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落語 みちの駅

第百三十二回 「第228回 朝日名人会」
 4月15日(土)14時より、第228回朝日名人会開催。あいにくの雨空でしたが、一ひねりした演目構成にもかかわらず客席は満足したものと信じます。

 春風亭朝之助「石返し」、春風亭柳枝「野晒し」、柳亭市馬「文違い」、トリは五街道雲助「花見の仇討」。「石返し」を初めて聴いたお客はかなり多かったはず。人間が人間をだます、しかもだまし方がセコイ変な噺ですが、どこか大江戸の夜の闇が感じられます。こういう噺に取り組んでくれる若手に制作者はちょっとうれしさを感じます。

 コロナの横ヤリに屈せず健闘の正太郎改メ春風亭柳枝師匠は陽気な「野晒し」を軽妙に演じてくれました。近年この噺を「一人ハシャギ」の噺のように敬遠する傾向がありましたが、久々に朗らかで楽しい「野晒し」が聴けました。演者が用心深くなると噺が湿るのでしょう。三代目の柳好も、先代つまり八代目の柳枝も屈託なく演じていたのを思い出します。

 柳亭市馬さんは「文違い」で男女のアヤをゆったり演じました。遊里ならではの心のアヤをじっくり、しかし暗くならず渋くならずに仕上げて聴かせてくれたのはご立派と言う他なく、大きな高座でした。

 トリは五街道雲助さん「花見の仇討」。花見の雑踏のさなかにアトラクションで売り出そうと張り切った愚かな江戸っ子三人衆。どうせ落語のことだから大失敗間違いなしという、噺の聴き手の心理を先読みして本当に大失敗に終わる。老緑・雲助師匠は騒ぎ過ぎずに朗らかに噺を進行しました。そんな“ゆとり”が必要な噺で、軽々しく騒ぐばかりでは噺全体もガタガタになります。久しぶりに三代目三遊亭金馬、六代目三遊亭圓生、三代目古今亭志ん朝に劣らない「花見の仇討」が楽しめました。

第百三十二回 「第228回 朝日名人会」
春風亭朝之助「石返し」


第百三十二回 「第228回 朝日名人会」
春風亭柳枝「野晒し」


第百三十二回 「第228回 朝日名人会」
柳亭市馬「文違い」


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第百三十二回 「第228回 朝日名人会」
花見の仇討(はなみのあだうち)/五街道雲助(ごかいどう くもすけ)

収録:第228回朝日名人会(2023年4月15日 有楽町朝日ホール)/テキスト:京須偕充

アーカイヴ終了日:2023/07/10 23:59


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著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。