A-stories クマと生きる 悩むアメリカの現場から

 日本だけではない。近年、米国でも市街地に出没するクマに悩まされている。8月末から9月上旬にかけて、アメリカクロクマが急増中という米東海岸北部の州を取材した。クマに悩まされているはずの人々の口から出たのは、むしろ人間の行動に対する不満や怒り。「クマの問題」は「人の問題」だった。

クマが自宅の裏庭に 

拡大する写真・図版クマがすみ着いていた裏庭の木のうろを指さす住人の女性。うろは現在、金網で塞がれている=2024年8月28日、米コネティカット州、伊藤恵里奈撮影

 なんだろう。庭に出てみると、クマと目があった。そして、それは悪夢の始まりだった。

 米国東部にあるコネティカット州ウェスト・ハートフォードは、閑静な住宅街が広がる町だ。2022年10月のよく晴れた秋の日、この町で30年以上暮らす63歳の女性は、いつものように台所から裏庭を眺めていた。

 庭の中央にそびえる高さ約10メートルの木付近で、黒い影が動いた。庭に出てみると、地面から3メートルほどの高さにある木の洞の中から、黒い生き物が顔をだした。クマだった。

 「自分の目を疑った。野生のクマを見たのは初めてだったので。クマと目があって、すぐに家の中に逃げ込んだ」

 匿名を条件に、女性は声を震わせながら体験を振り返り始めた。

 「それから悪夢が始まりました」

住人の女性はすぐに警察や役所に相談しましたが、思わぬ事態に直面します。コネティカット州のクマを巡る現状と課題や、女性宅の件を対応した行政側の言い分も紹介します。

 翌朝になっても、クマは木の中…

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