重油流出の日本貨物船、「真っ二つ」の恐れも モーリシャス沖
インド洋の島国モーリシャスのプラヴィン・ジャグナット首相は9日、同国沖で座礁し、重油が流出している日本の貨物船について、船体に大きな亀裂が入り、船が「真っ二つになる」恐れがあると警告した。
日本の海運会社、長鋪汽船の関連会社OKIYO MARITIME社が所有する、パナマ船籍の大型ばら積み貨物船「WAKASHIO(わかしお)」は先月25日、モーリシャス沖のサンゴ礁周辺で座礁した。
同船は商船三井がチャーターし、運航していた。
事故当時、同船に積み荷はなかったものの、約4000トンの燃料を積載していた。乗員は避難したが、周辺海域に1000トン以上もの燃料が流出しているとみられる。
ジャグナット首相は、悪天候にも関わらず、9日に500トンもの燃料を安全に船からくみ上げたと明かした。
一方で、「最悪のシナリオ」に備えていると警告した。
モーリシャスには世界的に有名なサンゴ礁があり、観光業が経済で重要な役割を果たしている。
ジャグナット首相は7日、燃料が流出していることを受け、環境非常事態を宣言。フランスに支援を求めた。
フランスは汚染防止装置を、モーリシャスに近いフランスの海外県レユニオン島から軍用機で輸送。日本はフランスの活動を支援するため、国際緊急援助隊の専門家チーム6人を派遣した。
モーリシャスの沿岸警備隊や複数の警察部隊も現場に入っている。
「自分たちの手で何とかしようと」
先週末から複数のボランティアが、畑から集めたわらを袋に詰めたものやチューブを使って重油の拡大を防ごうとしている。また、ビーチを清掃している人たちもいる。
こうした行動は、清掃作業を地方自治体に任せるよう求める政府の指示に反するものだ。
「人々は自分たちの手で何とかする必要があると自覚している。我々は自分たちの動植物を守るためにここにいる」と、環境活動家のアショク・サブロン氏は9日、AFP通信に述べた。
<モーリシャス(MAURITIUS)とフランスの海外県レユニオン島(Reunion)の位置関係>
商船三井は9日、わかしおの周囲に自社のオイルフェンスを設置しようとしたものの、荒波の影響でうまくいかなかったと述べた。
環境への懸念
環境問題専門家らは、モーリシャスのエコシステムへの影響を懸念している。
わかしおは、希少な野生生物が生息する保護区域として知られる「ポワントデスニー」で座礁した。このエリアには、ラムサール条約で国際的に重要な場所に指定されている湿地も含まれる。
国際環境団体グリーンピース・アフリカのハッピー・カンブル氏は、「数千」種もの生物が「汚染された海で溺れ、モーリシャスの経済や食料安全保障、健康に悲惨な結果をもたらす危機」にあると述べた。
モーリシャスには「ユニークな遺伝子構造を持つ爬虫類(はちゅうるい)の世界的に重要な個体群」があり、座礁事故の脅威にさらされている可能性があると、モーリシャス野生生物基金の保護責任者ビカシュ・タタヤ氏は述べた。
商船三井の小野晃彦副社長は9日、都内で記者会見し、「モーリシャスをはじめ、関係の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」と謝罪。解決に全力を挙げると誓った。
モーリシャスの警察は捜査令状に基づき、わかしおへの立ち入り捜査を行うとしている。捜査に必要な航海日誌などが押収されることになる。同船の船長は捜査に協力するという。