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『家族ゲーム』松田優作さんの驚くべき一言 伝説のクライマックスの裏側

第34回東京国際映画祭

左から宮川一朗太、由紀さおり、伊藤克信
左から宮川一朗太、由紀さおり、伊藤克信

 鬼才・森田芳光監督の名前を世に知らしめた傑作映画『家族ゲーム』の4Kデジタルリマスター版が5日、現在開催中の第34回東京国際映画祭「日本映画クラシックス」部門で上映され、出演者の由紀さおり宮川一朗太伊藤克信が来場。11月6日に三十三回忌を迎える俳優・松田優作さんとの思い出について語り合った。

【写真】森田芳光監督の遺作となった2011年の映画

 本作は、高校受験を控える次男と家庭教師の攻防を軸に展開するブラックなホームコメディーで、キネマ旬報ベストテン第1位に輝いた。故・松田優作さんが破天荒な家庭教師を演じ、多くの若手監督に影響を与えてきた。今年は、2011年に逝去した森田監督の没後10周年となることから、同作の4Kデジタルリマスター版をワールド・プレミア上映することとなった。

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 沼田家の母を演じた由紀は「この映画にはたくさんの思い出があるんですが、松田優作さんと初めての顔合わせの時に『この映画は5センチ浮いた芝居をしましょう』と言われたことがあって。最初は意味がわからなかったんですけどね」と笑いながら述懐。そして学校ではいじめられ成績もパッとしない次男・茂之を演じた宮川も「やはりこの映画は優作さんの迫力ですね。初日から(松田さん演じる家庭教師の吉本から)教わる茂之の部屋のシーンだったので。部屋に入った時の緊張感、張り詰めた感じは、僕の芸能生活の初日でもありますから、今でも印象深く残っております」と思い返した。

 本作のクライマックスシーンは、合格祝いの食事が次第にカオスな状況に変ぼうしていくさまを長回しで捉えた映像が語り草となっている。そのシーンについて質問された由紀は「あれは1日がかりで準備をしていましたね。その中でわたしはその(カオスの)輪に入らない役でした。わたしのところにマヨネーズが一瞬だけ飛んできたんですけど、それに対してもリアクションはしない。あのときはただ単に、ご飯と、たくわんかキュウリかのお漬物を食べていました」と回答。

 宮川も「最初はこうやって……というような段取りをやっていたんですけど、普通のドラマとか映画なら、実際にあるものを前にしてもっとやるところを、優作さんが『もう本番やろうぜ』とおっしゃって、やってみたら一発オッケーだったんです」と撮影の裏側を明かしながら、ハプニングについても触れる。

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 「好きなだけ暴れていいからと。僕ら息子(長男・慎一と)に出された指示は、何があっても兄弟ゲンカはやめるなということ。あとは『ある時にいったん黙って。シーンとなるから、そこの間だけは作ってくれ』と。セリフは間違えてもとにかく続けてほしいと言われていたんですが、お兄ちゃん(役の辻田順一)がセリフを間違えちゃったんです。(父親役の)伊丹十三さんは構わずセリフを続けているんですけど、兄ちゃんは何度も同じセリフをしゃべっているんですよ」
 
 また、松田さん演じる家庭教師・吉本のセリフまわしはボソボソッとした独特のトーンであり、それが不気味さを醸し出していたが、司会者によると、今回の4K化によって、その音がクリアになったという。それを聞いた宮川は「実際にセリフのやりとりが始まっても、優作さんのセリフが聞こえないんですよ。あんなに近くにいるのにボソボソしすぎて。当時、ワイヤレスマイクが主流じゃない時代なので、録音の小野寺(修)さんの腕が冴えたというか。セリフは聞こえなかったんですけど、多分、優作さんはこういう風に進めているんだろうなと(手探りで)お芝居をしたので、それがあの緊張感につながったのかなと思います」と明かした。

 くしくも11月6日は松田さんの三十三回忌となる。宮川も「明日は優作さんの命日なんですよね。こんな日にこの映画のトークショーがあるというのもなんだかゾクッとしますね」と感慨深げだった。(取材・文:壬生智裕)

『家族ゲーム』4Kデジタルリマスター版(※2Kダウンコンバートで放送)は、11月21日21:00ほか日本映画専門チャンネルで放送

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