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落語 みちの駅

第百二十七回 「第222回 朝日名人会 レポート」
 2022年9月17日14時から有楽町朝日ホールにて。出演は柳亭市弥「紙入れ」、三遊亭金朝「殿集め」、柳家三三「宿屋の仇討」、柳家権太楼「らくだ」。

 4日後に真打に昇進して柳亭小燕枝を襲名する市弥さんが素直に勢いよく喜びを語ってくれました。衒いがなさすぎるほどストレートな意気込みでした。将来がとても楽しみです。

 金朝さんは師・三代目三遊亭小金馬(故人)がたまにやっていた「殿集め」を確かなリズムで快く聴かせてくれました。この噺、今後も工夫次第でおもしろくなりそうです。金朝さんの芸にもペーソスが感じられるような味が出てきたと思います。

 三三さんの「宿屋の仇討」はこの噺の多彩な人物たちの「大人ぶり」が味わい深く、充実した高座でした。10年以上前ですが、私は上野・鈴本演芸場での三三さんの――たしか独演会を評して日本経済新聞に「宿屋の夜がいっこうに更けない」と書いたことがありました。

 今の三三さんのこの噺なら、もうそんなことは書きません。

 中入り後は柳家権太楼さんの「らくだ」。50分超えの堂々たる大真打の高座でした。この噺は屑屋と熊というらくだの兄貴分とのパワーの反転が聴きどころとされています。でも二人の対照をあまり技巧に表してしまうと噺が……誰かさんの遺体のように固くなってしまいます。権太楼師匠の「らくだ」は屑屋がそれほど気弱ではありません。

 ありそうな、いやなさそうな――が落語の至高のたたずまいとすれば、この「らくだ」はその域に達しているようです。

第百二十七回 「第222回 朝日名人会 レポート」
柳亭市弥「紙入れ」


第百二十七回 「第222回 朝日名人会 レポート」
三遊亭金朝「殿集め」


第百二十七回 「第222回 朝日名人会 レポート」
柳家三三「宿屋の仇討」



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著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。