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トマス・アクィナス 肯定の哲学 単行本 – 2014/9/17


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神の、キリストの、人間の〈感情〉は、何を教えてくれるか?

愛と憎しみ、喜びと悲しみ――。〈感情〉の微視的な分析をとおし
存在するもの全てへの肯定と讃美を読み解く

人間論として『神学大全』を読み解く
「トマス人間論」から学ぶ、生の技法。

キリスト教の教義に基づいた抽象的概念を駆使する難解な神学者として解されてきた、中世最大の思想家トマス・アクィナス。
本書では、そのような神学的枠組みを超え、トマスがありふれた日常的な経験である〈感情〉を微視的に分析し、独自の〈人間論〉を構築していることを明らかにする。トマス哲学に通奏低音のように鳴り響く、存在するもの全体への肯定と讃美の旋律を描き出し、この世界を肯定的に受けとめ、生き抜く実践的な生の技法を説く書物として、最大の主著『神学大全』を読みなおす、意欲的な一冊。

【目次】

まえがき


第一部 肯定の哲学の展開
一 感情の区別のための補助線
二 喜びと悲しみ
三 愛と憎しみ
四 欲望と忌避

第二章 困難に対する直面と克服
一 気概的な感情の全体像
二 希望と絶望
三 怖れと大胆
四 怒り

第三章 肯定的な生への促しとしての倫理学
一 徳としての勇気―― 世界と自己との肯定的関係の形成
二 『神学大全』における肯定的・体系的倫理学
三 棟梁としての神学者―― 観想という実践

第四章 肯定の形式としてのスコラ的方法
一 項の構造―― スコラ的方法の結晶
二 怖れと愛―― スコラ的方法の具体的実践
三 引用と区別の連関
四 伝統の受容と変容
五 共同探究としての真理探究

第二部 神学という光源
第五章 神に感情は存在するか
一 苦しむ神と苦しまない神
二 神の愛の能動的性格
三 神の情念の肯定的性格
四 感情という行為
五 能動的な活動力そのものとしての神

第六章 キリストの受難―― 肯定の哲学の原点
一 「単なる人間」と「真なる人間」
二 人間の状況打開力
三 キリストの意志の「葛藤」
四 キリストの意志の調和
五 悲しむキリスト
六 肯定の哲学の原点としてのキリスト論

結 論
一 善の自己伝達性という根本原理
二 共鳴としての愛
三 共鳴の連鎖


参考文献
あとがき
初出ノート
索引

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商品の説明

出版社からのコメント

【書評】
毎日新聞 2014年12月21日「2014 この3冊」 にて松原隆一郎氏(東京大学教授)にご選出いただきました。
週刊読書人 第3070号(2014年12月19日) 「2014年回顧 動向収穫」(第3面) <哲学>(選者:貫成人氏(専修大学教授)にて、紹介されました。
京都新聞 2014年12月7日(3面)の瀬戸内寂聴氏による 「天眼 トマス・アクィナスとの縁」にて、紹介されました。
読売新聞 2014年12月1日に著者の山本芳久先生のインタビュー記事が掲載されました。
山形新聞・佐賀新聞 2014年11月30日の読書面に書評が掲載されました。評者は森岡正博氏(大阪府立大学教授)です。
信濃毎日新聞・京都新聞・神戸新聞・下野新聞・山陽新聞・東奥日報・琉球新報・愛媛新聞・山陰中央新報・沖縄タイムス 2014年11月23日の読書面に書評が掲載されました。評者は森岡正博氏(大阪府立大学教授)です。
岩手日報・北日本新聞・山梨日日新聞・福島民友 2014年11月15日・16日の読書面に書評が掲載されました。評者は森岡正博氏(大阪府立大学教授)です。
読売新聞 2014年11月9日の「本よみうり堂」(14面)に書評が掲載されました。評者は若松英輔氏です。

著者について

山本 芳久(Yamamoto Yoshihisa)
東京大学大学院総合文化研究科准教授。
1973年生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院人文社会系研究科(哲学専門分野)博士課程修了。千葉大学文学部准教授、アメリカ・カトリック大学客員研究員を経て、現職。専攻は、哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)。博士(文学)(東京大学)。代表作に『トマス・アクィナスにおける人格ペルソナの存在論』(知泉書館、2013年)、「イスラーム哲学――ラテン・キリスト教世界との交錯」(『西洋哲学史II』所収、講談社、2011年)など。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 慶應義塾大学出版会 (2014/9/17)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2014/9/17
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 282ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 476642171X
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4766421712

著者について

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山本 芳久
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 東京大学大学院総合文化研究科教授。

 1973年生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院人文社会系研究科(哲学専門分野)博士課程修了。

 千葉大学文学部准教授、アメリカ・カトリック大学客員研究員を経て、現職。

 専攻は、哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)。博士(文学)(東京大学)。

 西洋中世最大の神学者であるトマス・アクィナスの研究をベースとしながら、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教の比較神学的・比較哲学的研究に取り組んでいる。

カスタマーレビュー

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上位レビュー、対象国: 日本

  • 2024年4月10日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    トマス・アクイナスは13世紀イタリアのキリスト教哲学者です。本書はトマスの説いたキリスト教の教理に関する解説書であり、その中でも主に「感情」「徳」といった問題を中心的に取り扱っています。しかしキリスト教の信者だけに向けて書かれているわけではなく、関心を持つすべての人に向けて懇切丁寧な説明がなされています。

    肯定の哲学というのはトマスの哲学全体の根本にあるとされる信念で、思い切って簡略化すると次のようなことです。この世の善と悪は差し引きゼロになるような対称性をもっているわけではなくて、必ず善の方が優越して存在する、悪は善に依存してしか存在することができない、人間の魂をタマネギのように外側からむいていくと最後に残るのは悪ではなく善である、したがって誰でも修練を通して純粋な善の供給者・伝達者となることができる。この最後のことを著者は「善の自己伝達性・自己拡散性」という言葉で表しています。

    トマスがこのような思想を抱いたのは、当時の南フランスに広まっていた、この世が善と悪の拮抗によって成り立っているという二元論的な異端思想に対抗する意味合いもありました。トマスはこのような二元論的世界観に対して明確に「それは違う」と主張しているわけですが、これは単なる異端に対する反対弁論であるにとどまらず、むしろキリスト教の根本的な立場であって、現代社会にも通ずる射程の長い思想であると本書の著者は考えておられるのだと思います。本書で感情論の部分が特に取り扱われているのは、そこにはトマスのこうした主張の論拠がキリスト教の教理をあまり知らなくても理解できるように述べられているためだと思われます。

    本書は2部から構成され、第一部は主として人間の感情に関するトマスの思想がまとめられています。善の定義、感情の分類と順位関係、徳の概念とその位置づけ、トマスの哲学の方法といった事柄が詳細に説明されており、理解するためにキリスト教や聖書に関する知識は特に必要ないと思われます。それに対して第二部の方は、神の感情とキリストの感情というテーマが扱われており、こちらは読者自身がキリスト教の信仰者であるか、少なくとも聖書の内容に関して正統的な知識をもっていないと、共感を持って読み進めるのが難しいように思われます。

    しかしこの第二部も、著者の方の思いとしては、キリスト教に対する読者のスタンスとは関係なく誰にとっても、肯定の哲学を正確に理解して確信できるために必要な部分として執筆しておられるのだと思います。たとえこの部分を理解するために聖書全体か少なくとも福音書を通読するくらいの努力が別に求められるとしても、肯定の哲学から受けることのできる恩恵はそれを補って余りあるものだということです。

    本書は最初から1冊の本として書き下ろされたものではなく、各章が別々に原著論文として発表された原稿に基づいて書かれているそうです。そのためか、文章にやや冗長に感じられる面はあります。けれども内容が高度ですので繰り返し説明される方が理解しやすいと思いますし、少なくとも言い足りないよりははるかに良いと思います。
    1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2023年12月21日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    とてもいいです。著者の人間感情論のみに興味がある方は、『世界は善に満ちている』のほうが安くて読みやすいですが、この本は後半にトマスによるキリストの感情、意志論も紹介されていて、上述の本より深い内容となっています。
    1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2023年3月4日に日本でレビュー済み
    Amazonで購入
    本書はトマス・アクィナスの感情論である。パッシオというラテン語の広がりが如何なる意味を持ち、現代の日本に生きる私たちに何を問いかけるかを明らかにする本である。
     『神学大全』というその全貌を捉えるのすら困難な著作で知られるトマス・アクィナス。しかし『神学大全』はトマスの著作の中でもごく一部を成すものであり、分量にして他に六倍近くに及ぶ『対異教徒大全』やアリストテレスや聖書の注解と説教集などの著作群が控えているのである。『神学大全』の膨大さが強調される傾向にあるが、他の著作ではより詳しく取り上げられている主題が『神学大全』においては簡潔に、しかしより主題の焦点を絞った形で取り上げられていることが指摘される。むしろ大全(スンマ)とは要約ないし便覧の意味を含んでいることが本書において暗示されているのである。
     本書の特徴は私たちが日頃経験する日常的な感情を一つ一つ取り上げて、その経験の豊かさを確かめさせる洞察を得られることにある。一見無味乾燥とした『神学大全』の叙述の中に、トマス自身のアリストテレスや教父との生き生きとした対話の様子を見出させてくれる本なのである。「喜びと悲しみ」「愛と憎しみ」「欲望と忌避」「希望と絶望」「恐れと大胆」「怒り」といった感情を捉える際に「愛、欲望、喜び」がどのように関わるのかということが丁寧に一つ一つ紐解かれていき、人間が生きていくうえで与えられている感情という経験そのものの豊かさが提示される。その列挙の方法は優れてアリストテレス的であるが、分析そのものの手法がアリストテレスのそれにとどまらずに有機的な構造を持ったものとして提示されていることも明らかにされる。
     前半において、上述したような人間の感情を理解する手掛かりが非常に具体的な仕方で与えられるのだが、それが神学の中でどのような意味を持ち得るのかがスコラ的方法そのものについての問いかけによって明かされる。そこから神の感情とはいかなるものか、そしてイエス・キリストの受難(パッシオ)との結びつきが豊かに描き出され、福音書を読むだけでは触れることのできない洞察へと導かれる。本書の叙述を通して神学がどのような営みであるかが明らかにされていく。その生き生きとした神学の現場を目の当たりにさせてくれる神学入門と言えよう。
     一見近寄りがたい巨大な構築物のように見える『神学大全』。しかしそれが如何に豊かな対話の上に成り立つものであり、豊かな洞察を私たちにもたらすものであるかを本書は鮮やかに描き出す。肯定の哲学という視座を通して読者はマスターキーが与えられるとの著者の言葉は誇張ではない。本書は『神学大全』が恣意的に構築された建造物ではなく、生き生きとした理性的な対話の積み重ねに成り立つ有機体であることを明らかにしてくれるのである。
    4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
    レポート
  • 2024年8月2日に日本でレビュー済み
    まえがき


    第一部 肯定の哲学の展開
     第一章 肯定的な感情の優位―― 愛、欲望、喜び
      一 感情の区別のための補助線
      二 喜びと悲しみ
      三 愛と憎しみ
      四 欲望と忌避

     第二章 困難に対する直面と克服
      一 気概的な感情の全体像
      二 希望と絶望
      三 怖れと大胆
      四 怒り

     第三章 肯定的な生への促しとしての倫理学
      一 徳としての勇気―― 世界と自己との肯定的関係の形成 
      二 『神学大全』における肯定的・体系的倫理学
      三 棟梁としての神学者―― 観想という実践

     第四章 肯定の形式としてのスコラ的方法
      一 項の構造―― スコラ的方法の結晶 
      二 怖れと愛―― スコラ的方法の具体的実践
      三 引用と区別の連関 
      四 伝統の受容と変容
      五 共同探究としての真理探究

    第二部 神学という光源  
     第五章 神に感情は存在するか
      一 苦しむ神と苦しまない神
      二 神の愛の能動的性格
      三 神の情念の肯定的性格
      四 感情という行為
      五 能動的な活動力そのものとしての神

     第六章 キリストの受難―― 肯定の哲学の原点
      一 「単なる人間」と「真なる人間」
      二 人間の状況打開力
      三 キリストの意志の「葛藤」
      四 キリストの意志の調和
      五 悲しむキリスト
      六 肯定の哲学の原点としてのキリスト論

    結 論
      一 善の自己伝達性という根本原理
      二 共鳴としての愛
      三 共鳴の連鎖


    参考文献
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