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2種の古代人類が出会った瞬間、化石が物語る共存の足跡

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ケニアのトゥルカナ湖東岸で見つかった150万年前の足跡/Kevin G. Hatala/Chatham University

ケニアのトゥルカナ湖東岸で見つかった150万年前の足跡/Kevin G. Hatala/Chatham University

(CNN) 今から150万年以上前、2種の古代人類が湖岸で出会い、恐らくは互いに目と目が合った。初期の人類は当時、体高2メートルもある巨大アフリカハゲコウなどの野生生物に満ちあふれた大地を行き交っていた。

柔らかい泥の中に残された足跡の化石は、予期せぬ特別な瞬間を記録していた。これはヒト亜族の2種が自分のテリトリーを守る競争相手としてではなく、居住場所を共有する隣人として暮らしていたことを物語る。

足跡に関する研究は、11月28日の科学誌サイエンスに発表された。論文筆頭著者で米チャタム大学准教授のケビン・ハタラ氏は「同じくらいのサイズで体格の大きいヒト亜族の2種が、同じ土地にいたのは驚きだった」と解説する。

「彼らは同じ湖のほとりで数時間から数日のうちに、互いに同じ場所を通っていた。きっと互いの存在を認識していただろう。互いを見て、交流していたかもしれない」(ハタラ氏)

きっかけは2021年7月、古代人類の骨格が見つかったケニアのトゥルカナ湖東岸にあるクービ・フォラの発掘調査だった。この発掘でヒト亜族の足跡が一つ、大型の鳥類の複数の足跡と共に発見された。調査団は詳しい発掘調査ができるまでの間、足跡を細かい砂で埋め戻した。

その発掘は翌年実現した。ハタラ氏のチームは23平方メートルの堆積(たいせき)物を露出させ、最初の一つと似たヒト亜族の足跡をさらに11個発見した。足跡は一列に並んでいて、同じ人物の足跡だったことをうかがわせた。これとは別に、垂直方向に点在する三つの足跡も見つかった。

鳥類や牛、馬のような動物の足跡も94個見つかった。鳥類の足跡は最大で長さ27センチもあり、アフリカハゲコウという巨大コウノトリの足跡と思われた。

1列に並んだ足跡に対して垂直を向いた三つの足跡は、この場所に散らばっていた。これは別々の3人の足跡だったと思われ、残りの足跡は同時にこの場所を歩き回った動物たちによってかき消されたとハタラ氏は推測する。

ほぼ完全な保存状態

足跡の化石の正確な年代は特定できなかった。ただ、152万年前に起きた噴火の火山灰の層の下で発見されたことから、それよりもやや古いとハタラ氏は指摘する。

それでも今回見つかった足跡が数時間から数日の間に刻まれたのは間違いないと研究チームは見る。もしも長期間空気や日光にさらされて乾いていたとすれば、足跡の表面には亀裂ができていたはずだった。

しかし足跡は全て、できて間もなく細かいシルト質土に覆われたおかげで、堆積層の下でほぼ完全な形で残っていた。

ヒト亜族は、600万~700万年前に類人猿の祖先から枝分かれして出現した人類の全ての種を網羅する。ヒト亜族のうち今も生きている種はヒト(ホモ・サピエンス)のみ。従って、同じ系統の別の種との遭遇は、想像しただけで興味深い。

2022年の発掘時の様子/Neil T. Roach/Harvard University
2022年の発掘時の様子/Neil T. Roach/Harvard University

足跡の主は?

研究チームによると、足跡を残した種は「ホモ・エレクトス」と、それより脳の小さい「パラントロプス・ボイセイ」だった。一列に並んだ足跡はパラントロプス・ボイセイ、三つの足跡はホモ・エレクトスのものだったとしている。いずれもこの場所で骨格が見つかっていた。

ただし別々の2種の足跡だったことがすぐに分かったわけではない。足の構造学を専門とするハタラ氏は、詳細な立体画像分析を行って初めて、歩行や姿勢、動作のパターンが異なることを発見した。

こうした足跡は、ヒトの足跡や別の種のヒト亜族が残した足跡の化石、さらにはチンパンジーの足跡とも比較した。

その結果、一列に並ぶ12個の足跡を残した個体は、ホモサピエンスには分類できないことが判明。一方、散らばった3個の足跡の方はヒトの足跡によく似ていた。

ハタラ氏によると、「ホモ・エレクトスは首から下が現代のヒトとよく似ていて、この時期であれば私たちの直接的な祖先だった可能性が最も大きい」

「パラントロプス・ボイセイの外見はかなり異なる。非常に大きなあごと非常に大きな歯をもち、そしゃく筋のための付着部がある。食べ物はホモ・エレクトスとはまったく異なるようだ」。パラントロプス・ボイセイの食事が植物中心だったのに対し、ホモ・エレクトスは雑食だった。

研究チームが調べた結果、この場所ではこの二つの種が、恐らく10万年以上にわたって共存していた痕跡を発見した。

「これは双方の間の直接的な競争が比較的少なく、同じ土地に住んでいてもお互いにOKだったことを物語る。互いに追い出したりはしなかった」(ハタラ氏)

「ここはカバやワニなどの危険な動物も生息する危険な場所だった。従って、両方とも長期間にわたって何度もそうした場所へ通うのは、何か魅力があったに違いない」

今回見つかった足跡は、違う種類の人類が全く同じ時間と空間に重なり合って存在していたことを裏付ける初の証拠だった。ホモ・エレクトスはさらに100年にわたって繁栄を続けた。しかしパラントロプス・ボイセイは、この数十万年後に絶滅した。理由は解明されていない。

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