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乳房再建、迷ったら読んで 形成外科学会がガイド本  よくある50の疑問に回答

2025年01月07日 00時00分
 乳がんは女性がかかるがんの中で最多だ。がん死を防ぐ治療が優先され、摘出手術の割合も大きいが、女性が乳房を失うことは生活の質を損ね、精神的、肉体的な負担にもなる。「乳房再建」を考える患者も多いものの、多様な方法からどんな根拠で選べばいいのか。がんの診断でただでさえ動揺する中で決めるのは難しい。迷ったときの参考にしてほしいと、再建に携わる形成外科医らの学会が患者・家族向けのガイドブックを発刊し、活用を呼びかけている。

刊行に携わった乳房再建ガイドブックについて解説する富山大の佐武利彦教授=富山市
刊行に携わった乳房再建ガイドブックについて解説する富山大の佐武利彦教授=富山市

 ▽心身に影響

 乳がんを手術する際はがんの大きさや位置、数、乳房の大きさなどのさまざまな条件や、本人の希望などによって乳房の全切除か、部分切除かを決める。日本乳癌学会の2020年のデータでは乳がん手術を受けた9万人以上のうち54%は乳房全切除だった。
 日本形成外科学会で医師のためのガイドライン改訂に携わってきた富山大形成再建外科・美容外科の佐武利彦教授は「治療の進歩で手術後の生活の質や生存率は向上し、手術後もできるだけそれまでと同じように暮らしたいという希望が強まっている」という。
 乳房を失う影響は、精神的な影響はもとより、左右のバランスを損なうことで他の部位に負担がかかり、肩こりや腕の上がりにくさ、腰痛などの身体的な問題も起きる。衣類で補正する煩わしさや外見が気になることで運動や水泳、温泉入浴などそれまでの日常活動を諦める人も少なくない。
 ▽なかった手引
 佐武さんによると、統計の取り方が異なるため一概に比較はしにくいが、全切除後に乳房再建を選ぶ患者の割合は韓国が53%(18年)、米国でも4割以上(16年)だったのに対し、日本は18%(18年)と明らかに少ない。
 「治療では十分な情報を得て自分の判断で決める患者が増えたのに、乳房再建では、専門家の学会として患者や家族向けの手引の用意がなかった」ことが、学会としてガイドブックを刊行した理由だという。
 
 
 

 完成した日本形成外科学会編「患者さんと家族のための乳房再建ガイドブック」(医歯薬出版、3080円)はB5判156ページ。同学会で作成した後、関係の他学会の評価も受けて修正し、2年がかりでまとめた。

 作成では、患者会の協力も得てよくある約300の疑問を集め、項目ごとに大別。乳房再建の全体像や選択肢と選択の考え方、再建手術後や退院後の注意点など計50項目の質問を抽出して回答している。具体的にイメージしやすいようにイラストも豊富に添えた。
 ▽段階ごとに配置
 項目はとても具体的だ。乳がん手術と同時に行う「1次再建」か、後日行う「2次再建」か。希望する再建のために皮膚を伸ばし広げる処置の必要性があるか。膨らみを持たせる方法は人工物「インプラント」か、自分の体のほかの部位を使う「自家組織再建」か。自費診療にはなるが、おなかなどから吸引した脂肪を移植する「脂肪注入」か。それぞれのメリットとデメリットは。傷痕やへこみはどうなるか。乳頭や乳輪はどうするのか。再建後の管理は…。段階ごとに患者が最も知りたいであろう情報を見つけやすいように並べた。
 ただ、このガイドブックは乳房再建の実際を網羅的に掲載している。個々の患者に必ずしも全て当てはまるわけではなく、がん治療と乳房再建のそれぞれの主治医とよく相談する必要がある。
 佐武さんは「治療方針や身体状況、本人の希望などが患者ごとに異なる。自身に合った再建方法を考える一助として、ほかの患者の経験を参考にするのと併せてガイドブックを活用してほしい」と話している。(共同=由藤庸二郎)
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