見つけた奨学金の条件が「文系入学」だった
駒崎 前回の記事では親が生活保護を受給し始めた中学1年生のときからのことをお話しいただきました。東大は、いつごろから目標に据えるようになったんですか?
島田 勉強が面白くなってから数学のとりこになり、高1くらいから「数学者になりたい」という目標を持つようになりました。この世の中の真理に一番近いのは数学ではないかという考えに至って、突き詰めてみたいという思いがどんどん膨らんできたんです。
数学者になるためには大学に進学せねばならず、目指すなら一番を狙っていこうという気持ちがありました。まずお金のことが気になったので、高校のオリエンテーションでもらう資料などで調べると、受験費用だけでもばかにならないと知りましたし、進学するなら国公立で授業料免除や奨学金が適用される大学や、バイトの時給が高い都市圏を選ぶ必要があると考え、選択肢を絞っていきました。その結果、すべての条件を満たすのは東大しかなかったということです。高知からより近い京都大学も候補に挙がったのですが、「文系で入学してから理系に転向する」ことが京大ではできなかったのです。
駒崎 出ました、「文系で入学して理転する」という決断。これ、かなりイレギュラーなことですが、なぜそれをしなければいけなかったのか教えてもらえますか?
島田 僕は数学者になりたいので理系の学部に進学したかったのですが、当時調べ尽くして、僕が大学生活を送るために必要になる給付型奨学金を獲得するための条件が「文系での入学」だったんです。
駒崎 給付型奨学金というのは、返す必要のない奨学金のことですね。