MacのデスクトップPCの数少ない選択肢のひとつだったアップルの「Mac mini」が、約14年ぶりにデザインを含め全面刷新された。本体が手のひらサイズに小型化され、チップセットとして「M4」または「M4 Pro」を搭載。独自の人工知能(AI)である「Apple Intelligence」にも対応する。
デザインが刷新された本体は設置面積が従来モデルの半分以下で、サイズは12.7cm四方で高さは5cm、重量は670gと片手で持てるほどに収まっている。この小型化はM4チップの優れた電力効率と、本体底面から背面に向けて空気を流す機構によって実現した。アップルによると、M4モデルはM1モデルより最大1.8倍のCPUパフォーマンスを発揮し、最大2.2倍のGPUパフォーマンスをもたらすという。
本体の前面にはUSB-Cポート2つとヘッドフォンジャックが設けられ、一見すると上位モデルの「Mac Studio」を思わせるデザインだ。背面にはUSB-Cポート3つ、HDMIポート、有線LANポートが用意されている。M4 Proモデルでは、さらに高速にデータを転送できる「Thunderbolt 5」に初めて対応した。
ディスプレイ一体型の「iMac」とは異なり、Mac miniはディスプレイやキーボードが別売りでユーザーが選ぶことになる。外部ディスプレイへの接続環境も充実しており、M4 Proモデルは6K解像度のディスプレイ(リフレッシュレート60 Hz)を最大3台まで接続可能だ(M4モデルは6K解像度を最大2台と、5K解像度1台まで対応)。これらの点からも、より“玄人好み”のマシンといえる。
一方で、長きにわたってマイナーアップデートのみが繰り返されてきたことから、Mac miniは存在感が薄くなっていた。それがようやく設置面積が半分以下という超小型のデザインをまとって全面刷新され、しかも米国では599ドルから(日本では94,800円から)と性能に対して割安感がある。低価格モデルから高性能モデルまで幅広い選択肢を用意したことからも、アップルがデスクトップPCのニーズを軽視していないことが改めて明確になったといえるだろう。
全面刷新のタイミングが、米国で「Apple Intelligence」が利用可能になった時期と重なることにも大きな意味がある。すべてのMacやiPhone、iPadの最新モデルでシームレスにApple Intelligenceを利用できるようにすることが、今後のアップルの戦略において重要だからだ。アップルは10月29日にM4チップを搭載した「iMac」も発表しており、これと併せてアップルが新型Mac miniをAI時代のデスクトップPCのスタンダードのひとつに位置づけようとしていることも見えてくる。
新型Mac miniはすでに予約が始まっており、発売は11月8日。基本モデルは、M4チップ(10コアCPU、10コアGPU)、ユニファイドメモリーが16GB、SSDが256GBで94,800円。上位モデルはM4 Pro(12コアCPU、16コアGPU)、ユニファイドメモリーが24GB、SSDが512GBで21万8,800円となる。なお、新型Mac miniはアップル初の「カーボンニュートラルなMac」を訴求している点も注目していい。
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