[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

西田 篤司 Atsushi Nishida

[スポンサーリンク]

西田 篤司 (にしだあつし、1954年7月6日)は日本の有機化学者である。千葉大学学術研究・イノベーション推進機構特任教授。第21回ケムステVシンポ講師

経歴

1979年 北海道大学大学院薬学研究科製薬化学専攻(修士課程)修了(薬学修士)
1979年 帝京大学薬学部薬品製造学研究室助手(池上四郎教授)
1985年アメリカ合州国マサチューセッツ工科大学化学科博士研究員(Rick, L. Danheiser教授)
1986年 北海道大学薬学部植物薬品化学研究室助手(米光 宰教授)
1990年 北海道薬科大学薬化学研究室(川原徳夫教授)助教授
1996年 千葉大学薬学部薬品合成化学研究室(中川昌子教授)助教授
2001年 千葉大学大学院薬学研究院 教授(薬品合成化学研究室担当)
2010年-2012年 千葉大学大学院薬学研究院長
2012年-2014年 千葉大学大学院薬学副研究院長
2014年 千葉大学副学長(国際担当)
2016年 千葉大学副学長(国際・広報担当)
2017年 千葉大学副学長(国際・研究担当)
2020年 千葉大学学術研究・イノベーション推進機構 副機構長

 

受賞歴

2004年 日本薬学会学術振興賞受賞
2020年 日本薬学会賞受賞
Lectureship Award, 0th International Conference on Cutting–Edge Organic Chemistry in Asia, 2006, Nagoya (Invitation from Korea and Taiwan).
Lectureship Award, 5th International Conference on Cutting–Edge Organic Chemistry in Asia, 2009, Bangkok (Invitation from Taiwan).
Lectureship Award, 7th International Conference on Cutting–Edge Organic Chemistry in Asia, 2011, Hong Kong (Invitation from Singapore and Korea).
Lectureship Award, 9th International Conference on Cutting–Edge Organic Chemistry in Asia, 2013, Osaka (Invitation from Hong kong).
平成25年度 千葉大学優秀発明賞 「セラミド誘導体およびこれを用いたゴルジ体標識化 蛍光プローブ」  特願2011-177720号、西田 篤司(大学院薬学研究院 教授)、村山 俊彦(大学院薬学研究院 教授)、中村 浩之(大学院薬学研究院 助教)、牧山 智彦(医学薬学府 大学院生)

研究業績1

含窒素天然物合成
1)ランドリンB、ラピディレクチンBの全合成

コプシア・テヌイスから単離されたアルカロイド: ランドリンBはシクロプロパン環とインドリン骨格の融合したユニークな構造を持ち、抗メラノーマ作用とビンクリスチン耐性 KB 細胞に対する耐性克服作用が報告されていた2,3。西田先生は5置換シクロプロパンの立体選択的合成から2014年にラセミ体ランドリンBの全合成を達成4した。本合成は不安定なシクロプロパン融合型インドリン骨格を保持した状態での分子内アミノアセタール反応、分子内閉環メタセシス反応が巧みに行われている。

更に2015年にはスピロ骨格を光学活生体として用いる新たな合成経路で光学活性(-)-ランドリンBの全合成を達成5し、天然物の絶対配置を確定した。同年、同様の骨格を出発点として、(+)-ラピディレクチンBの全合成も達成した6

2) イルシナールA、マンザミンAの全合成

沖縄産海綿より単離•構造決定されたマンザミンAは、そのユニークな多環性骨格、抗マラリア作用などの生理活性から合成ターゲットとして注目を集めていた。西田先生はマンザミンアルカロイドの一種、ナカドマリンAの合成を目指し、フラン・イミニウムカチオン環化反応を開発7。2003年に世界初全合成を達成した8。15員環形成はGrubbs第1世代触媒を用いたRing Closing Metathesisによって為されている。更にフラン環を4炭素ユニットとして用い同様の環化反応を用いることでイルシナールAの全合成を達成した9。イルシナールAからマンザミンAへの変換は既知であり、マンザミンAの形式全合成が為されたことになる。

3) シゾコムニンの全合成、提唱構造の改訂

シゾコムニンはアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)患者の気管支に生息していたスエヒロタケから単離され構造決定されたアルカロイドであり、細胞毒性を示すことからABPMの原因ではないかと注目された10。その提唱構造中二重結合の立体配置が明らかにされていなかったため、E、Z異性体を両方合成することによる構造の確定が目指された。得られた化合物はケト体で存在し、(E)-体と(Z)-体両方を結晶として単離することに成功したが、そのどちらも天然物のスペクトルデータと合わなかった。結果的に、提唱骨格の構造異性体、キノキゾリン骨格に着目し、1stepで合成を行ったところ、天然物スペクトルデータと一致し、シゾコムニンの構造が決定された11

参考文献

  1. Nishida A., YAKUGAKU ZASSHI 141, 985-994 (2021)
  2. Kam T. S., Yoganathan K., Chuah C. H., Tetrahedron Lett., 36, 759-762 (1995).
  3. Kam T. S., Lim K. H., Yoganathan K., Hayashi M., Komiyama K., Tetrahedron, 60, 10739-10745 (2004).
  4. HoshiM., KanekoO., NakajimaM., Arai, S., Nishida A., Org. Lett., 16, 768-771 (2014).
  5. Nakajima M., Arai S., Nishida A., Chem. Asian J., 10, 1065-1070 (2015).
  6. Nakajima M., Arai S., Nishida A., Angew. Chem. Int. Ed., 55, 3473-3476 (2016).
  7. Nagata T., Nishida A., Nakagawa M., Tetrahedron Lett., 42, 8345-8349 (2001).
  8. Nagata T., Nakagawa M., Nishida A., J. Am. Chem. Soc., 125, 7484-7485 (2003).
  9. Tokumaru K., Ohfusa T., Arai S., Nishida A., J. Antibiotics, 69, 340-343 (2016).
  10. Hosoe T., Nozawa K., Kawahara N., Fukushima K., Nishimura K., Miyaji M., Kawai K., Mycopathologia, 146, 9-12 (1999).
  11. Uehata K., Kimura N., Hasegawa K., Arai S., Nishida M., Hosoe T., Kawai K., Nishida A., J. Nat. Prod., 76, 2034-2039 (2013).

関連動画

Avatar photoAvatar photo

Maitotoxin

投稿者の記事一覧

学生。高分子合成専門。低分子・高分子を問わず、分子レベルでの創作が好きです。構造が格好よければ全て良し。生物学的・材料学的応用に繋がれば尚良し。Maitotoxinの全合成を待ち望んでいます。

関連記事

  1. 赤﨑 勇 Isamu Akasaki
  2. 森謙治 Kenji Mori
  3. 松村 保広 Yasuhiro Matsumura
  4. 建石寿枝 Hisae Tateishi-Karimarta
  5. オマー・ヤギー Omar M. Yaghi
  6. ロバート・グラブス Robert H. Grubbs
  7. シェリル・サイ Shiou-Chuan (Sheryl) Tsa…
  8. 国武 豊喜 Toyoki Kunitake

注目情報

ピックアップ記事

  1. D. G. Musaev教授の講演を聴講してみた
  2. 化学物質でiPS細胞を作る
  3. 常温常圧アンモニア合成~20年かけて性能が約10000倍に!!!
  4. トランジスタの三本足を使ってsp2骨格の分子模型をつくる
  5. 第73回―「Nature Chemistryの編集者として」Gavin Armstrong博士
  6. リサーチ・アドミニストレーター (URA) という職業を知っていますか?
  7. 陰イオン認識化学センサーの静水圧制御に成功~高選択的な分子検出法を確立~
  8. t-ブチルリチウムの発火事故で学生が死亡
  9. 【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)
  10. 特許庁「グリーン早期審査・早期審理」の試行開始

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年8月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

“試薬の安全な取り扱い”講習動画 のご紹介

日常の試験・研究活動でご使用いただいている試薬は、取り扱い方を誤ると重大な事故や被害を引き起こす原因…

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

4種のエステルが密集したテルペノイド:ユーフォルビアロイドAの世界初の全合成

第637回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院薬学系研究科・天然物合成化学教室(井上将行教授主…

そこのB2N3、不対電子いらない?

ヘテロ原子のみから成る環(完全ヘテロ原子環)のπ非局在型ラジカル種の合成が達成された。ジボラトリアゾ…

経済産業省ってどんなところ? ~製造産業局・素材産業課・革新素材室における研究開発専門職について~

我が国の化学産業を維持・発展させていくためには、様々なルール作りや投資配分を行政レベルから考え、実施…

第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!

こんにちは、Spectol21です! 年末ですが、来年2025年二発目のケムステVシンポ、その名…

ケムステV年末ライブ2024を開催します!

2024年も残り一週間を切りました! 年末といえば、そう、ケムステV年末ライブ2024!! …

世界初の金属反応剤の単離!高いE選択性を示すWeinrebアミド型Horner–Wadsworth–Emmons反応の開発

第636回のスポットライトリサーチは、東京理科大学 理学部第一部(椎名研究室)の村田貴嗣 助教と博士…

2024 CAS Future Leaders Program 参加者インタビュー ~世界中の同世代の化学者たちとかけがえのない繋がりを作りたいと思いませんか?~

CAS Future Leaders プログラムとは、アメリカ化学会 (the American C…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP