「切り裂きジャック」被害者の子孫が再捜査要求 英
このニュースをシェア
【1月14日 AFP】歴史に悪名をとどろかせている英国の連続殺人犯「切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)」による事件をめぐり、DNA鑑定によって正体はポーランド人理髪師だった可能性が示唆されたことを受け、被害者の一人の子孫が再捜査を要求した。
1888年にロンドン東部ホワイトチャペル地区のスラム街を恐怖に陥れた「切り裂きジャック」の正体をめぐっては、王族から首相、靴職人まで数十の説が挙げられているが、今も謎のままとなっている。
切り裂きジャック事件について調査を続けているラッセル・エドワーズ氏は2014年、殺人現場の一つから回収されたショールからDNAを抽出した結果、切り裂きジャックの正体は理髪師として働いていたアーロン・コスミンスキーというポーランド移民だと主張した。
このショールは、1888年9月30日に切り裂きジャックの4人目の犠牲者となったキャサリン・エドウズさんの殺害現場で押収されたものとされる。
エドワーズ氏の要請を受け、リバプール・ジョン・ムーア大学のヤリ・ロウヘライネン博士は、ショールの血痕から七つの小さなDNA断片を抽出した。それらはエドウズさんの直系の子孫、カレン・ミラーさんのDNAと一致。血痕はエドウズさんのものであることが確認された。
一方、ショールに付着した精液のDNAは、コスミンスキー容疑者の子孫のものと一致した。
エドワーズ氏は、DNA証拠を根拠として未解決の切り裂きジャック事件の再捜査を要求した。
ミラーさんは12日に公開された英大衆紙デーリー・メールのインタビューで、再捜査の要求を支持。
「切り裂きジャックの名はセンセーショナルに取り上げられ、歴史上有名な人物となった」「(だが)人々は当時正義がもたらされなかった犠牲者のことを忘れてしまった。今こそ再捜査を通じて、この殺人犯の名前を法的に明らかにする必要がある」と訴えた。
一方、エドワーズ氏の調査結果に疑問を投げ掛ける人もいる。
この調査結果は査読付きの科学誌に発表されていないため、主張に対する独立した検証が行われておらず、また手法も精査されていない。
法律上、再捜査を承認するのは法務長官だ。
2年前、当時のマイケル・エリス法務長官は、新証拠が十分ではないとして再捜査の要求を拒否した。
ミラーさんは12日に改めて、再び捜査を行う時が来たと主張した。
コスミンスキー容疑者は1865年9月11日、ポーランド中部クウォダバで生まれた。1880年代初めに帝政ロシアによるユダヤ人迫害運動「ポグロム」を逃れ、家族でロンドン東部に移住した。自宅は切り裂きジャック事件の現場のすぐ近くにあった。被害者の一人と一緒にいたとの目撃証言を受けて、警察に連行されたとの報道もある。
目撃者は見かけた人物がコスミンスキー容疑者であることを認めたが、有罪につながる証言を拒んだため、警察は容疑者を釈放するしかなかった。
コスミンスキー容疑者は1889年に「極貧」と判断され救貧院に入所。同年中に退所したが、間もなく精神病院に収容され、1919年3月24日に壊疽(えそ)のため死亡。3日後にロンドン東部のイースト・ハム墓地に埋葬された。(c)AFP