文大統領、朝鮮戦争終戦宣言で「原則合意」 韓国・北朝鮮・アメリカ・中国の4者で

South Korean President Moon Jae-in and Australian Prime Minister Scott Morrison (not pictured) witness a signing ceremony at Parliament House in Canberra on December 13, 2021.

画像提供, Getty Images

画像説明, オーストラリア・キャンベラでスコット・モリソン豪首相との協定署名式に臨んだ韓国の文在寅大統領(13日)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は13日、韓国、北朝鮮、アメリカ、中国の4者が、朝鮮戦争の正式な終結を宣言することに原則合意したと発表した。ただ、北朝鮮側が話し合いの前提条件を提示していることから、協議はまだ始まっていないと付け加えた。

1950~1953年まで続いた朝鮮戦争は、平和条約ではなく休戦協定で終わっているため、韓国と北朝鮮は現在も形式上は戦争状態にある。

北朝鮮は中国の支援、韓国はアメリカの後ろ盾を受けており、緊張関係が続いている。

現在、オーストラリア・キャンベラを訪問中の文大統領は、スコット・モリソン豪首相との共同記者会見で朝鮮戦争の終結について言及した。

北朝鮮は何を求めているのか

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹で有力者の金与正(キム・ヨジョン)氏は9月、北朝鮮が南北協議に応じる可能性を示唆した。ただし、アメリカが北朝鮮に対する「敵視政策」をやめることを条件に挙げた。

北朝鮮は韓国駐留米軍や毎年行われている米韓合同軍事演習、さらには北朝鮮の核兵器開発計画に対するアメリカ主導の制裁措置について、一貫して異議を唱えている。

一方でアメリカは、北朝鮮が先に核兵器を放棄しない限り制裁は解除しないと繰り返し主張している。

文氏は13日、北朝鮮が話し合いの前提条件として同じ要求を続けていると説明した。

「そのため、我々は(終結)宣言に関する議論や交渉の席に着けずにいる。(中略)我々は協議が開始されることを望んでいる」

文氏は北朝鮮関与政策を自らの政権の礎としている。過去には、朝鮮戦争の正式な終戦宣言が北朝鮮の核放棄を促すだろうと主張していた。

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米中のこれまでの主張

アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10月の記者会見で、朝鮮戦争の終結を宣言する合意に達するための「さまざまなステップを取る正確な順序や条件のタイミングについて」、アメリカは「やや異なる見解を持っているかもしれない」と述べた。

一方で韓国・聯合ニュースは先週、北京駐在の韓国の外交官の話として、中国の外交トップ、楊潔篪(ヤン・チエチー)中国共産党中央政治局委員が、中国が「終戦宣言の推進」を支持することを約束したと報じた。

朝鮮戦争で何があったのか

朝鮮戦争は1950年6月、共産主義の北側の兵士約7万5000人が、南北の事実上の境界線だった北緯38度線を越えて南側に侵攻したことをきっかけに始まった。

韓国を支援する米軍が数カ月後に加わり、中国とソ連の後ろ盾を受けた北朝鮮軍は押し戻された。

血なまぐさい膠着(こうちゃく)状態が続き、1953年7月にアメリカと北朝鮮との間で休戦協定が結ばれた。

この戦争で約500万人の兵士と民間人が命を落とした。

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<解説>ローラ・ビッカー、ソウル特派員

文大統領にはもう時間がない。

朝鮮半島に恒久的な平和をもたらそうと5年間にわたり心血を注いできた文氏は、来年3月に退任する。

北朝鮮はこれまで以上に孤立している。南北首脳の間で握手と約束が交わされたあの日々は、消えてしまったかのようだ。今のところは。

朝鮮戦争の終戦で合意することが文氏の最後の望みだが、大きな困難に直面している。

アメリカは彼のアイデアにいまいち乗り気ではないようだ。バイデン政権は喜んでこの件について話をしているようだし、もちろん誰も朝鮮半島の恒久的な戦争状態を望んでなどいない。しかし、こうした合意は金氏から何の保証を得ることなく、同氏に報酬を与えるようなものだと考える人もいる。

推進派からは、合意は外交上のジェスチャーであり、北朝鮮に安全の保証を与えるための出発点だとの声が上がっている。一方で反対派は、北朝鮮政府がこの合意を利用して2万8500人の駐韓米兵を撤退させ、米韓合同軍事演習に終止符を打たせる可能性があるとしている。

北朝鮮国営メディアも、終戦宣言は「時期尚早」だと伝えている。

さらに文氏には、もっと大きな問題も残されている。韓国は休戦協定の当事国ではないのだ。終戦の合意は、文氏が歴史に刻めるものではない。

文氏が朝鮮戦争のすべての当事者を交渉のテーブルに着かせようと努力し続けることはできる。しかし、すべての当事者を細かな点まで合意させるというのは、エヴェレストに登るのと同じくらい厳しい道のりと言える。

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