第1回M&A仲介で事業承継、老舗の映像制作会社が8カ月で迎えた倒産危機

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 2006年公開の映画「かもめ食堂」や企業のテレビCMなどを手がけ、老舗の映像制作会社として知られるパラダイス・カフェ。M&A仲介を通じて代表や従業員が持つ株式を譲渡して8カ月後の2月13日午前、経理担当者の携帯が鳴った。

 M&Aの「買い手」として親会社となったANEW Holdings(ANEWHD)の社長が、こう告げてきた。

 「親会社も子会社も破産する。会社の口座に残る資金は、すべて指定口座へ振り込んで」

 経理担当者が対応を迷っていると、翌14日も「早くお金を振り込んで」と促す電話やメッセージが相次いだ。振込先は「弁護士の口座」だと言われたが、なぜ送金する必要があるかは理解できず、社長の言葉を信じることもできなくなっていた。

 2月15日夕のオンライン会議には、パラダイス・カフェ前社長が加わり、株式を取り戻して経営を続けたいと訴えた。そこで破産の申し立てはいったん先送りされた。

 ただ、パラダイス・カフェはこの時点で、4億円超をさまざまな名目でANEWHDに送金させられていた。

 短期間で買収した中小企業から多額を集めたANEWHDは19日に破産を申し立て、22日に手続き開始が決定した。資金を引き抜かれたままの子会社は、瀬戸際に立たされた。

六本木の飲み仲間で立ち上げた老舗

 バブル全盛の1988年、六本木かいわいで飲み歩いた仕事仲間で設立したのが株式会社パラダイス・カフェだ。

 「飲んでばかりいないで何か…

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この記事を書いた人
藤田知也
経済部
専門・関心分野
経済、事件、調査報道など