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どう読む最新の遺伝子研究 リスク上昇?病因は多様  焦らず慎重な受け止めを

2025年01月21日 00時00分
 遺伝子を解析する技術が向上し、病気の発症や進行、合併症などに特定の遺伝子が関わっているという研究が相次いでいる。自分は重症化しやすいのか。検査する方法はあるのか…。研究成果を知った患者や身内は戸惑うかもしれない。だが専門家は「病気の原因は多様で、一つの遺伝子だけを気にして焦るのではなく、総合的に考える必要がある」と慎重な受け止めを求めている。

ドイツの大学で肥満症と遺伝子の関係を調べるため細胞培養実験に取り組む研究者(ゲッティ=共同)
ドイツの大学で肥満症と遺伝子の関係を調べるため細胞培養実験に取り組む研究者(ゲッティ=共同)

 ▽多くは多因子疾患

 最新の遺伝子の研究では主に「患者のグループ」と「患者ではない人のグループ」のゲノム(全遺伝情報)をそれぞれ調べ、違いを明らかにする手法が使われる。統計的に分析し、異なる遺伝子の特徴があれば病気に関わっている可能性があり、予防や治療の標的となるかをさらに調べる。
 技術の進歩でゲノムを読む時間が短縮し、費用も下がった。ゲノムの一部でなく全体を解析する研究も増えた。研究成果は、大学や研究機関が公表し、インターネットで誰でも読める。
 ただ、遺伝子が関わっているとしても、たった一つの遺伝子が原因となる「単一遺伝子疾患」もあれば、多数の遺伝子が影響し合う場合もある。専門家によると、単一遺伝子疾患はごくまれで、ほとんどの病気は生活習慣や環境なども含め、さまざまな要因が複雑に影響する「多因子疾患」だ。「遺伝子が関連」という表現には実は多様な意味が含まれている。
 ▽まだ「手がかり」
 理化学研究所などは2024年、日本人約15万人のゲノムデータを解析し、心臓に血液を送る「冠動脈」が発作的に収縮してしまう「冠れん縮性狭心症」の発症しやすさに関わる遺伝子の特徴を見つけたと発表した。血管の収縮に関わる遺伝子に特定の変異があると、発症しやすさが高まり、未発症でも変異がある人はない人に比べて急性心筋梗塞で死亡するリスクが2・7倍になっていた。
 では、発症した人は調べた方がいいのか。健康な人の遺伝子を広く解析する必要があるのか。
 
 
 

 

 研究に関わった理研生命医科学研究センターの寺尾知可史チームリーダーは「病気の仕組みを理解する手がかりになる遺伝子を特定できたのが重要だ。病気の発症に極めて強く影響している場合は検査や治療の標的になるが、現状はそこまでは言えない」と慎重だ。
 同じく24年、東京大などのグループは、流産を繰り返す「習慣流産」のうち原因が分からないケースに関わる遺伝子を発見したと明らかにした。
 習慣流産のうち原因不明なのは約半数。不育症と診断された記録がない女性計約2万4千人のゲノムのデータを解析して患者と比較した結果、免疫の働きに関わる遺伝子と、細胞同士の接着に関わる遺伝子が発症に関連していると分かった。
 原因不明だった病気に関わる遺伝子を見つけた重要な研究だが、東京大の岡田随象教授(遺伝統計学)は「分かったのは病気の仕組みのごく一部。全容解明にはまだ遠い」と話す。「病気の原因は複雑なので、女性が『自分の免疫のせいかもしれない』と誤解してはいけない」と指摘する。
 ▽動揺せず治療を
 遺伝に関する知識の普及に取り組む金沢大病院遺伝診療部の渡辺淳特任教授は「多くの要因が関わる病気では、一つの遺伝子だけで病気のなり方が決まるわけではない。多数の遺伝子と病気の関わりを調べる方法が実際の患者の診断、治療の現場に導入されるのはもう少し先だろう」と指摘する。「患者にとって大事なのは、個々の研究成果に動揺しないこと。特定の遺伝子以外の要因が影響する場合もある。それでも心配な場合は、主治医や遺伝医療を専門とする医療者に相談してみてほしい」と話した。(共同=岩村賢人)
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