上巻・下巻共通の感想。
さまざまなハードウエアについて、詳細な記述が光り、圧倒的迫力を醸し出している。
そして、原子力に携わる人間が内部からテロリストに育っていく過程も説得力がある。
その点で『天空の蜂』同様に、内部で育つテロリストを防御する手段はない、という一種のシミュレーションになっている。
社会科学・技術両面をカバーしつつ、人間の内面も描き切った質の高い文学だと思う。
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神の火(上) (新潮文庫) 文庫 – 1995/3/29
高村 薫
(著)
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原発技術者だったかつて、極秘情報をソヴィエトに流していた島田。謀略の日々に訣別し、全てを捨て平穏な日々を選んだ彼は、己れをスパイに仕立てた男と再会した時から、幼馴染みの日野と共に、謎に包まれた原発襲撃プラン〈トロイ計画〉を巡る、苛烈な諜報戦に巻き込まれることになった……。国際政治の激流に翻弄される男達の熱いドラマ。全面改稿、加筆400枚による文庫化!
- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1995/3/29
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101347123
- ISBN-13978-4101347127
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【新潮文庫】高村薫 作品 | 大阪の街に生きる男達が企んだ、大胆不敵な金塊強奪計画。銀行本店の鉄壁の防御システムは突破可能か?絶賛を浴びたデビュー作。〈日本推理サスペンス大賞受賞〉 | 苛烈極まる諜報戦が沸点に達した時、破天荒な原発襲撃計画が動きだした──スパイ小説と危機小説の見事な融合!衝撃の新版。 | 元IRAの青年はなぜ東京で殺されたのか?白髪 の東洋人スパイ《リヴィエラ》とは何者か?日本が生んだ国際諜報小説の最高傑作。〈日本推理作家協会賞・日本冒険小説協会大賞受賞〉 | 運命の女と溶鉱炉のごとき炎熱が、合田と旧友を同時に狂わせてゆく。照柿、それは断末魔の悲鳴の色。人間の原罪を抉る衝撃の長篇。 |
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巨大ビール会社を標的とした空前絶後の犯罪計画。合田雄一郎警部補の眼前に広がる、深い霧。伝説の長篇、改訂を経て文庫化!〈毎日出版文化賞受賞〉 | マークス──。運命の名を得た男が開いた扉の先に、血塗られた道が続いていた。合田雄一郎警部補の眼前に立ち塞がる、黒一色の山。〈直木賞受賞〉 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1995/3/29)
- 発売日 : 1995/3/29
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 400ページ
- ISBN-10 : 4101347123
- ISBN-13 : 978-4101347127
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 339,210位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1953(昭和28)年、大阪市生れ。
1990(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。2010年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する。他の著作に『神の火』『照柿』『晴子情歌』などがある。
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- 2013年10月18日に日本でレビュー済みAmazonで購入古本であり程度は’良’とありましたが、若干汚れもほとんどなく、問題ありません。
- 2016年1月19日に日本でレビュー済みAmazonで購入相変わらず硬質かつ重量級の文書で、読み進めるのに体力
が必要です。
全編を支配する重苦しい世界観は、表面上平和な現代日本
とは一線を画す、独特の雰囲気を醸し出しています。
然しながら、元ソ連のスパイという主人公の立ち位置、やや強引
ともいえる終盤の原発侵入における動機など、作者の肩に力が
入っている分、上滑りの印象を感じました。
- 2022年6月17日に日本でレビュー済みこの作品の世界がとても好きで、音海の断崖へ何度も行っている。
音海に行くと、なぜ舞台が此処でなければならなかったのかが何となく分かる。
ついでに大阪、京都へも足を伸ばすのだがビルや小路、商店街の幾つかは小説の頃とは少しずつ変わっていってしまっている。あれからだいぶ経つからな。高村薫の愛するごった煮の雑然さがだんだんと失われていくのかな。
一方断崖や遊歩道や小さい港はそう変わらない風景のままだ。取り残されたように佇んでいる(いた)。
コロナ明けにはまた舞鶴を訪れたい。のんびり日本海フェリーで海から行こうか。
- 2009年1月22日に日本でレビュー済みスパイものとは縁遠い(かな?)、淡々と、ダラダラと、した日常の描写に引き込まれた作品。
その割に、所々でキーパーソンの急死、など、急展開があったり、なかなか気が抜けない。
中〜後編の情報戦は、かの映画「スパイ・ゲーム」を彷彿とさせて、大変読み応えがある。
アクションシーンもあり、見どころ満載の小説。
分量が多くて、自分は少々中弛みしてしまったが、
クライマックスは多分読者の期待を裏切らないだろう。
美しく、切ない。コレは読破してからのお楽しみ。クフフフ・・・
スローモーな展開でダレるかもしれないから、星4つの方がよかったかも。(お買い得度80%)
- 2004年10月14日に日本でレビュー済み主人公の島田は島田海運の御曹司。最先端の原子力発電の研究者でもあった。
原子力研究所を辞めた島田は、小さな科学関係専門図書輸入販売会社に勤めている。
島田の出生は重い枷のように圧し掛かり、埋め難い心の空洞を生み出した。
島田が原研を辞めた理由。空洞に吹く風が、上巻を駆け抜けていく。
神の火とは… 人間が手を出してはいけない業火であろうか。人間を浄化する火であろうか。
建設中の原子力発電施設を軸に、原発の絶対神話の土台の危うさが明らかになって行く。
そして、戦後日本の危うさも明らかになっていく。
心の空洞を埋めるのは希望かもしれない。
島田にとっては、些細な行動すら必然である。選択した行動である。
島田の緑の目は何を見て、何を考え、どう行動するのか。
高村氏の研ぎ澄まされた感覚と、莫大な資料を要したであろう傑作である。
- 2009年8月11日に日本でレビュー済みAmazonで購入「黄金を抱いて翔べ」から「レディ・ジョーカー」に至る道筋が見える濃厚な作品です。高村作品の特徴と方向性がこの作品で大きく打ち出され、1つは「マークス」のほうへ、もう1つがこの「神の火」を経て「レディ・ジョーカー」に流れていくのだと僕は読みました。ポイントを箇条書きします。
1)ミステリーやトリックを期待して読むと期待外れに終わる。
2)マテリアルに対するこだわり、質感がそこかしこで立ちのぼってくる。
3)風景のひとつひとつが登場人物の内面を投影している。
4)高村さんの表現を借りれば、過去を背負った人間同士が「隠微な」もつれあいを見せる。
5)叙述が3)の通り登場人物の内面ときれいにわかれていないので、科学小説としてはすうっと入ってためになるかといわれると微妙です。
おもしろいというより濃厚さを味わう作品だと思います。お勧めかといわれるとお勧めですが読む人を選ぶと思うので1点引きました。高村作品を論じるなら通っておかなければならない作品であるのは確かです。
とはいいながら、これだけ書ける人は他にはなかなかいないという1点に賭けて、やはりお勧めです。また、節々に高村さんならではのずっしりこたえるウィットやフレーズが出てきます。
- 2013年11月3日に日本でレビュー済みAmazonで購入評価はイマイチ、
今の時代ならこれより良い本も沢山有る筈です。