そろそろやめにしないと、そう思っていた二人の関係。未来を期待できないと覚悟のヒロインと、永続的関係を好まぬ彼。
身も心も惹かれ合いながらも、潮時を予感したとき、ヒロインは自分から去った。最後の賭けにも敗れたことに肩を押されて。
勢いがつ
いたときに彼に言えた別れの言葉により、ヒロイン自身自ら付けた決着に独り耐えようとする姿は、意地を張るなどというよりもこれ以上傷つかぬよう遮断を試みた、という方がふさわしい。
やはり麻生先生の描かれる、二人が逢い引きに使用していた場所のセレブ感、安っぽさがないのがいい。
ロンドン郊外に彼が用意した邸宅もまた、圧倒的な富を感じさせる外観の偉容と、少しも庶民らしさを持たない二人の日々とが巧みにHQ世界そのもののように描かれる。キュートなヒロインはちゃんと子供のいる暮らしをそこに繰り広げる。
彼のかかわりかたが、既に立派に、まごうことなき父親としてのものなので、なんだかんだ言って惜しみない愛を彼が子供に注ぐこのストーリー、、繊細でヒューマンなストーリーの色合いを、ページ毎に強めている。家庭に興味無いことを言い放った、冷徹な人物設定であるにも関わらず、彼の毎日は良き家庭人以外の何者でもない。
羨ましさを感じた。
突然の「気づき」、ここに全てが集約され、ささやかだけど重大な二人の関係のエポックメイキング的展開となる。彼がヒロインに抱いていた欲望の正体だ。
大袈裟なドラマではないのだけれど。。。
優しくかわいい話だと思った。
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