信会社トンガ・ケーブルと共同で、ケーブル修復のための船を出す準備を進めているという。
トンガでは2019年にも悪天候で海底ケーブルが損傷し、携帯電話とインターネットがほぼ全面的に使えなくなった。同国を含む太平洋の島国のいくつかは、海底ケーブルが1本しか通っておらず、専門家らは複数にすることが望ましいと指摘している。
トンガ政府の声明内容
トンガ政府の声明によると、トンガ人女性(65)、トンガ人男性(49)、イギリス人女性のアンジェラ・グローヴァーさんが津波に流され死亡した。多数の負傷者も報告されている。その後、国連が4人目の死者を確認した。
本島のトンガタプ島では数十棟の家屋が被害を受けた。被害が最も大きかった島々からは住民が避難を始めているという。
また、水の供給が火山灰によって「深刻な影響」を受けている。航空機の飛行が一時停止され、海上の輸送ルートも寸断されているという。
下のトンガタプ島の衛星写真(プラネットラブスPBC提供)では、中央の白丸を左右にドラッグすると、火山噴火前の1月14日と噴火後の同16日の状況を比較できる。16日の写真では、集落が確認できなくなっている。
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コロナ拡散を心配する声も
トンガは新型コロナウイルス対策の厳しい水際対策を敷いてきたことから、感染が拡大していない。国連はトンガに支援が届くようになっても「COVIDフリー」の状態を維持できるよう努力するとしている。
救援活動が新型ウイルスの拡散につながることを懸念する声も、当局の一部で出ている。トンガでは昨年10月に初の感染者が確認された。
国連は、支援のために人員を派遣できるかどうかは不明だが、本島の港が運用可能な状態であることから、水や食料などの物資は届けられるとした。