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独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書) 新書 – 2019/7/20
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「新書大賞2020」大賞受賞!
■著者からのメッセージ
第二次世界大戦の帰趨を決したのは独ソ戦であるが、その規模の巨大さと筆紙につくしがたい惨禍ゆえに、日本人にはなかなか実感しにくい。たとえば一九四二年のドイツ軍夏季攻勢は、日本地図にあてはめれば、日本海の沖合から関東平野に至る空間に相当する広大な地域で実行された。また、独ソ戦全体での死者は、民間人も含めて数千万におよぶ。しかも、この数字には、戦死者のみならず、飢餓や虐待、ジェノサイドによって死に至った者のそれも含まれているのだ。そうした惨戦は、必ずしも狂気や不合理によって生じたものではない。人種差別、社会統合のためのフィクションであったはずのイデオロギーの暴走、占領地からの収奪に訴えてでも、より良い生活を維持したいという民衆の欲求……。さまざまな要因が複合し、史上空前の惨憺たる戦争を引き起こした。本書は、軍事的な展開の叙述に主眼を置きつつ、イデオロギー、経済、社会、ホロコーストとの関連からの説明にも多くのページを割いた。これが、独ソ戦という負の歴史を繰り返さぬための教訓を得る一助となれば、著者にとってはまたとない歓びである。
■呉座勇一氏推薦
冷戦期のプロパガンダによって歪められた独ソ戦像がいまだに日本では根強く残っている。本書は明快な軍事史的叙述を軸に、独ソ両国の政治・外交・経済・世界観など多様な面からその虚像を打ち払う。露わになった実像はより凄惨なものだが、人類史上最悪の戦争に正面から向き合うことが21世紀の平和を築く礎となるだろう。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2019/7/20
- 寸法10.7 x 1.1 x 17.3 cm
- ISBN-104004317851
- ISBN-13978-4004317852
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商品の説明
著者について
1961年生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学(専門はドイツ現代史、国際政治史)。千葉大学ほかの非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、陸上自衛隊幹部学校講師などを経て、現在、著述業。
著書─『「砂漠の狐」ロンメル』(角川新書、2019)、『ドイツ軍事史』(作品社、2016)ほか
訳書─エヴァンズ『第三帝国の歴史』(監修。白水社、2018─)、ネーリング『ドイツ装甲部隊史 1916-1945』(作品社、2018)、フリーザー『「電撃戦」という幻』(共訳。中央公論新社、2003)ほか
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2019/7/20)
- 発売日 : 2019/7/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 248ページ
- ISBN-10 : 4004317851
- ISBN-13 : 978-4004317852
- 寸法 : 10.7 x 1.1 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 15,287位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
お客様のご意見
お客様はこの新書について、有意義な新書だと評価しています。レベルの高い内容を、著者のものすごい語彙力で平易に説明し、詳細に生々しく伝えていると高く評価しています。また、内容も時系列のわかりやすさがピカイチで、スラスラ読めると好評です。見やすい地図や図表、巻末の参考文献、略語説明、年表付きなど、丁寧な作りと戦争本にありがちな過度に執筆されていないことを指摘しています。
お客様の投稿に基づきAIで生成されたものです。カスタマーレビューは、お客様自身による感想や意見であり、Amazon.co.jpの見解を示すものではありません。
お客様はこの新書について、有意義な新書だと評価しています。レベルの高い内容で、独ソ戦のわかりやすい評価本として高く評価されています。歴史的激突と歴史の関係を考えさせられる刺激的な本であり、独ソ戦のわかりやすい評価本として好評です。また、巻末の参考文献や略語説明、年表付きなど、見やすい地図・図表、巻末の参考文献が充実しており、日本人に馴染みのない独ソ戦を知る絶好の入門書だと感じています。
"...最高度に「地獄」的な戦争でした。 それが読了していちばんの感想であり 本書の核心と申し上げてよいかと思います。 著者は新史料(あとで述べます)に基づき 軍事的な「経緯」のみならず 独ソ戦の「性格」を正確に論じています。..." もっと読む
"スラスラ読める。内容も時系列のわかりやすさもピカイチ。本当に読みやすく理解しやすい。 土曜日の朝読み始めて夕飯前には読み終わった。本当に素晴らしい。抽象的な表現は少なく客観的事実が詳しく述べられており、独ソ戦の全体像把握を目指すならば間違いなくこの著作から入るべきである。..." もっと読む
"...ソ連軍の損害も酷いもの。未だに消えない大変な傷跡を遺した。軍事的激突と歴史の関係を考えさせられる。刺激的な本であった。" もっと読む
"著名な新書だけあって、一気に読み終わり、今のウクライナ問題の理解にも繋がりました。 の" もっと読む
お客様はこの本について、分かりやすさを高く評価しています。内容が分りやすく面白く、時系列のわかりやすさもピカイチだと感じています。また、作戦の図が沢山掲載されており、略称や軍事用語についても詳しく説明されています。独ソ戦の詳細な描写や戦争の性格についての考察が特に好評です。
"...次に読むべき本の指針となりますし 「略称、および軍事用語について」 「独ソ戦関連年表」は よくまとまっていて使いやすいです。" もっと読む
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"戦争のあまりの絶滅戦的様相から、これまで具体的なところに入るのが難しかった。今のウクライナ情勢もあり、手にとって見たら非常に分かりやすかった。ヒットラーとドイツ軍部の関係、スターリンの戦争指導の破綻、それでもロシアを攻め落とすことは困難であり、甘くみたドイツ軍は反撃され大敗した。..." もっと読む
"...だが結果としては、掘り下げ不足の解説に終わった感じだ。確かに、一般向きの類書がないのは事実だが、歴史好きの読者にとっては、常識の改訂・補足の域を出ていないと思う。..." もっと読む
お客様はこの新書について、全体を通して読みやすく、面白く読めたと評価しています。著者のものすごい語彙力や詳細な戦況を生々しく伝えており、戦争本にありがちな過度に記述しない点も好評です。見やすい地図・図表や巻末の参考文献、略語説明、年表付きなど、一般向けの新書として白眉だと評価しています。また、軍事的な「経緯」だけでなく、独ソ戦の性格についても正確に論じている点が評価されています。
"...著者は新史料(あとで述べます)に基づき 軍事的な「経緯」のみならず 独ソ戦の「性格」を正確に論じています。 一般向けの新書として白眉と思います。 上記の著者の結論は 「終章」において詳述されます。 戦争をその性格上..." もっと読む
"スラスラ読める。内容も時系列のわかりやすさもピカイチ。本当に読みやすく理解しやすい。 土曜日の朝読み始めて夕飯前には読み終わった。本当に素晴らしい。抽象的な表現は少なく客観的事実が詳しく述べられており、独ソ戦の全体像把握を目指すならば間違いなくこの著作から入るべきである。..." もっと読む
"...しかし、本書は具体的な数値は最小限 なので読みやすいです。 割合で言うと最初から80%くらいまでが独ソ戦の側面と戦争の流れ、最後にまとめとなっています。..." もっと読む
"読みやすいながらも詳細に調べた結果が述べられている おすすめする。" もっと読む
イメージ付きのレビュー
ソ連軍の有機的で連続的な作戦が見事
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
- 2019年7月25日に日本でレビュー済みAmazonで購入この世において
「地獄」でない戦争は
存在しないのかもしれませんが
「独ソ戦」(1941-1945)は
軍事的な合理性をすら失い
「世界観戦争」(絶滅戦争)にまで
変質して行ったという点において
最高度に「地獄」的な戦争でした。
それが読了していちばんの感想であり
本書の核心と申し上げてよいかと思います。
著者は新史料(あとで述べます)に基づき
軍事的な「経緯」のみならず
独ソ戦の「性格」を正確に論じています。
一般向けの新書として白眉と思います。
上記の著者の結論は
「終章」において詳述されます。
戦争をその性格上
①通常戦争
②収奪戦争
③世界観戦争(絶滅戦争)
の3つに分類し
独ソ戦の時間的な各段階において
①、②、③がどのような
相互関係にあったのかを
「模式図」で示したものが
掲載されています(p.221)。
数学の集合論や論理学で多用される
「ヴェン図」(ベン図)を
イメージしていただけると幸いです。
要するに3つのマル(円)の相互関係です。
ちなみにジョン・ヴェン(1834-1923)は
英国の数学者・哲学者で
いわゆる「ヴェン図」を導入しました。
独ソ戦は
①通常戦争、②収奪戦争、③世界観戦争
(絶滅戦争)の3つが並行して始まり
最終的には①と②が③に完全に包含されて
しまったことが模式図から読み取れます。
そして「通常戦争」が「絶対戦争」に
変質して行っていたことが示されています。
個人的には父祖から耳で聴いた
戦争の地獄と言えばたとえば
・ノモンハン事変(1939)
・ガダルカナル島撤退(1943)
・インパール作戦(1944)
・レイテ戦(1944ー45)
・硫黄島の戦い(1945)
‥などを連想します。このように
旧日本軍の「地獄」は
例えば、敵の圧倒的火力の前に
無力感から精神的失調をきたしたり
あるいは、兵站(補給)の不足・欠損による
飢餓や餓死のイメージが強いのが
特徴と言えるかもしれません。
これらに対して独ソ戦は
ヒトラー(1989-1945)に代表される
「劣等人種」(ウンターメンシュ)を絶滅し
「東方」にドイツ民族(アーリア人)の
「生存圏」(レーベンスラウム)を獲得する
‥というナチス・ドイツ側の世界観と
スターリン(1878-1953)に代表される
「不可侵条約」を一方的に破棄した
「ファシスト」の侵略を
ソ連邦の諸国民が撃退して
「共産主義」イデオロギーの優越を示した
‥というソ連側の世界観の激突でした。
この「世界観の激突」を通奏低音として
本書は書かれていると思います。
独ソ戦の「性格」の話が長くなりましたが
軍事的な経緯やディーテイルについても
本書は「実証的に」詳述されています。
「実証的に」と強調しましたのは
これまで独ソ戦について記述された
一般向けの本の中には
誤った史料に基づいて書かれたものが
少なくなかったからです。
さらに
1989年に東欧諸国が解体し
1991年にソ連が崩壊してから
多くの新史料が見つかりましたが
それらが記述に反映されることなく
標語的に申し上げれば
「1970年代の水準で止まっている」
記述が(特に日本における)
一般向けの本では多かったことは
否定できないようです。
本書によりますと例えば
独ソ戦に直接の関係はありませんが
ヘルマン・ラウシュニングの
『永遠のヒトラー』(天声出版 1968)は
ヒトラー語録・ヒトラーとの対話
というふれこみでしたが現在では
偽書(つまり捏造)であることが
判明しています。
あるいはまた
フランス人を連想させるペンネーム
「パウル・カレル」
で多くの戦記物を書いたドイツ人
パウル・カール・シュミット
(1911-1997)につきましては
2005年
ドイツの歴史家ヴィクベルト・ベンツが
パウル・カレルの伝記を上梓し
体系的な批判を行いました。
カレルの基本的な主張は
「第二次世界大戦の惨禍に対して
ドイツが負うべき責任はなく
国防軍は劣勢にもかかわらず
勇敢かつ巧妙に戦った」(はじめに ⅷ)
でした。つまり現在の視点からみると
明らかにまちがっていたので
「歴史修正主義」(同)
です。その結果
2019年現在、母国ドイツにおいて
パウル・カレルの著作は
「すべて絶版とされている」(はじめに ⅹ)
と著者は指摘しています。
カレルの捏造(実際には存在しなかった
事象を記述すること)について
具体的な記述が「はじめに ⅸ」にあります。
新約聖書「使徒行伝」第9章18節
の表現を借りるならば
「目からうろこのようなものが落ち」る
思いを読了後にしましたのは
上記のラウシュニングやカレルに対する
現在の世界標準の評価だけではありません。
いくつか順不同で挙げてみましょう。
・ドイツ国防軍は
ナチスによる犯罪・戦争犯罪
(SSによるジェノサイドなど)
に関連して決して
無謬(むびゅう)ではなかった。
・そもそも独ソ戦は
ヒトラーの「世界観」によって
のみ起こされたのではなく
ドイツ国防軍も軍事的な観点から
「対ソ戦やむなし」と考えていた。
・ドイツ陸軍総司令部(OKH)が
立案した対ソ作戦は
1)敵を過小評価し
2)我が方の兵站能力を無視した
ずさんな計画だった。
・ドイツを含む中央ヨーロッパの
鉄道が標準軌であるのに対し
ロシアの鉄道は広軌であるから
ドイツ軍にとっては線路の
レールの幅を変える工事をしないと
鉄道による輸送はままならなかった。
(ナポレオンの侵攻を教訓に
二度と侵略されないように
ロシアはわざと鉄道の軌道の幅を
ヨーロッパと違うものにした
とする説を聞いたことがあります)
・「電撃戦」(ブリッツクリーク)
というコトバはそもそも
宣伝・啓蒙当局あるいは
ジャーナリズムが使い始めたもので
軍事用語ではなかった。
・「ドクトリン」という
軍事用語があり重要な概念である。
・史上最大の戦車戦と言えば
「クルスク会戦」(1943)
(の中の「プロホロフカ」の戦い)
という定説があったが
ソ連崩壊・冷戦終結後の新史料による
研究が進んだ結果
独ソ戦の初期において既に
大規模な戦車戦が展開されていた
ことが明らかにされた。
参加した戦車数が
クルスク(プロホロフカ)を上回る
戦車戦があったことが判明している。
ひとつの例は「センノの戦い」である。
‥上記のように私にとりまして
「目からうろこのようなもの」を
挙げて行くときりがないくらいです。
振り返ってみれば
・1989年11月 ベルリンの壁崩壊
それと並行あるいは続発する
東欧諸国の解体
・1989年12月 マルタ会談
(冷戦終結を明記)
・1990年10月 ドイツ統一
・1991年12月 ソ連邦崩壊
という歴史的事象を私は
リアルタイムで見聞きしていましたが
その結果
多くの新史料が公開され
独ソ戦を含む第二次世界大戦に関する
研究が飛躍的かつ画期的に進んだ
という事実を今、実感しています。
ヒトラーの伝記(あるいは第三帝国史)
ひとつとっても
ソ連崩壊以前に
アラン・バロック(1914-2004)
ウィリアム・シャイラ―(1904-1993)
ヴェルナー・マーザー(1922-2007)
ヨアフェム・フェスト(1926-2006)
ジョン・トーランド(1912-2004)
‥などの著者たちによる
特色ある書物が出版されていました。
それらに加え
ソ連崩壊後の新史料を踏まえた
イアン・カーショー氏(1943-)の大著
『ヒトラー(上):1889-1936 傲慢』
(白水社 2016)(原著 1998)
『ヒトラー(下):1936 -1945 天罰』
(白水社 2016)(原著 2000)
が出版されいわばヒトラー伝の
「決定版」となった観があります。
上下二段組で本文に限定しても
(上)が 611ページ
(下)が 870ページあります
(重さはどちらも軽く1キロを超えます)。
とりあえず一度目を通しましたが
なにしろ大著ゆえに細部まで
読みこなすのは時間が必要です。
独ソ戦についても的確な記述が
多々あります(特に下巻)。
カーショーの大著に比べると
逆に一冊の「新書」という
限定された舞台で独ソ戦を記述する
という行為は別種の困難さが伴なう
であろうことは容易に分かります。
材料を取捨選択し
文章の論理的構造を組み立て
かつ読者が(研究者ではなく)
(私を含む)一般人を対象とするという
配慮をする必要があります。
従って本書は
一冊の新書で独ソ戦をコンパクトに
しかも本質的に記述した労作
ということができると思います。
付録の「文献解題」は
次に読むべき本の指針となりますし
「略称、および軍事用語について」
「独ソ戦関連年表」は
よくまとまっていて使いやすいです。
- 2024年12月2日に日本でレビュー済みAmazonで購入新書で第二次世界大戦の主戦場である独ソ戦を記載すると、開戦の理由となるイデオロギーの解説や、戦争全体の大まかな流れの説明になるのは仕方ないかと思う。
- 2023年7月31日に日本でレビュー済みAmazonで購入スラスラ読める。内容も時系列のわかりやすさもピカイチ。本当に読みやすく理解しやすい。
土曜日の朝読み始めて夕飯前には読み終わった。本当に素晴らしい。抽象的な表現は少なく客観的事実が詳しく述べられており、独ソ戦の全体像把握を目指すならば間違いなくこの著作から入るべきである。
ミリタリーファンも一般読者も入門書として絶対に読むべき。
- 2023年7月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入この書は2020年、「新書大賞」取っただけの価値ある書である。我々は第二次世界大戦と一括して語っているが、著者は実はナチス・ドイツの本当の狙いは「当時のソ連の西側部分、つまり、今のウクライナの国境からモスクワを含む北に北極海まで上がった広大な領土を支配下に置くことであったと書く。日本が中国を支配下にしようとしたように。
まずは、ヨーロッパの各国を蹂躙し、足場を築き、ゲルマン民族の大国とそれを賄う土地と資源を獲得し、ゲルマン人以外はソ連のその支配予定の地の外、つまり、シベリアに追い出すという「通常戦争」ではなく「殲滅戦争」「世界観戦争(ヒトラーは社会・共産主義を人種と同じように殲滅すべき対象と見ている)」であると、分析し、その戦争の本当の意味を明らかに描く。
それは、ソ連崩壊後、多くに現資料・一次資料が表に大量に出てきて、それらを綿密に研究することができるようになり、今まで知られていない多くの戦略・計画や戦争資料を読み解いていく中から「浮かび上がってきた真の姿」を新書と言う中で、入門者に解るように書かれているが、その内容は驚きと「そうなのか」と思える充実した内容になっている。
ロシア(ソ連)は、ナポレオンにより、第一次世界大戦のドイツにより、そして、第二次世界大戦により、いずれもモスクワ近くまで侵略されたり、領土を奪われたりしている。そして、ソ連の崩壊である。
それらの歴史的体験とウクライナ戦争を頭に浮かべながら読むと、いかなるように世界が動き、何によって対立から戦争へ進んでいくのかが、歴史的動的国や民族の「生き残り」をかけて起こっていることが、おぼろげながら浮かび上がってくる。その根底にあるのは「恐怖」であり「生き残り」と言う根源的な存在にかかわる事柄であるように思われる。
- 2023年8月14日に日本でレビュー済みAmazonで購入ナチスドイツとスターリンのソ連。二大独裁者がイデオロギー上の生存を懸けて起こした独ソ戦。
それは人類史上未曾有の犠牲者を出す凄惨な戦いとなるのだった。
所謂、ナチスドイツのソ連侵攻「バルバロッサ作戦」は、開始前からスパイなどによりスターリンの下へ警鐘として報告されていたのだが、スターリンはそれを英国の謀略と断じて無視した。その為、防御体制が殆ど整わないまま攻め込まれたソ連軍は敗北を重ねて多くの死傷者・捕虜を出して後退した。
ナチスドイツ側はスターリン体制など脆弱で、攻め込めばたちまち崩壊するだろうなどとヒトラーから配下の将軍に至まで過小評価していた。要は舐め切っていたのである。
緒戦の大勝利でそれは確信的なものに変わるが、前線の将軍たちは「逃げずに徹底抗戦するソ連兵たち」に思わぬ損害を受けており、大勝利の裏で人的・物的な損害は30%以上は出ていて、今後の不安を暗示していた。
その後は首都である「モスクワ攻略」を主張する将軍たちと、南の油田を確保したいヒトラーとの間で意見が分かれて、結局はヒトラーの意見が優先されて軍が分断されてしまう。
しかし、補給戦が当初から安定せず、鉄道から軍が離れ過ぎて物資を受け取れない事態が多発。さらには戦争の開始でドイツの勢力圏内で食料などの物資を維持することが困難になり、ソ連領内の現地人から略奪することで何とか軍を維持する有様だった。
しかも、ナチスの人種的なイデオロギーではユダヤ人種は言うに及ばず、ソ連に住んでいるスラブ系の人種も「下等人種」として奴隷化・殲滅させなければいけないという位置づけだった。だから、占領後には前線で戦っている国防軍の後ろで特殊部隊が住民を追い詰めて殺害するという作戦を実行。これではいかにスターリン体制が良いものではないと住民が感じていても、ナチスドイツへの傾倒など有り得なかった。
ドイツもソ連もお互いをイデオロギー上の対抗関係としており、そこには生き残るかさもなくば滅亡か、という二者択一の考えしかなかった。だから、戦線がどれ程形勢不利になろうともヒトラーにはソ連と講和しようなどという考えは無く、徹底抗戦あるのみという姿勢しか取れなかった。
将軍たちがどんなに戦略的・戦術的な観点から撤退を求めても、ヒトラーは頑なにそれを認めようとしなかった。つまり、ヒトラーと将軍たちとでは「戦争をしている意味合い」が異なっており、その不一致が指揮系統の混乱に繋がり、ドイツ軍の進撃の大きな足枷になったのだ。
ドイツには戦術の天才とも言うべき「マインシュタイン」がおり、彼は形勢不利なドイツ軍を指揮して幾度もソ連軍に打撃を与えたのだが、ヒトラーと意見違いを重ねた末に解任された。
よく喧伝される「冬将軍」の到来による準備不足も確かに影響した面は大きかったが、それ以上に物資の欠乏が当初から顕著であり、そこに作戦目的の相違による指揮系統の混乱が追い討ちをかけたというのが事実のようだ。
ナチスは戦時中であっても国民に耐乏を強いるような政策はギリギリまで取らず、物資は本国の国民に優先して回された。勿論、その物資の出所はナチスの占領国やソ連の戦勝地域からによるものである。
つまり、他民族の犠牲の上にドイツ国民の生活が成り立っており、ドイツ国民も紛れも無い「共犯者」であったとこの本では結論付けている。
- 2023年2月3日に日本でレビュー済みAmazonで購入・開戦にいたるまでの流れ
・独ソ戦がふつうの戦争とはちがう絶滅戦争であること
・多すぎない地図配置
本書は独ソ戦に興味があるけど、解説本に手を出すとミクロ過ぎて先に読んだ内容が頭の中で霧散してしまうライトな読書メンに最適です。
具体的には、ガルパン経由で独ソ戦車に興味を持って
「同志少女よ、敵を撃て」やオーディオブックで「戦争は女の顔をしていない」などメカや凄腕スナイパーなどの要素をかじった私のような30代半ばのおじさん向けです。
この手の解説本は兵器の数や数値が多過ぎて戦死者や動員された兵隊の人数の一覧を目で流すだけになりがちです。
しかし、本書は具体的な数値は最小限
なので読みやすいです。
割合で言うと最初から80%くらいまでが独ソ戦の側面と戦争の流れ、最後にまとめとなっています。
巻末の1割ほどを参考文献、引用文献の丁寧な記載にあてているため本書をもとにして独ソ戦関連本への知識や興味を広げていけるでしょう。