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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『倫太郎』に流れるタモリイズム
テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第92回

「恋愛は変態への第一歩」――“静かな変人”堺雅人『Dr.倫太郎』に流れるタモリイズム

rintaro.jpg『Dr.倫太郎』日本テレビ

「僕は、理想の俳優がウォーズマンなんですよ」

 主演する『Dr.倫太郎』の番宣を兼ねて出演した『おしゃれイズム』(ともに日本テレビ系)の中で、堺雅人は突拍子もないことを言いだした。「魚津万蔵(うおずまんぞう)」に改名したいとまで言うのだ。ウォーズマンは漫画『キン肉マン』に登場する、全身真っ黒なロボット超人。それを理想の俳優として挙げるのだから、変わった男である。

 この番組ではほかにも、バイトを無断“出勤”してクビになったことがあるだとか、空間認識が苦手で「右・左」がとっさに分からないだとか、美術のヌードモデルをやったことがあるだとか、“変人”エピソードを連発。極めつきは「腹に一物ある男」を演じるための役作りで、「ホントに一物入れてみたらどうだろう」と考え、目黒寄生虫館を訪れ、サナダムシの卵を食べようとしたというのだ。もはや“変態的”だ。それを微笑みながら言うから怖い。

 今でこそ、『リーガルハイ』(フジテレビ系)や『半沢直樹』(TBS系)などで、過剰でエキセントリックな演技をするイメージがついた堺だが、本来は真逆。「喜怒哀楽をすべて微笑みで表現する男」などとも評されるように、“静かな変人”を演じさせたら右に出る者はいない。そんな堺の本来の魅力を、最大限引き出そうとしているのが『Dr.倫太郎』だ。

 ここで堺は、精神科医・日野倫太郎を演じている。このドラマに「協力」としてクレジットされている精神科医の和田秀樹氏が、「堺さんは声のトーン、しゃべり方、雰囲気ともに患者を落ち着かせる要素を兼ね備えている。精神科の名医像といっても過言ではありません」(日刊ゲンダイ)と絶賛するように、常に微笑みを浮かべ相手の話を聞き、静かなトーンで語りかけるその佇まいは、精神科医そのものだ。

 第5話では、倫太郎の過去が明かされている。中学の時、母が自殺したというのだ。母はうつ病を患っていた。それに気付かなかった倫太郎は、お茶をいれて何かを話そうとした母を遮って、「頑張れ」と言って出かけてしまう。その日、母は走る電車に飛び込んでしまった。

「もしもあの時、僕が、母のいれたお茶を飲んでいたら」
「もしもあの時、僕が、母の話にちゃんと耳を傾けていたら」

 今でも、それがいつも頭をよぎるという。だから、倫太郎はやってくる患者たちに「一緒にお茶を飲みませんか」と問いかけるのだ。

 母の死で、自分は一生泣いたり笑ったりすることはないだろうと思っていた倫太郎を救ったのは、あるコメディアンだった。テレビから聞こえてくる彼の話があんまりおかしくて、笑ってしまったというのだ。

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