ジャズメガネのセンチなジャズの旅
TBMにはオマさんの吹き込みは多く、ベースという楽器を超えて人気があった。グルーヴする重厚なベース、フロント楽器として躍動するチェロ。本作では、それに加えてグルーヴィーなエレピも披露している。
メンバーは当時渡辺貞夫グループに参加していた河上修(b)と守新治(ds)に常連の渡辺香津美(g)、ゲストで森剣治(reeds)、中本マリ(vo)。冒頭の「ブルー・ロード」でオマさんはエレピを弾き、冒頭、森のバスクラとの静かなイントロからブルースへと展開。オマさんのエレピが強烈なリズムを叩き出す。エレピ・ソロが圧巻だ。CTIのサウンドを彷彿とさせる。続く2曲目は中本マリのヴォーカルがフィーチャー。森のソウルフルなフルートに乗った中本のハスキーなヴォーカルもブルージーだ。後に中本と鈴木、渡辺で名盤『マリ・ナカモトIII』を制作することになる。
ラストのタイトル曲のバス・クラはエリック・ドルフィーを彷彿とさせる。ここではオマさんは本来のベースを弾く。演奏はファンクな方向へ。もう一人のベーシスト、河上修曰くベーシストのバックでベースを弾くことほどやりにくいことはない、そうだ。
前作『オールライト』ではオマさんはピアノ、オルガンの他、ヴォーカルも披露し、ベースは一曲しか弾いていない、という多才ぶり。オマさんのどのアルバムも飽きることを知らない。
text & cut by Kozo Watanabe