【7月20日 AFP】独スポーツ用品大手アディダス(Adidas)は19日、親パレスチナ派の米国人のスーパーモデル、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)さんを1972年のミュンヘン五輪にちなんだレトロなスニーカーの広告から外したことを明らかにした。

 ミュンヘン五輪では、パレスチナの過激派組織「黒い九月(Black September)」が選手村のイスラエル選手団宿舎を襲撃し、選手ら11人を殺害。警察官1人も死亡した。

 アディダスは、クラシックモデルの復刻シリーズの一つとして、1972年のミュンヘン五輪で初めて使用されたシューズ「SL72」を販売を開始したばかり。ハディッドさんを起用していた広告では、このスニーカーが1972年に発売されたと紹介されているが、イスラエル選手団襲撃事件については全く触れられていない。

 ハディッドさんは米国生まれだが、父親はパレスチナ人。昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)による越境攻撃を受けてイスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)への攻撃を開始して以降、パレスチナの権利を支持すると声高に訴えてきた。

 アディダスは、ハディッドさんを起用していた広告を直ちに見直すと発表。「過去の悲劇的な出来事との関連性は認識しているが、全く意図していないものだ。不快な思いをさせ、苦痛を与えた方々に謝罪する」と表明した。

 同社の広報は、ハディッドさんが広告から外されたことを認めた。

 在独イスラエル大使館は18日、X(旧ツイッター)に、「広告の顔は誰だと思う? ベラ・ハディッドだ。彼女はパレスチナにルーツを持つモデルで、これまで反ユダヤ主義を広め、イスラエル人やユダヤ人に対する暴力を扇動してきた」と投稿した。

 イスラエルのロン・プロソル(Ron Prosor)駐独大使も19日、ドイツメディアに対し、「アディダスは、よくもいまさら『全く意図していない』と主張できるものだ」と非難。「1972年の(ミュンヘン五輪での)テロは、ドイツ人とイスラエル人の集団的記憶に刻まれている」と主張した。

 一方でSNSには、ハディッドさんへの支持を表明する声や、アディダスがハディッドさんを広告から外したことへの批判、アディダス製品の不買運動を呼び掛ける投稿も殺到している。(c)AFP/Femke COLBORNE