聞き手・浪間新太
投票日(7日)が近づく東京都知事選は、過去最多の56人が立候補し、候補者を何人も擁立した政治団体が候補者ポスター掲示場の枠を事実上「販売」するなど、選挙活動をめぐって混乱も生じています。なぜこのような事態が起きているのか、諸外国で同様の事例はあるのか――。欧州の選挙制度にも詳しい早稲田大学政治経済学術院の日野愛郎教授(政治学)に聞きました。
――ポスター掲示枠の「販売」や、同じポスターが1カ所の掲示場に多数貼られるなどしています。性的なポスターを掲示して警視庁から警告を受けた候補者も出ました。
ポスター掲示場に、選挙と関係ないであろうものが掲示されたり、当選を目的としていないであろう候補者が活動したりするのは、いわば「選挙の目的外利用」と言えます。
市民の代表や自治体の首長を選ぶための開かれた公正な場であるはずの選挙が別の目的で利用されている現状は、公職選挙法違反に該当しなかったとしても、倫理的に問題があります。
資金力がない人でも選挙で主張を訴えられるよう、日本には公費で補助する「選挙公営制度」があります。供託金を納める必要はありますが、一定の得票率があれば実質自己負担なしで選挙に出られる。誰もが立候補できる開かれた選挙を実現する上で重要な制度です。
私は「選挙ポスター」「全戸配布の選挙公報」「政見放送」――の三つを選挙公営制度の中でも特に重要な「三種の神器」と呼んでいます。これらの制度には多額の公費(税金)が投入されています。
――外国の選挙運動の様子はどうなのでしょう。
私の知る限り、諸外国でこれほ…