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共食いの島 単行本 – 2019/2/9


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「強制収容所」のほかに、第二のグラーグといわれた「強制移住・遺棄」の地が、
シベリアには多数あった。その実態がはじめて明らかになる。
発端となったのは、1933年早春、シベリアのオビ川に浮かぶナジノ島へ、モスクワと
レニングラードから6000人が着のみ着のまま移送・遺棄され、そこで起きた事件だった。
スターリンが「上からの革命」(富農階級の撲滅、農業集団化、第一次重工業化)に着手
したのは1929年。その結果、穀倉地帯ウクライナは大飢饉におそわれ、農民は大挙して
都市へ流入した。都市では犯罪が激増する。秘密警察は1930年前半、「大都市の浄化」
と称して、流入した元富農や「社会的有害分子」の一掃を決め、西シベリアへは1933年に
13万2000人が強制移住させられた。
ナジノ島の6000人という規模は、シベリアに送られた犠牲者総数の、ほんの芥子種
一粒にすぎない。しかし著者は、発掘した「事件」関係の資料から、強制移住政策の
全容を知ることになった――「壮大な計画」の立案、拙速な長距離移送が原因の大混乱、
送られた人たちの運命まで。
フランスの代表的なソ連史研究者ヴェルトは事実を淡々と語り、画期的な研究を実らせた。
さらにこの「ミクロヒストリー」をとおして、スターリンの恐怖政治、収容所群島、秘密警察、
ソビエト官僚制の実像までが見えてくるだろう。

商品の説明

出版社からのコメント


著者について

ニコラ・ヴェルト(Nicolas Werth)
1950年生まれ。フランスのソ連史専門家。フランス国立学術研究所(CNRS)研究員、同研究所付属現代史研究所上席研究員を歴任し、2015年に退職。以降は執筆活動を続ける。
著書 『ロシア農民生活史』(ニコラス・ワース、荒田洋訳、平凡社、1985)、『共産主義黒書〈ソ連篇〉』(共著、外川継男訳、恵雅堂出版、2001、ちくま学芸文庫、2016)、『ロシア革命』(石井規衛監修、創元社、2004)、『共食いの島』(根岸隆夫訳、みすず書房、2019)他多数。
父親は『戦うソヴェト・ロシア』(全2巻、中島博・壁勝弘訳、みすず書房、1967、 69)の著者、アレグザンダー・ワース。

根岸隆夫〈ねぎし・たかお〉
翻訳家。フランス政府給付留学生としてパリの国立政治学院で欧州政治史を学ぶ。長くドイツとフランスに住み、戦間期の欧州政治史、とくに全体主義に関心をもつ。パリ1968年5月、プラハの春、ベルリンの壁の崩壊、ソ連の自壊に遭遇。
訳書 トロツキー『テロリズムと共産主義』(現代思潮社、1970)、クリヴィツキー『スターリン時代』(第2版、1987)、ポレツキー『絶滅された世代』(1989)、リード/フィッシャー『ヒトラーとスターリン』(上下、2001)、ジェラテリー『ヒトラーを支持したドイツ国民』(2008)、ザスラフスキー『カチンの森』(2010)、ビーヴァー『スペイン内戦』(上下、2011)、ネイマーク『スターリンのジェノサイド』(2012)、ヴェルト『共食いの島』(2019)、いずれもみすず書房。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ みすず書房 (2019/2/9)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2019/2/9
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 224ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4622087553
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4622087557

カスタマーレビュー

星5つ中3.7つ
3グローバルレーティング

この商品をレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2021年10月25日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    ソ連で行われたシベリア強制移住を豊富な資料を元に、初期計画から事の顛末まで描き出している。

    極寒シベリア送りという言葉は何かとソ連を象徴する言葉として耳にする。私は何となくシベリア送り決まったら、すーっとシベリアに送られるんだろうなあと思っていた。

    しかし実際には、シベリア地方当局が、人を送るための鉄道、寝場所、監視員、食料、家畜を集めるのに奔走していた。そして中央政府から急に、じゃ今から囚人を送るね、と言われ困惑するといった、今の日本でもよくある中央VS地方の構図がここでも見られて興味深かった。もちろん非人道性は比べ物にならないが、、

    現代史モノでは、当事者の生々しい体験談を載せるのが鉄板だろう。本書でも「はじめに」で人肉を食べた飢えた囚人を見た女性のインタビューが出る。

    しかし本書の魅力は、生々しい体験談ではな。資料を元に政府の役人、党員が強制移住をいかにお粗末な計画で始めて、そのお粗末さがどれだけ人を苦しめ殺したか、淡々と描いたところにある。

    翻訳がこなれていないこともあり、少し退屈になるかもしれないが、読んでいくうちに、人間がどれだけ無責任かつ命令のためなら冷酷になれるか、事実として分かるようになる。
    2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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  • 2019年9月18日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    肝心の「ナジノ島」からの記述は高々40頁余、そこに至るまでの歴史的背景や経緯に全体の四分の三も割いているという、尻窄みの構成である。悪い意味で「歴史家」らしい砂を噛むような文章が始終続く。簡単に言えばWikipediaの記事に似ている。ヴェルトはあまりにも文献に頼りすぎている節があり、考察が少ない。そもそもヴェルトの視点がナジノ島に残された不幸な人々(当時は「階級脱落分子」と呼ばれた)からはかなり離れた位置に置かれており、島民達の社会構成、生活風景、人間描写、あるいは心理的考察が一切ない。こうした本の読者は寧ろそちらを期待しているのではなかろうか? 一方、ヴェルトの矛先はもっぱら幹部職員らの杜撰な管理体制の批判に向けられており、勢い、近村の住人の証言や調査委員会の報告の引用が頗る多い。結果「島」がメインディッシュのはずが、最後のデザート程度に収まってしまっている。

    最後に翻訳だが、これは不慣れな逐語訳である。(カタカナ)ロシア語をそのまま記載することに、何か意味はあるのだろうか? 面倒な単語は和訳せずにそのままカタカナで載せてしまえ、という気風が感じられる。日本語としても怪しい表現が幾つもあった。

    よって私の評価は以下の通りである:

    内容: ★★☆☆☆
    翻訳: ★★☆☆☆
    8人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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