第7回置き去りにされる男性DV被害者 自助グループで浮かぶ当事者の苦悩
夫からの暴力に苦しむ妻――。配偶者からの暴力(DV)にはそんなイメージがつきまとう裏側で、妻からの暴力に苦しむ男性もいる。
警察庁のまとめによれば、男性からの相談件数は昨年、全体の3割近くを占める。しかし、男性被害者を想定した公的な支援体制は整っていない。
全国的にもまれな、男性のDV被害者に特化した自助グループを取材すると、支援のはざまに陥る当事者たちの窮状が浮かび上がった。
10月中旬、徳島市の会場に集まったのは、20代~50代の10人近い男性たちだ。
徳島を拠点とする一般社団法人「白鳥の森」が、7月、男性のDV被害者に特化した自助グループを立ち上げた。この日は2回目となるグループのミーティング。同法人の山口凜理事に促され、順番に、パートナーから自身が受けたDV被害の体験を口にしていく。
包丁やハサミを投げつけられた、日常的に暴言を浴びせられ続けたといった、身体的、精神的な暴力。加えて、「給料や通帳を取り上げられ、自分で現金を下ろすことも許されなかった」「スマホに登録していた連絡先の大半が勝手に消されていた」……。これまで受けた様々な被害が語られた。
DV被害を受けていることを友人に打ち明けたが、ただの夫婦げんかだと思われた。義理の両親に相談しても、「男の方が我慢すればよい」と言われた――。そんな「被害を訴えても、周囲に分かってもらえなかった」という経験には、多くの参加者がうなずいた。公的機関に相談しても、「妻が殴ったと言ってるんだから認めろよ」と言われ、むしろ加害者として扱われた経験を持つ人もいた。
2時間以上に及んだミーティングの終わり、参加者の一人が思いを吐露した。
「今まで自分の本心を言えることがなかった。私の言葉を全て受け入れてくれるこの場はありがたい」
同法人で代表理事を務める野口登志子さんは「女性が被害者で、男性は加害者。そうした固定観念にずっととらわれ、社会が男性の被害者を置き去りにしてきた」と指摘する。
DV防止法が2001年に制定され、この4月には改正法が施行された。裁判所からの保護命令の対象に「精神的な暴力」が加えられるなど、被害者支援に向けた法整備は進んでいるようにみえる。
DVに苦しむ女性への支援の必要性が徐々に共有されてはきたが、男性が利用できる避難所は限られ、相談窓口の対象を女性のみにしているところも少なくないのが現状だ。相談員の間で、男性被害者をどう支援するかというノウハウも蓄積されず、「男性被害者の支援は、DV防止法ができた20年以上前の状況のまま、進んでいない」(山口さん)。
相談しにくい理由 男性被害者の答えは…
DV被害者の大半が女性とい…
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