駅弁の歴史も味わって マーク制定35年、牛肉弁当に記念の掛け紙

菊地洋行
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 十字は弁当の仕切り経木(きょうぎ)、駅弁の字体は歌舞伎の勘亭流――。「EKIBEN」を国際的な固有名詞にしようと、日本鉄道構内営業中央会(東京)が「駅弁マーク」を制定してから今年で35年。三重県松阪市の老舗駅弁店「新竹商店」が、このマークと自社の歴史をつづった記念の掛け紙をつくった。その紙をかけて販売している弁当は、もちろん松阪だけに「元祖特撰牛肉弁当」だ。

凍結されたキャンペーンのための掛け紙 「もったいない…」

 新竹商店は、県内唯一の駅弁製造販売店として知られる。1895(明治28)年に駅横の売店として創業、松阪駅の発展とともに歩み続けてきた。

 今回新たにつくった記念掛け紙には、昭和初期に駅前で開店した食堂の店構えや、昭和20年代に松阪―尾鷲間で車内販売を担った女性の売り子、昭和40年代に駅構内で弁当の立ち売りをした男性販売員の写真などがちりばめられている。

 弁当の立ち売りをした写真の男性はニューギニア方面からの復員兵だったという。6代目社長の新竹浩子さんは「戦場での苦労話をよく聞かせてくれました」と歴史を語る。

 この掛け紙はもともと、日本鉄道構内営業中央会が企画していたキャンペーン用だった。同会はJRの駅構内などで営業する業者らでつくる。秋の行楽シーズンを迎える10月に、所属会員31社が駅弁マーク35周年を記念した弁当を全国一斉に売り出す予定だった。しかし、9月中旬、青森県内の会員会社が全国のスーパーなどで販売した駅弁で大規模な集団食中毒が発生してしまい、キャンペーンは凍結に追い込まれてしまった。

「駅弁を歴史とともに味わって欲しい」

 「せっかくのいい企画なのにもったいない」。新竹商店は、記念掛け紙の弁当を10月14日の「鉄道記念日」に発売することにした。元祖特撰牛肉弁当は、1959年7月15日の紀勢線全線開通を記念してつくられた。秘伝のたれをからめた網焼き牛肉が主菜のロングセラー駅弁だ。

 11月11日には、松阪駅をスタート・ゴールに城下町の名所を散策するJR東海のイベント「さわやかウォーキング」など松阪市内では、さまざまな催しがある。新竹社長は「地元の食材を使った駅弁を歴史とともに味わって欲しい」と話している。

 元祖特撰牛肉弁当(税込み1700円)は、松阪駅構内の「あら竹売店」、松阪駅前通り商店街の「駅弁のあら竹本店」、国道42号沿いの「ドライブインあら竹」(大紀町滝原)で販売している。記念掛け紙は、無くなり次第終了という。

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この記事を書いた人
菊地洋行
和歌山総局|新宮・熊野地区担当
専門・関心分野
地域の話題、国際情勢