クリックミスか? 囲碁の世界戦決勝でありえない一手
大出公二
囲碁世界一を決めるメジャー棋戦「2020三星火災杯」の2日の決勝戦で、韓国の棋士が序盤に全く自分の利益にならない、碁盤の「第一線」に着手するハプニングが起きた。コロナ禍のためインターネットを介した対局で、マウスのクリックミスをしてしまったとみられる。
日中韓台のトップ棋士32人で争われた同棋戦決勝は、中国の柯潔(かけつ)九段(23)と韓国の申真諝(しん・じんそ)九段(20)の三番勝負となり、先に2勝したほうが優勝する。この日は第1局が打たれ、黒番の申九段が序盤の21手目で「第一線」に打った。
囲碁は自分の碁石で囲った陣地の広さを競うゲームなのに、盤端の「第一線」は獲得陣地が全くない「ゼロ目(もく)」の手。プロではあり得ない手を打ってしまった。
対局の模様は韓国のユーチューブでライブ中継されていた。盤面を映すパソコンを見つつ熟考していた申九段が右手を動かした瞬間、画面の盤上の第一線に自分の黒石が現れた。瞬間、申九段は驚いた表情で画面に見入った。その後、救いを求めるように周囲を見渡したが、クリックミスは本人の責任であり、着手し直すことはできないと規定されている。申九段はその後も打ち続けたが、この手が致命傷となり、120手までで柯九段に敗れた。